貴女へ
まだ見ぬ貴女へ
お誕生日おめでとう。
こんな所に書いたとしても、貴女に届くかどうか、私にはわからない。
だけど、もし巡り巡って、貴女に辿り着いたら。
もしそうなったなら、私は嬉しい。
確か、貴女と出逢ったのは、だいたい一年くらい前だったかな。貴女の声に惚れ込んだ私が、連絡したのが始まりだったと思う。
あの日から、いろいろなことがあったね。
私が忙しくなってからも、貴女は、いつも励ましてくれたよね。
貴女のお陰で、頑張れたよ。
だから今度こそは、私が力になりたい。
ここに書いても、もしかしたら、貴女には届かないかもしれない。
けれど。
貴女に逢えたこと、
貴女の声を聴けたこと、
貴女と話せたこと、
その全てを、
私は一生、絶対に忘れないよ。
出逢ってくれて、本当にありがとう。
お誕生日、おめでとう。
「…ふぅ」
私は、グラスの氷が溶けてしまったレモンティーを飲み、薄い甘さを味わった。
クーラーの付いた部屋で、手紙を書く。
「あ、もうこんな時間」
私はそうして、テレビを点ける。
好きなお笑い芸人のチャンネルでもなく、次回予告から気になっていた回のアニメの録画したものでもなく、ローカルな番組を付ける。
「これこれ」
今日は、貴女の生まれた場所がロケ地。
貴女もきっと、見ているだろう。
不意に、電話が鳴る。
仕事の電話だろう。
今は、まだまだ見習いみたいな立場だけれど、絶対に叶えたい夢がある。
「…これも、書き足すか」
私は、今、貴女に話した夢へと頑張っているよ。
貴女の夢が、叶いますように。
そして、たくさんの素晴らしい日々が、貴女を待っていますように。
貴女の生まれたこの日に、沢山の祝福を。
「…よし」
そして私は、空を見た。
貴女によく似合う、綺麗な青空だった。
────それから私が、貴女と再び出逢うのは、暫く後の話。
読んでくれて、ありがとう。
まだ見ぬ、貴女へ。