残酷だよテレパシー
いつもの時間軸です。
視点は針生です。
テレパシー(ジェミニ)で遊びます。
「海」
「はーい」
「俺もですね」
「……3人、じゃあポイントは無しか。なら次。すいか」
「はーい。……あ、俺だけ?」
「じゃあポイント獲得だな」
「いえーい」
……はい!俺と鈴本が得点したところで説明!今、俺達は『テレパシー』をやってます!
事の始まりはまあ、ご飯待ちしてる時に『2人1組チームでアナログゲームやるなら誰と組みたいか』っていう話になって、まあそれは全員、『人狼なら羽ヶ崎君か社長』、『人読みゲーなら鳥海か角三君』、『長考するゲームなら鈴本か加鳥』、『瞬発力が必要なら針生(つまり俺ね!)』、『雑学ゲーなら舞戸さん』、『アホゲーなら刈谷』みたいな結論に落ち着いたんだよね。
……で、まあ、そこまでは良かったんだけどさ。
その後、鳥海が言い始めたんだよ。
「でもまあ、『はい、2人組作ってー』ってやるとこの面子だと1人余るよね」
こういう残酷な事を!
「じゃあゲームを始めます」
「残酷!社長すっげえ残酷!」
「安心してください。このゲームで『ペアが4組できて1人余る』可能性は限りなく低いですから」
鳥海の発言を受けての社長のコレ!いやゲームはいいけどさ!なんかもうちょっと無かったの!?
ということで、ゲーム開始。俺達がやるゲームは『テレパシー』とか『ジェミニ』とか言われる奴ね。
「えーと、じゃあルール説明。親はお題を出す。全員でお題から連想される単語を1つ書く。それで、『2人が』同じ単語を書いていた場合、その2人は得点。1人じゃ駄目だし、3人以上でも駄目。以上!」
「紙とペンだけあればできるのがいいよね」
「紙ならあるよー」
「ペンもありますよー」
ということで滅茶苦茶雑にゲーム始まったんだけど、いいのかなーこれ。
「ちなみに制限時間はオーブンの中のお肉が焼けるまでとします。焼けた時点で終了アンドご飯ね」
……ま、いいか。ご飯の待ち時間にゲームってことだし……いや、よくない!なんかオーブンから滅茶苦茶美味そうな匂いがする!お腹減った!めっちゃ減ってきた!ゲームどころじゃないけどまだ焼けるまでには時間が掛かるってこれもう拷問じゃん!何これ!
で、ゲーム始めた。なんか不思議だけど、ゲーム始まっちゃうと空腹とか割とどうでもよくなるよね。あははは。
「……えーと、で、お題『夏』で、『すいか』が2人、『海』が3人、『エアコン』が1人、『夏休み』が1人、『太陽』が1人、『生脚魅惑のマーメイド』が1人、と。……案外ばらけるな」
「これ、3人以上になる事を恐れてたら全然得点できないね」
「傷つくことを恐れずに歩み寄らないとぼっちになるんだね!」
「まるで人間関係だね!」
なんか良い感じに舞戸さんと鳥海がまとめてるけど、うーん、まあ、そんなかんじ。
案外さー、お題から連想する1つの単語、って、被らないよ。うん。
……うーん、もっと皆が書きそうな物、書かないといけないんだよなー……。
「じゃあ次のお題は『メイド』でいきます」
「舞戸さん。舞戸さん。ねえ、ちょっと」
「メイドです」
「おーい誰か舞戸を正気に戻してくれ」
「いやいやいや!正気だから!私正気だから!」
舞戸さんが自分の正気を主張してるけど、俺の頭の中には『狂人は自分が狂人だと自覚できない』っていう言葉が右往左往してるんだよねー。あははは。……いや、この部、大体全員これ当て嵌まる気もするけど。
「『メイド』と聞いて!君達!何を思い浮かべた!?」
「そりゃ……あ」
なんか言いかけた羽ヶ崎君の微妙な、めっちゃ嫌そうな表情を見て、舞戸さんはにやりと笑う。
「私を想像してくれても構わんが!君達!単に『メイド』と言われたならば!もっと他に想像できるものはあるはず!私を連想していくのもアリ!皆が私を避けて通る事を予想して別路線を行くもアリ!これは高度な読み合いを誘発するナイスお題なのです!」
あー、成程なー。
あからさまに答えが1つ見えてると、それに集中するか避けるか、っていう読み合いが楽しいよね。うん。
他のお題でも読み合いはあるけど、こういうお題だと『明らかに集中するであろう単語』が1つ見えてるから、よりぶつかり合いが予想される、ってかんじ?
「ではいきます!はいオープン!」
で、開票!
……。
「えーと、『カフェ』2票。鳥海と角三君はおめでとう」
「いえーい!」
「いえーい」
まずは見えてる地雷を踏みに行かずにうまいこと落ち合えた2人。うん、分かる分かる。
「続きまして『舞戸さん』と書いてくれた社長と『私』と書いた私はまあ同じカウントでいいよね?」
「いいと思います。俺と舞戸さんは得点ですね」
続いて見えてる地雷を踏みに行ったら生き残った2人。まあこの部きっての狂人2人だから分かる分かる。
「さらに続いて『とこよ』と書いてくれた加鳥と『とこよちゃん』と書いてくれた刈谷が得点。……なんか結構ペアできたね」
更になんか意外なんだけど、3つ目のペア成立。これって確率的にものすごくものすごくない?
「俺は加鳥がとこよちゃんを書くんじゃないかと予想して書きましたよ!」
「あー、人読みしたのかあ。うん、ピンポイントに『この人はこれを書く』って分かってればそういうのもアリなのかー」
なんか刈谷が人読み成功するのって意外なんだけど。ね。
「そして最後ですが、『エプロン』と書いた鈴本と『料理』と書いた針生と『弱い』と書いてくれた羽ヶ崎君は無得点です。ところで羽ヶ崎君」
「何?」
「このゲームはお題に対して悪口を言うゲームではないよ?」
「は?誰がお前に対して言ったって?」
「うわーん羽ヶ崎君が小学生みたいなこと言う!」
……羽ヶ崎君は深読みしすぎたし、鈴本と俺は無難なところ行き過ぎたんだなー。うーん、難し!
「では次のお題ですが、『10までの数字』という事にしましょう」
「えっそういうお題あり?」
「まあいいんじゃないか。ばらけそうであり、被りそうであり。ま、予想ができないという点では少しやりづらいかもしれないな」
でもまあ、逆にこれって人読みの極致みたいなのにならない?俺はなる!
「では結果発表ですが……意外ですね」
「うん。ね」
「『0』と書いた鈴本と針生と舞戸さんと鳥海は無得点ですが、どうして0を選択したんですか?」
「なんとなく、だ」
「鈴本が書きそうだったから!」
「鈴本が書きそうだったから」
「まあ鈴本が書きそうだったからですわー」
人読みしていったんだけど、駄目だった!全員で鈴本に一極集中しちゃった!むずいわこんなん!
「で、『3』を書いた角三さんと加鳥が得点。『2』を書いた羽ヶ崎さんと『8』を書いた刈谷と『9』を書いた俺は無得点ですね」
うーん、ここは得点したかったなー。人読みも、『他の人が読めそうな人』と『自分にしか読め無さそうな人』を考えないといけないのかー。
「じゃあ次のお題は『女の子の可愛い服装』で」
「え?」
「『女の子の可愛い服装』で」
「……え?」
全員が耳を疑ってるけど、鳥海はしれっとしてるよ。あはは。
「いや、ここに居る人達、大体全員の趣味知ってるじゃん?だからまあ、面白いかなー?って」
「魔女狩りかな?」
「ここに居るの全員魔女だから。狩られるの全員だから。全員ハンティング対象だから」
「じゃあ単なる殺し合いじゃん」
……うん、まあ、こういうのも1回ぐらいやってもいいよね。あはは。
「はい、じゃあ結果発表でーす。まず『ブレザー』を書いた角三君と角三君を狙いに行った俺は得点!」
「……うん」
「角三君、前言ってたもんねえ」
まあここは分かりやすかったから今回避けたんだけど、鳥海は他の皆が避けるって思って狙っていったのかー。うーん、流石だわ。
「次に『厚着』って書いた社長と鈴本が得点」
「俺を狙いましたか」
「ああ。それでいて自分に嘘は吐いていない」
ここ2人はむっつりだからなー。あははははは。
「『浴衣』で羽ヶ崎君と針生が得点、ってのが俺的に意外ですわー」
「誰か書くだろと思った」
「俺は鈴本か舞戸さんが書くと思った」
お互いに全く予想してなかったところでペアったわ。あはは。まあこういうこともあるよね。ラッキー。
「……で、舞戸さんが『チャイナドレス』」
「自分の心に嘘は吐けなかった。誰も書かないって分かってたけどそれでも私はこの道を選んだ。反省はしていない」
「刈谷が『白ワンピ』」
「麦わら帽子も足してください!」
「加鳥が『眼鏡』」
「なんで誰もこれ書かないの!?おかしいよ!」
加鳥が机に拳を叩きつけてるの見て俺はもう笑うしかないよね。あはははは。
「いや、服か?眼鏡は服なのか?」
「あー、確かに加鳥狙いに行くのもアリだった」
「分かりやすすぎて避けるでしょ、流石に」
ねー。まあ、さっきのお題の『メイド』よりは読み合いが活発だったかな?
お互いに答えが分かってるお題って、それはそれでいいよね。
「じゃあ次のお題ね。お題は『学校の先生』で」
次は俺が親なのでまあ、ちょっと楽しく思い出に浸れる奴を持って来てみた。
「学校の先生、か。……そういえばもう俺は授業でやっていた内容を忘れかけているが元の世界に戻った時、真っ当に生きていけるのだろうか」
「あー……そうだね、私ももうインテグラルってなんだっけってなってる」
「舞戸、お前2B使うっけ?」
「使わなくても受験はできるんだけどね、まあできないよりはやっておいた方がいいかなって……」
「僕はもう英語読めるが気しないなあ……『翻訳』のスキル欲しいなあ……」
……なんか楽しくない思い出に浸り始めちゃった!
気を取り直してゲームスタート。それで開票。
したんだけれどね。
「……まさかの」
「わーい私達仲良しだーい」
「裏を読んだのに……」
「まあ……こういうこともありますよ。ね!」
……俺達全員、9人揃って、書いたのが『日疋先生』だった。うん。
「先生、元気かなー」
「先生がここに居てくれたら、滅茶苦茶いっぱい食べさせる自信がある……」
「ああ、あの先生滅茶苦茶食うもんな……」
「あとめっちゃ笑う」
「よく行方不明になりますね」
「存在が面白い」
「授業も面白い」
「歌が上手い」
「料理もできる」
「身長が高い」
「体重もすごい」
……まあ、なんか褒めてるのか悪口なのかよく分からないのまで出てきたけど、それだけ俺達にとって日疋先生の存在がでかいってことだよね!
あー……なんかちょっとホームシックっていうか、学校シックっていうか、先生シックになってきたかも……。
それからもう少しやってたら肉焼けたからご飯になった。不思議なもんだけどさー、やっぱり、目の前に肉がドーン!ってくるともうそれだけで腹減るよね。さっきまでゲームやってたら腹減ってなかったのにね。あははは。
「塊のお肉をじっくりオーブンで焼き上げると中はジューシー外はこんがりでとても美味しい。塊肉より薄切り肉の方が多い日本では中々味わえない贅沢品……」
「……この塊、先生なら1人で食いそうだな」
「いやー流石に流石にそれはないでしょ」
「いえ。人間の胃袋の容積は平均して約2Lらしいですが、この肉の体積はそれくらいに見えます。物理的に入るならあの先生なら食べそうですが」
「2Lの肉って何グラム……?」
「大体2100とか……脂肪少なかったらもっと重いけど脂が多い方が食べるのはきつい気がする」
「そんなん1人で食べてたらもう化け物じゃん」
この場に先生居ないけど、居たら多分、『失礼なやっちゃなー』って笑ってくれると思う。
……元の世界に戻ったら、先生も含めてこのゲームやりたいなー、って思った。うん。




