第9話「連打を極める和太鼓」
……残念だったのう。その儂はダミーじゃ。
……さて、戦いに乗じて助け出すとするか。
儂は、サトリと付喪神の後ろに倒れている被害者達を、部下達を駆使して助けた。
……だが、氷華殿は既に居なかった。一体、何の術じゃろうて。これは後で捜索せんとな。
そして儂は、広間から出て少し行った小さな空間にて、ぬえと妹紅殿と狐を下ろした。
……すると早速、狐が目を覚ました。
藍「……っ、ここは……?」
マミゾウ「目を覚ましたか、狐よ。」
藍「なっ……!お前はあの狸……!」
マミゾウ「おっと待った。そう身構えるな。儂はただのスパイじゃ。氷華殿の情報が欲しかったのじゃよ。」
藍「……狸の言う事など、俄かには信じ難いな。」
マミゾウ「……やはり狐は頭が硬いのう。これだから困るのじゃ。」
藍「何だと?」
マミゾウ「儂はお前を助けてやったのじゃ。……ここの攻略には必要不可欠じゃからな。」
藍「……何だか快く無いな。褒められてるのかそうで無いのか。」
マミゾウ「まあ気にするな。……さて、早速じゃが、お前にはあの広間の偵察をして来て欲しい。」
藍「……唐突だな。」
マミゾウ「……狐に頼むのはシャクじゃが、そうとも言ってられんからのう。」
藍「私も文句を言いたいが、そんな状況じゃない事ぐらいは分かるさ。狐でもな。」
マミゾウ「……カンに触ったかのう。……まあとりあえず、よろしく頼む。」
藍「……ああ。」
儂は、狐に偵察を頼んだ。
そのすぐ後に、今度はぬえが目を覚ました。
ぬえ「イテテ……ここは……?」
マミゾウ「起きたか、ぬえ。」
ぬえ「あ、マミゾウ!……この様子だと、スパイは辞めたみたいだね。」
マミゾウ「左様じゃ。もう十分じゃからな。さて、ぬえには氷華殿の捜索を願いたい。」
ぬえ「え?氷華どっか行っちゃったの?」
マミゾウ「ああ。儂が見ぬ内に綺麗さっぱり、な。」
ぬえ「それは摩訶不思議だねえ。……分かった、探してくるよ!」
マミゾウ「よろしく頼むぞ。儂はここで妹紅殿の回復を待つ。」
ぬえ「オッケー!」
そうしてぬえは、氷華殿の捜索へと向かった。
後は、妹紅殿が目を覚ますのを待つのみ……
こいし「……世界に轟くドラマー……?……何それ。」
「今に分かるさ。身を以ってね!」
ドゴオオオオン!
こいし「っ…!」
「どうだい?雷の味は!」
こいし「……この……程度……。」
「おっと、食らい足りないかい?ならもっと浴びせてやる!」
ドガガガガガアアン!!
こいし「ひっ……!」
「流石に効いたろう?」
こいし「…………」
「……ん?何だあの青い光は……」
こいし「……スーパーエゴ…。」
ゴオオオオ……
「んなっ!?何だこの引力は…!?」
こいし「あなたもここで……眠れ……!」
ズオオオオオオオ!
「ぐっ……!負けないさ……!轟け!プリスティンビート!!」
ピッシャアアアアアン!
こいし「ひゃっ…!?」
ゴゴゴゴ……
「収まったか…。」
こいし「…………。」
「……まさかここまで強いとは。分かった、私の名前を教えよう。私は、堀川雷鼓だ。」
こいし「……雷……鼓。」
雷鼓「……さて、本気で終わらせるよ!」
こいし「……そういえば。」
雷鼓「ん?」
こいし「さっきまでここにいた人たち……どこに行ったの?」
ここは……?
私はこいしの赤い光をマトモに受け、そのまま地に伏した。だが、今私がいる場所は、明らかにさっき私達がいた場所と違った。そして、こいしもいない。だが、私が身を起こした時、ある妖怪が目に入った。
妹紅「狸の……旦那?」
マミゾウ「お、ようやく目が覚めたか。」
妹紅「これは……一体……?」
マミゾウ「簡単に言うとな、お前さん達がサトリの赤い光に敗れた時に、儂がタイミングを見計らってお前さん達を救った。それだけじゃ。」
妹紅「救った……?旦那は敵じゃないのか?」
マミゾウ「ただのスパイじゃよ。氷華殿を信頼させるために、わざとお前さん達を敵に回した。悪かったのう。」
妹紅「そ、そうなのか……。……そういえば、他の皆は?」
マミゾウ「ぬえは氷華殿の捜索、あの狐はサトリの偵察じゃ。」
妹紅「そうか……てことは、藍はあそこにいるのか?」
マミゾウ「そうじゃな。あの危なっかしい妖怪を放っておいたらどうなるか分かったもんじゃない。」
こいし……あいつが暴走するとここまで強いのか……。いや、これはもう強いという領域を超えているかもしれない。とにかく、それだけ強大だった。正直、能力が無いままこいしと戦うのは避けたい。
……だが、そこに藍がいる。私の仲間がいる。だったら……行かないわけには……いかない。
妹紅「……旦那。私はもう平気だ。私をこいしの……、藍の所へ、連れてってくれ。」
マミゾウ「……待っとったぞい。」
旦那はにやりと笑い、こっちじゃ、と私を誘導した。
続く