第21話「華を貫く剣閃」
ヘカーティア「……氷華……だっけ?まさかお前、私の能力を使って……!」
氷華A「……ああそうだ。今、マミゾウとぬえの元にはもう2人の私が居る。」
ヘカーティア「やっぱり……。」
妹紅、諏訪子……無事ならいいけど……
ヘカーティア「……とにかく、1人でもいい。お前を倒して、ここから出るわ!」
氷華A「……今のお前など、取るに足らない。ほら、受けてみろ。」
……何を言っているのかしら。さっきまで手も足も出てなかったのに。さっきだって、奴には能力を使っていなかった。だから、1人でもこんな奴、楽勝よ。
氷華A「……アイシクルブレイド!」
奴の大剣に、氷の刃が形成される。
……またさっきみたいに、受け止めてカウンターを入れてやるわよ。
そう高を括って氷華の一撃を受けた。
ドゴォォォン!
ヘカーティア「がはっ!?」
なっ、何で…!?
受け切れない……!?
奴の力は、上がった様には思えない。
とすると、まさか……
ヘカーティア「はぁ…はぁ……ねえ、お前のあの宝玉、能力だけを奪ってるわけじゃ無いわよね……?」
氷華A「その通りだ。だが、能力は奪ったが、お前のその恐ろしい程の膂力は奪ったのでは無く、封印したのだ。」
ヘカーティア「……!!」
……なるほどね。濤淵とやらは、ここまで考えていたのかしら。圧倒的な力を持つ者を無力化して、計画を確実に進めるために。
……だけど、何故膂力は奪わなかったのかしら。
ヘカーティア「……ねえ、その水晶玉……何故膂力は奪わなかったの?」
氷華A「あくまでも、濤淵様の能力の応用だからだ。濤淵様は、能力を操る能力を持っている。膂力までは完全に御せなかったといったところか。……だが、封印するだけでも十分だ。お前程強い奴がいると、計画が詰むのでな。」
そんな計画、詰ませてやるわよ。
……しかし、能力を操る能力……へえ。それでここにいる子達は揃って能力を失ってる訳ね。
ヘカーティア「しかし、よく喋るのね。敵なのに。」
私は鋭い視線を氷華へ刺す。
氷華A「喋っても問題無いさ。どうせここでお前は『絶対零度』によって、分子運動が停止して死ぬ。」
ヘカーティア「絶対零度……それがお前の能力ね。」
氷華A「ああ。……さて、そろそろ終わりに……」
雷鼓「させるか!」
ゴロゴロ……
ピッシャァァン!
太鼓の付喪神が、氷華の頭上に雷を落とした。
氷華A「うぐっ…!?」
藍「妖怪狐狸レーザー!」
続いて、式神がレーザービームを放つ。
隠岐奈「2人共良くやった!最後は任せろ!」
そして、隠岐奈が魔力を込める。
隠岐奈「背後の炎に焼かれるがいい!……穢那の火!!」
魔力は激しい炎となり、氷華を包み込んだ。
氷華A「ぐあああ……!」
氷華は、その場へ伏した。
雷鼓「セーフ……!」
藍「倒れた……!」
隠岐奈「大丈夫か、ヘカーティア!」
ヘカーティア「まあ、大丈夫っちゃ大丈夫よ。能力と膂力は失われたけどね。」
……正直、今の状態で奴の能力をマトモに受けていたら、無事じゃ済まなかったかもしれない。……感謝するしかないわね。
氷華A「瞬冷劔時雨。」
そして突然氷華はやって来る。
氷華は隠岐奈達の頭上へ、鋭い氷柱を大量に降らせた。
藍「あれは…氷柱……!?」
雷鼓「私が防ぐ!」
隠岐奈「手伝おう!」
必死に守ってるわね。……膂力が失われたとはいえ、奴が攻撃に集中している今なら……!
ヘカーティア「はああっ!」
私は空中に跳び、氷華へ横から跳び蹴りを食らわせた。
氷華A「なっ……!」
氷華は体勢を崩し、そのまま地面に激突した。
ヘカーティア「……ふぅ、何とかなったわね。」
隠岐奈「おお、ヘカーティア、礼を言うぞ。」
ヘカーティア「私もよ。さっきはありがとね。……しっかし、どうしたらこいつを倒せるのかしらねえ。」
その時、氷華は起き上がり、不敵な笑みを浮かべて言った。
氷華A「……フッ、私を倒すのは不可能だ。何度倒しても私は蘇る。ましてや今は私が3人いる。お前らの勝ちは絶望的だな!」
ヘカーティア「……膂力さえ奪われてなければこんな奴封殺出来るのに。」
雷鼓「……どうするか……。」
打つ手無しだと思ったその時。
「レーヴァテイン!」
ズバァン!
氷華A「ぐはっ!?」
突如、紅い剣閃が氷華を薙いだ。
ヘカーティア「何!?」
隠岐奈「……彼奴は……。」
藍「……フラン!」
フランドール「もう大丈夫みたい。私も戦えるわ。」
どうやら、さっきまで寝ていた吸血鬼が氷華を攻撃したらしいわね。
しかし、効いているのかしら?
と、私が氷華に目を向けた時だった。
氷華A「……な、何だと……!?」
シュォォォ……
ヘカーティア「あ、あれは……!」
目に入ったのは眩い程の白い光。
その白い光は、瞬く間にこの空間を満たした。
フランドール・雷鼓「うわあ!?」
藍・隠岐奈「くっ…」
ヘカーティア「なっ!?」
続く