第23話「怪奇なる氷の刃」
氷華B「なるほどな。例え人間とて容赦はしないと。……お前らしいな。」
妹紅「何だ?その私を良く知っているような口ぶりは。」
氷華C「いや、知らないさ。ただ、お前の全身から溢れる炎が物語っているのさ。」
妹紅「……そうか。」
私はその言葉を最後に、身体に纏っている炎を不死鳥の如く体現させ、片方の氷華目掛けて放った。
妹紅「パゼストバイフェニックス!」
氷華B「こんなもの、アイシクル……なっ!?」
氷華は炎の不死鳥を斬り裂こうとしたが、炎は分散。そしてその炎は氷華を取り巻き、焼き尽くす。
氷華B「ぐっ!?……うわあああ!」
妹紅「どうだ?不死の炎の味は!」
氷華C「チッ……ならば、不死の氷の味もとくと味わえ!」
もう一人の氷華は、紺色の大剣を構えて私に向かってきた。
……その時、右の奥の方から飛んで来る影を見た。
妹紅「……悪いが、味わう訳には行かないな。それに……」
ガキィィン!!
氷華C「ぐはっ!?」
その影は鉄の輪を握っていた。
握る者はただ一人。
諏訪子「私を忘れちゃ困るよ!」
諏訪子だ。
諏訪子「……いや、実際はあまり困らないけど。」
妹紅「それは言わなくていいよ。ともかく、様子を伺って飛び込んで来てくれてありがとう。」
諏訪子「いえいえー。」
片方の氷華は向こうでのびている。さっき諏訪子が攻撃した方は、剣で身体を支えながら起きた。
氷華C「はぁ……はぁ……」
妹紅「まだやるのか?……完全に燃やし尽くされたいのか?」
氷華C「…………」
パリィィン!
突如、氷華が砕けた。
妹紅「っと、そう来たか。だが……」
私は諏訪子を守るように炎を展開した。
そして、氷華が空中で具現し、氷柱を降らせてきた。
妹紅「既にお見通しさ!はあっ!」
氷華の放った氷柱を全て炎の壁で御し、氷華を炎で包んで燃やし尽くした。
氷華C「ぐっ…………フッ」
突然、氷華が微笑んだ。
妹紅「へえ、良く笑っていられるな。私の炎に包まれて。」
氷華C「そりゃあ……」
氷華B「隙だらけだからさ。」
妹紅「なっ……!?」
諏訪子「えっ……」
ドゴォン!
重い音が、私の右から聞こえてきた。
まさか、諏訪子……!
私は炎の壁を消し、後ろを振り返る。
だが、そこにいたのは……
地球ヘカーティア「お待たせ。」
諏訪子「う…………え?」
妹紅「ヘ……ヘカーティア!」
青髪のヘカーティアだった。
私は咄嗟に上を向く。
そこにも氷華はいなかった。
月ヘカーティア「こっちよ。」
妹紅「うおっ!?」
月ヘカーティア「あら、驚かせちゃった?」
後ろから急に肩を叩かれたらそりゃあ驚く。
そして私の肩を叩いたのも、ヘカーティアだった。金髪の。
諏訪子「……ふう、危なかった……」
地球ヘカーティア「大丈夫?」
妹紅「……まあ、一応大丈夫だ。それより、ヘカーティアがここに2人……となると、もしかして能力が戻ったのか!?」
月ヘカーティア「ご名答。貴方達の能力も戻ってるはずよ。」
私は軽く炎を纏ってみる。
妹紅「……っ」
……この感じ。
自らを焼き尽くす感じ。
戻っている。能力が。
……そして痛みを感じるという事は、紫が施した術は切れたのか。
正直少し残念だが、馴染み深いこの感じの方が、戦いやすいかもな。
そして諏訪子も、激流の発生に成功した様だ。
諏訪子「やった!戻った!」
諏訪子は大いに喜んだ。
妹紅「なあヘカーティア。あっちで何があったんだ?」
地球ヘカーティア「能力が封じられていた水晶玉が砕けたのよ。吸血鬼の手によって。」
妹紅「フランが……!」
月ヘカーティア「そして、同時に私とそこの私が戻ってきたって訳。」
地球ヘカーティア「……っと、丁度呼ばれたみたい。行ってくるわね。」
妹紅「ああ、分かっ」
私が言い切る前に、青髪ヘカーティアは超スピードで走っていった。
妹紅「……早過ぎだろ。」
諏訪子「神の中でもあれは異端過ぎるって……」
月ヘカーティア「何か?」
諏訪子「うひゃあ!?な、何も無いよ!うん!」
妹紅「ま、まあともかく、私達も藍達と合流しよう。」
月ヘカーティア「今青い私が向かった理由がそれよ。その内皆を呼んでくるから、待ってなさい。」
妹紅「あ、そうなのか。分かった。」
諏訪子「……しっかし、色々大変だった……」
その時だった。
ズバァン!
諏訪子「……え?」
妹紅「なっ……」
月ヘカーティア「何だと……?」
一瞬だった。
突然下から大剣が飛び出し、背後から諏訪子を切り裂いた。
その大剣には、見覚えがあった。
諏訪子「……うぐっ……」
妹紅「……す、諏訪子!!」
諏訪子は地に伏した。
私は直ぐに諏訪子の元へと駆け寄った。
諏訪子を切り裂いた大剣は、独りでに浮遊していた。
まるで自我を持つかの様に。
月ヘカーティア「あの大剣……ええ、間違いなくあれは『氷華』の大剣……!」
続く