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除け者はいないけれど獲物はいる

例の如くの時系列です。

視点は刈谷です。

初っ端から痛い描写があります。ご注意ください。

そして無駄に長い。

「舞戸さんが美味そうに見えます」

「……わかる」

「おいやめろ!やめんか!寄るな!寄るな、ね、ちょ、ちょっと落ち着こう、落ち着こってあああああやだちょっと早速齧らないでやだやだやだあああああああああ痛い痛い痛いあああああああああああ」

 ありのまま起こった事を話すとですね、社長と角三君が、舞戸さんを捕まえて齧り始めました。

 かじりはじめました。

 かじってます。

 ……かじって、ます……ね……。




 ここに至るまでの経緯は、あれですよ。いつもの奴ですよ。『折角なので』が行き過ぎた結果ですよ!


 ということで、ちょっと話は過去にさかのぼりまして……今日の朝。

「おはよー。今日のご飯は鳥雑炊ですよー」

 いつも通りに朝ごはんが用意されてて、いつも通りに全員で食べ始めたところで。

「ところで昨日、6号機のテスト運転してたらさあ」

 加鳥が切り出しました。(いつのまに6号機までできてたんですかね……)

「変な洞窟、見つけたんだよね。1F北東らへんで」


「よーし行ってみよう。じゃあお昼ご飯はお弁当何か持って行こうか」

「俺、焼いてあるサンドイッチみたいなやつ食いたい」

「ホットサンドかな?りょうかーい。それにあと、コーンポタージュも持っていこう。あ、でも1F北だと暑いかな」

「んー、どうだろ?北東の方は行ったことないからなー?」

「待て。待てよ。おい。早い。結論が早いだろうが。行くのか?その洞窟とやらに行くのはもう決定事項なのか?」

 一部で話がすっかりお弁当の事になったところで、鈴本がストップかけました。まあ、そうですよね。ちょっと結論が早すぎますよね。

「んー、折角だし。駄目?」

 鳥海はノリで生きてますよね。いいと思います。はい。

「何か見つかる可能性もありますからね。より効率のいい元の世界への帰り方などが見つかれば大きなメリットになりますから」

 社長は理屈で生きてますよね。これもいいと思います。はい。

「私はもうすっかり外でお弁当食べる気分になってる」

 舞戸さんは食欲で生きてますね。これはちょっとどうかと思います。はい。

「……まあ、時間はあるし、いいんじゃないの」

 そして結局、羽ヶ崎君が押して、決着でした。




 それから各々が準備をしました。というか、舞戸さんがお弁当を作る間の待ち時間だったんですけど。

 毒温泉の悪夢があるからか、鈴本は普段着ていない羽織を装備。

 猫耳の時の悪夢があるからか、社長は普段持ち歩いていない薬を装備。

 それから、『深淵の石』で色々大変なことになった時の悪夢があるからか、羽ヶ崎君は念入りに装備の点検。

 その他の人達はごろごろっと。いつも通りのリラックスっぷりです。


「さあおべんとができたよ!」

「じゃあ出発するか」

 全員準備が終わってゴロゴロはじまった頃、舞戸さんが大きなバスケットを持って化学準備室にやってきたので、そのまま加鳥の記憶を辿って『転移』しました。

 そうして俺達は『変な洞窟』に向かったわけですよ。




「ここがその洞窟かー」

「確かに変なかんじですわー。なにこれもっふもっふしてるんだけど」

 ……変な洞窟、という言葉は間違っていませんでした。

 だってなんか……洞窟の壁が、柔らかくてふかふかしていてあったかいんですよ!変ですよ!

「これは……生き物の毛皮、か?……あ、柔らかいな」

「不思議ですね。外観は只の岩山なんですが。生き物が擬態しているんでしょうか?」

「その理屈はおかしくない?だってほら、ここ断面のはずだけど、見事に毛皮と岩の二層構造だし」

 それから色々と剣で刺したり魔法で凍らせたりしてみたんですけど、結論は『どうも本当にただ柔らかくてふかふかしているだけの壁と床』でした。

「俺、ここで昼寝したい!なにこれ!なにこれすっごくいい!すごくいい!」

 とりあえず全員で洞窟内部の壁や床をもふもふ触ったり、いっそ壁や床に埋もれたりしてその変っぷりを楽しみました。

 いや、だって本当にふかふかだったんですよう……。


「で、どうすんの。これ。奥まで行く?」

「逆に行かない理由が無い!」

 そして一頻りもっふもっふしたら、そのもふもふの床を踏みながら奥へと進み始めました。

 ……それが悲劇の始まりとも知らずに……。


「行き止まりか」

 洞窟は案外すぐに終わってしまいました。

 相変わらず床や壁がもふもふふかふかしているだけで、変化も特にありません。

「モンスターも居なかったねえ……うーん、何かありそうなんだけど」

「じゃあ帰りますか?」

 提案してみたんですが、全員なんとなく気になるらしく、そのまま調査続行しました。

 気になる気持ちはわかります。はい。

「あれ、ここ良く見たら穴みたいになってるね」

 そうして調査し続けた結果、行き止まり少し手前の壁の窪みがそのまま穴になっていることを加鳥が発見しました。

 あまりにも壁が柔らかくてもふもふしているために分からなかったみたいです。

「ちょっと行ってみるねー」

 そしてそのまま加鳥は穴の中に潜っていきました。

「あ、じゃあ俺も」

 針生も潜っていきました。

「んー、じゃあ俺も俺も」

 鳥海も無事向こう側に到達したみたいですね。

「じゃあ私も」

「お前は後」

「ぐわーっ」

 舞戸さんが潜ろうとして羽ヶ崎君に押されて転んでますね。床はフカフカなので怪我の心配はないと思いますけども。

 ……ということで、俺達は順番に狭くてふんわり柔らかい穴を通って向こう側に到着したんですよ。


 ……到着したはずだったんですけど、俺が穴を通ったら、そこには誰もいませんでした。

 ただ、相変わらずふっかふかの地面があるだけです。

 思わず部屋の中心に向かって歩いたら……ふっと、足が沈みました。

「えっ」

 そしてそのまんま、俺はふっかふかの穴の底へ落ちていった、んだと思います。




 ……そこまでは覚えてるんですよ。逆に言うと、そこまでしか覚えてません。

 ただ言えることは、気づいたら俺達は洞窟の外に居て、それぞれ見た目に大きな変化があった、っていうことです。




「空が青い」

 はい。なんで俺達は外に居るんでしょうか。

「みんな無事か?……ん?……なっ……なんだ、おい、なんだこれは」

「あっこれ、僕、自力で起き上がれない奴じゃないかー」

「ぎゃーっ!しっぽ!私、しっぽ生えてるーっ!」

 ……そして俺達はなんで、色々と……体が変わってるんですかね?


 そりゃあもう、混乱してますよ。全員、自分の体がいきなり変わってるんですから、そりゃ混乱しますよ!

「―っ!?」

 でも、一番混乱してたのは間違いなく羽ヶ崎君。

「死なないで羽ヶ崎君!アンタがここで死んだら……えーと、色々どうなっちゃうの!?ってことで舞戸さーん、水、水かけてあげて、水」

「ほいさー」

 舞戸さんがジョウロから水を出して羽ヶ崎君に掛けると、さっきまで混乱して口をパクパクさせつつジタバタしていた羽ヶ崎君、やっと自分の能力を思い出したみたいです。

 自力で水魔法を使って、その場に小さな池を作りました。

 池につかって少ししたら、羽ヶ崎君も落ち着いたらしいです。

「……な、なん、なの、これ……なんで僕は魚類になってる、訳……?」

 そうです。

 羽ヶ崎君の下半身は見事に魚類!……言うなれば、人魚、になっていたんですよ。




「とりあえず、全員無事か」

 言いながらげんなりしている鈴本は、両腕が鳥の羽になっています。脚も猛禽類の脚になっていますね。

 つまり、鳥人間です。

「無事に見える?」

 池に浸かりながらやっぱりげんなりしている羽ヶ崎君は、人魚です。下半身が魚、上半身が人間です。

 でも人魚なのに生足じゃないし魅惑でもないですね。……はい、すみません。

「まあ、全員生きていますから。無事の範疇ですね」

 社長は……パッと見、変化が無いんですよね。あれ?大丈夫だったんですかね?

「ふっかふか!私ふっかふか!ふっかふか!」

「うるさい」

 舞戸さんは狐でしょうか?ぴんとした耳と、フカフカした尻尾が何故か2本も生えてますね。なんだろう、妖孤、って言ったらいいんですかね。占われると溶けそうですね。

 自分で尻尾を触って嬉しそうにしてます。舞戸さん、ふかふかしてる物好きですもんね。

「……なんか、腹、減った……」

 角三君はなんとなく見覚えのある耳と尻尾が生えてます。手足もそれっぽくなってますね。ケトラミさんのと似てますから、多分、狼人間になったんじゃないかなと。

「うん、まあ、とりあえず全員無事で何よりなんだけど……だれか僕を起こしてくれー」

 加鳥がじたばたしているのも無理は無いです。

 何せ、下半身が馬になってますから。ケンタウロス、っていうんですかね……。自力で起き上がれない奴、ですよね、あれ。

「あはははは、加鳥、馬になってるーあははははは……俺も人の事は言えないかー」

 針生は……小さくなっていました。ええと、いや、元々小柄な方ですけど、そうじゃなくて。身長15cmくらいになってます。ついでに、羽が生えてます。なんか、こう……妖精って、こういうかんじ、なんですかね……?

「んー、俺はまあいいけど、刈谷、それ、大丈夫なん?ん?」

 鳥海はあれです。猫又です。尻尾が2本の猫ですね。雰囲気に合ってます。

「あ、はい。痛みとかは無いです。大丈夫です」

 ……そして俺は、足が木の根っこになってます。なので、動けません。しっかり地面に生えちゃってます。

「……どうしようね、これ」

「……ね」

 そうして俺達は途方に暮れる訳です。

 一体なんなんだよもう!




「薬が効きませんね」

 社長は持っていた薬を一通り全部試したみたいなんですが、成果は芳しくなかったみたいですね。これは新しく作らないと駄目な奴でしょうか。

「とりあえず、社長が新たに効く薬を作ってくれることに期待」

「それは構いませんが。元々そうするつもりでしたし」

 なんか、猫耳が生えた時もこんなかんじでしたね……。社長が居て良かったです。

「……ただ、それは良いんですが」

 でも社長が、なんか険しい顔してますね。どうしたんですかね。

「……猛烈に、腹が、減ってまして」

 社長が見つめる先には、舞戸さんが居ます。まあ、ご飯作ってくれるのは舞戸さんなので、それはあってるんですが……なんか……なんか、俺の中でよく分からない警鐘が鳴ってます。

「舞戸さん」

「おーけいおーけい。じゃあ先にお昼にしようか!」

 一方、全く危機感が無いらしい舞戸さんは、尻尾を振りつつバスケットを片手に、元気に社長に笑顔を向け。

「いや、舞戸さんの血が飲みたいです。……どうやら俺、吸血鬼になったらしいんですよ」

 真顔の社長から返ってきた返事に、硬直していました。




 そして冒頭に戻ります。

 社長が舞戸さんにじりじりと近づいていき、舞戸さんは青ざめつつじりじり後退し、そこに角三君が「そういえば俺も生肉食いたい」みたいな事を言い始めて舞戸さんをあっさり捕獲してしまい。

 ……そして舞戸さんが齧られました。食べられていました。捕食されていました。

 ちょっとでもえっちい想像をした人は想像を改めてください。

 控えめに言っても惨劇でしたし、グロ画像でしたから……。


「生肉食われたし生き血吸われた……」

 そして数分後、そこにはスプラッタな見た目になった舞戸さんが!

「いやー申し訳ないです舞戸さん」

 そして同時に、そこにはすっかり元気になった社長が!

「……ごめん」

 そして更に同時に、小腹が満たされて満足げながらも一応申し訳なさそうな角三君も!

「うん……なんで私なのさ……社長の方は分かるにしても、なんで角三君まで私をカニカニバリバリしてくれたのさ……」

「……なんか、生きてるものの肉、食いたくなって、なんか抑えられなくて……」

「なんで私なのさ……」

「一番柔らかそうで美味そうだったから……あ、あと、弱いから、食いやすそうだな、って……」

「泣くぞ」

 ……舞戸さん、既に涙目になってますね……。すぐに治しました。はい。




「……で、社長。薬を作るのにどれくらいかかりそうだ?足りないものはあるか?」

「一応、効きそうな薬の心当たりはいくつかあるので、それらを全部作ってみるつもりでいますが……大本命の材料が足りませんね」

「えっ、何が足りないん?俺ら結構いろいろ貯めこんでるよね?」

「キメラの翼、だそうです」

「それ手に入れたら空に放り投げようぜ!」

「そんなもん使わなくても『転移』があるでしょうが」

 そして舞戸さんの治療を行う横で、着々と作戦会議です。

 全員、人外になってしまったというのに、この落ち着きっぷりです。俺達もいい加減、異世界に慣れてきたってことでしょうか。はい。

「できれば早めにお願いしたいんだけど。僕、このままだと不便とかいうレベルじゃない」

 羽ヶ崎君は不機嫌そうに魚の尻尾をびたびたさせてます。

 どうやら羽ヶ崎君、下半身が水に浸かっていないと呼吸が苦しくなる上、声が出ないんだとか。ファンタジックですね。

「んー、羽ヶ崎君見てるとお腹空きますわー。いや、別に羽ヶ崎君を食べるつもりはないけど」

「やめろ!冗談じゃないっ!」

 しかも、猫又になった鳥海は、お魚になった羽ヶ崎君が美味しそうに見えるらしいです。やばいですね。

「それから、刈谷見てると爪とぎたくなってくる」

「ひえーやめてください」

 しかも、俺で爪を研ごうとしてきます。いくら木になってるからって!やめてください!

「僕は特に、誰が美味しそうに見えるとかは無いかなあ。刈谷なんて食べなくてもそこらへんに草は生えてるし」

 加鳥は草食動物になった分、平和でした。

「俺も食欲とかは無いなー。あ、でも今ならいろんな食べ物がでかくて楽しそう。あははは」

 針生は妖精みたいになった分、やっぱり平和でした。

「……正直、俺も舞戸が美味そうに見える。うっかり仕留める前に早めになんとかしてくれ」

「ぎゃああああ!やめろ!これ以上私をハンティングするのはやめろーっ!この肉食動物どもがーっ!」

 鈴本は……脚でなんとなくそんな気はしてましたが、肉食の鳥人間みたいですね。舞戸さんがまた尻尾を膨らませながら威嚇しています。多分、無駄だと思います……。

「大体、なんだって私なんだよっ!草食動物そこに居るじゃん!対して私は雑食動物!食物連鎖の底辺じゃないはず!」

 舞戸さんはそう言いつつ、加鳥を指さしました。

 あー、確かに、言われてみれば加鳥は草食動物、ですよね。

「……お前さあ、弱肉強食って知ってる?」

 しかし舞戸さん、あっさりと羽ヶ崎君の一言で論破されてしまいました。

「まあ、この中で一番弱いのは間違いなく舞戸さんです。なので、草食動物の加鳥よりも、或いは草の刈谷よりも、舞戸さんの方が食物連鎖の下層に居ることになりますね」

 しかも社長に追い打ちをかけられました。

「そもそも連鎖する前に淘汰されちゃいそうだけどねー。あははは」

 針生の笑顔が更に追い打ち。

「ええと……その、でも舞戸、美味かったから……じゃなくて……ええと……」

 さらに角三君がフォローしようとして別角度から追い打ち。

「……なあ、角三君。生肉って、そんなに美味いか」

「美味い」

「そうか……なあ、舞戸」

「やめてえええええええええ!もうやめてええええええええええ!」

「まだ何も言っていないだろうが」

 ……ああ、哀れ、舞戸さん……。




「とりあえず、全員のお腹が満たされれば私が食べられることは無い気がする」

 舞戸さんが遠い目をしながら、お昼ご飯のバスケットを開きました。

 今日のお昼はホットサンドとコーンポタージュですね。

「んじゃー、お昼にしますか?」

「そうですね。俺はもう腹いっぱいになったので別に要りませんが」

「俺は……んー……食っとく」

「おかしいなあ、僕、草食動物のはずなんだけど、普通にチキンサンド美味しいなあ……」

 各々、適当な反応をしながらバスケットの中身をとって食べていきます。

 ……なんですが。

「ちょ、ちょっと。届かないんだけど」

 池に浸かっている羽ヶ崎君は手が届かない。

「舞戸さーん!これちょっと大きい!食えない!あ、でも布団にはできるなこれ」

 身長15cmになってしまった針生にはホットサンドが大きすぎる。

「……手が、無い、だ、と……?」

 手が翼になってしまっている鈴本は食事がままならない。

「舞戸さーん……すみません……」

 そして地面に植わっている俺も、バスケットに手がとどきません!


 とりあえず、舞戸さんがバスケットを持って俺のところまで来てくれたので、俺も昼ご飯を食べることができました。

 羽ヶ崎君も同様にホットサンドを食べ始めています。

 針生用に小さく切り分けたホットサンドも用意された為、針生も食べてますね。

「……くそ、食いにくい」

 鈴本はとりあえず、適当な台の上に皿を乗せて、そこに切り分けたホットサンドを乗せて、直接口を近づけて食べる、っていう方法で食べてます。つまり犬食いですね。

 やっぱり、手が無いっていうのは人間の生活の上で致命傷ですよね……。

「食べさせたげよっか?」

「断る!」

 でも舞戸さんに食べさせてもらうのと犬食いを天秤に掛けたら犬食いの方がマシらしいです。

 気持ちは分からないでもないです……。




 そんなこんなで食事も一通り終わって、俺達はとりあえず、今日の宿を確保することになりました。

 これから探索しに行くにはちょっと、時間が足りないのと……もし、『キメラの翼』が無くても作れる薬で元に戻るなら、その方が良いからです。


 ということで、教室をとりあえずこの場に出して、それから。

「あ、社長、もうちょい右まで掘って!」

「植木鉢はこんなもんでいいかな」

「いいんじゃないの?」

 ……俺の植え替え作業をですね。やってもらいました。

 いや、じゃないと俺、地植えのままになっちゃうので!そうすると室内に入れないので!魔物とか出てきたら俺、襲われっぱなしになっちゃうので!

 ……つくづく、仲間がいて良かったです。はい。




 その後はひたすら全員、自由時間です。

 というか、社長が今作れる薬を作り終えるまでの待ち時間です。

 舞戸さんは「もう食べられたくないでござる!もう食べられたくないでござる!」って言いながら、自分の身代わりとなるご飯作りを始めているみたいです。

 そして一方、俺達は。

「加鳥めっちゃ速い!めっちゃ速い!」

「1000m30秒切ってるな、これは」

「背中、乗ってもいい……?」

 現在の体を楽しんでいました。俺は見学です。

「あ、俺、飛べるっぽい!あ、でもなんか飛んだら虫っぽい気がする!」

「俺も飛べるが……別に羽なんて無くても飛べるからな……」

「うわあ、ありがたみが無いねえ……」

「あ……なんかまた腹減ってきた……舞戸、まだかな……」

 皆がわいわいやってるのを見るのは楽しいです。

 なんだかんだ言って、何が起きても結構楽しめちゃうんですよね、俺達。


 尚、羽ヶ崎君は泳ぎに行っちゃいましたし、鳥海を『転移』係として連れて行ってしまいました。

 ついでにお魚とってくるらしいです。はい。そうすると羽ヶ崎君が鳥海に齧られる事案が回避できていいと思います。




 結局、夕飯時までに社長の薬は出来上がらなかったみたいです。

「仕込みは終わったので、あとは一晩煮込んで完成です。なので今晩は徹夜します。明日の朝にはできると思うので、できた薬を試してから先のことを考えましょう」

「うわあ、お疲れ様……あれ?もしかして社長、今、夜行性だったりする?」

「まあ、恐らくは。普段よりは徹夜が苦にならない気がしますね」

 良く見ると、社長は目の色が若干赤みがかってますね。犬歯が伸びたりもしてるらしいので、やっぱり吸血鬼っぽいかんじですね。

「でも、さっき陽の光に当たってても大丈夫だったよね」

「ああ、日光が駄目な体質になっていたらあのまま死んでいたでしょうね」

 さらっと怖い事言わないでくださいよ……。

 ……と思ったら、社長がふと、苦い顔をしました。珍しいですね。

「ただ……若干、流れる水に忌避感がありますね」

 あれっ、日光は平気なのに、水、ですか。

「あー、吸血鬼って、流れてる水、跨げないんだっけ?」

「そういう設定の話もあるにはあるが。どちらかと言うと銀の弾丸や十字架の方がメジャーじゃないか?」

「あ、社長、ニンニクは大丈夫なん?ん?」

「銀も十字架もニンニクも大丈夫そうですが。試してみた方が良いですかね」

「え……試してもし駄目だったらやばいんじゃ……」

 ヤバいと思います。やめましょう!




「さあご飯だ諸君!たーんと食べたまえ!そして私を齧るのはやめてくれたまえ!」

 そしてご飯になりました。

 今日のメニューは肉っ気というか、血の気が多いですね。レアのステーキとか。レバーペーストとか。あ、もしかしてあのソーセージみたいなのって、ブラッドソーセージでしょうか。だとしたらわざわざ作ったんですよね、きっと。すごいですね……。あ、いや、こうでもしないと齧られるんですもんね……。

 それから魚も並んでますね。刺身と蒸し魚みたいです。こっちはさっぱり目でしょうかね。他にも野菜とか果物とかも並んでます。俺は食べるとしたらこっちのあっさりさっぱりメニューな気がします。一応、木なので……なんとなく!

「……飯、美味そう、なんだけど……生肉……」

「やめろ!やめろーっ!ほんとやめてお願いだからもう齧らないで齧らないで齧らないでいやあああああああ」

 でも舞戸さんの努力もむなしく、角三君がおなかをすかせた目で舞戸さんを見ています。つまり、食べ物を見る目で舞戸さんを見ています。

「おい、舞戸、落ち着……あ、くそ。駄目だ、舞戸、お前、視界に入るな」

「いやあああああああああああああ!」

「ああくそ、動くな!動いてると見ちまうんだよ!止まれ!」

 こっちも駄目ですね。狩猟本能ですね。

「舞戸さん、俺は落ち着いていますから大丈夫です」

「最早誰も信じられぬ」

 気持ちは分かります……。


 結局舞戸さんは、羽ヶ崎君の「舞戸、お前こっち来てれば?僕は別に肉、食べたいと思わないから」という言葉によって、俺と羽ヶ崎君に挟まれる位置に収まりました。正面は同じく、別に生肉を食べたいと思わないらしい針生と加鳥です。肉食の皆とは目が合うだけでヤバいらしいです。はい。

 なんというか、舞戸さん、大変ですね……。




 食物連鎖最下位の舞戸さんよりも、食卓の方が食物連鎖カーストが低かったみたいです。

 とりあえず大変なことになっていた角三君も、お腹がいっぱいになったら落ち着いたらしいです。良かったです。本当によかったですよ。じゃなきゃまた舞戸さんがスプラッタになっていたかもしれません。

「じゃあ皆、お腹が空いたらこれを食べるんだからね。私は食べ物じゃないからね!よろしくね!」

 舞戸さんはおっかなびっくり全員をハタキではたいてから、そう言い残して逃げていきました。

 ……机の上には、冷めても美味しそうな肉料理がたっぷり乗っています。余程、齧られたのが怖かったんでしょうね……。

「貰うけどいいよね?」

「……まあ、いいんじゃないか?」

 羽ヶ崎君が早速、お肉を食べ始めてます。えっ、おかしくないですか!?さっきまでご飯食べてたじゃないですか!もうお腹空いちゃったんですか!?……あ、魚って、あんまり燃費がいい生き物じゃないですよね。そういうことなんでしょうか。

「俺はできれば生き血がいいんですが」

「社長、よっぽどじゃないなら我慢してやれ。そろそろ舞戸が死ぬ」

「分かってますよ」

 社長は微妙に物足りなさそうな顔をしています。うーん、やっぱり火が通ってる血だと駄目なんでしょうか?

「というか、社長、俺らの血じゃ駄目なの?ほら、角三君とか少しくらい血抜いても良さそうだけどさ」

「えっ」

「ああ、大丈夫です、角三さん。血は足りていますから。少なくとも飢えて死ぬような状況ではないので」

 あ、角三君がすごくほっとした顔をしています!

「社長の食欲は関係なしに、角三君の血はちょっと抜いておいた方がいいんじゃないかなあ……」

「えっ」

「いや、やめましょう。……もし、今作っている薬が効かなかったら、その時は戦闘になりますから」

 あ、また角三君がすごくほっとした顔を……って、あ。

 あああ……!

「……そういえば、『キメラの翼』ってもしかして、『キメラ』と戦わなきゃ、手に入らない?ん?」

「はい。なので俺達は……この体でモンスターと戦わなくてはいけない可能性があるんですよ」




 とりあえず、薬ができるまではどうしようもないので、寝ることになりました。

 が。

「俺、布団に入って寝たら潰れて死にそう……あー!舞戸さんになんか作ってもらえばよかった!」

 針生は布団で寝られないらしいです。サイズがサイズなのでしかたないですよね……。小さいサイズの布団を作ってもらえば良かった、と後悔しても遅いですね。舞戸さん、既に外でケトラミさんに包まって寝てますから、起こすのは申し訳ないかんじです。

 ……と思っていたら、窓からメイドさん人形が入ってきました。

「んっ!?」

 そして、入ってきたメイドさん人形たちは、針生の前にメイドさん人形サイズの布団を1つ置いて、去っていきました。

「……え、なにこれ、貸してくれるのかな」

「んー、まあ、持ってきてくれたんだし、借りればいいんでない?」

 針生は恐る恐る、小さい布団に入りました。

「……めっちゃ寝心地良い……」

 それはよかったです。


「……ねえ、僕、どうやって寝ればいいの?水の中で寝ろって?」

「僕も聞きたいなあ……」

 一方、羽ヶ崎君と加鳥はすごく眠りにくそうです。魚とケンタウロスですもんね……。

「いっそ徹夜するとか……?」

「いいえ、明日は下手すると戦闘です。体力は温存しておくべきでしょう。……眠れないなら、気絶させましょうか?俺でも可能だと思いますが」

「それは嫌だなあ……」

 仕方が無いので、全員それぞれ適当にもぞもぞやって眠れそうな体勢を探して、なんとか眠りました。

 あ、俺は楽な体勢なんて探しようがありません。

 植木鉢に植わってるので!




 そんなこんなで翌朝。

「駄目でした」

 社長からシンプルな報告がありました。

「ええと、つまり……?」

「モンスターとの戦闘になりますね」

 ……不安しかないです!




 そうして俺達は再び、洞窟の近くへやってきたわけです。

 そこでキメラ、を探してたんですが……そいつはあっさり見つかりました。

「でかいな」

「でかい」

「多分誰よりも俺がアレでかいって思ってる!」

「んー、まあ、針生は今身長15cmだし、相対的には一番でかく感じるよね」

 でかいです。でっかいですよ。

 体高5mぐらいありそうですね。ケトラミさんよりでかいです。

 そんな、キメラ。頭はライオン、胴体は山羊、尻尾がヘビで、更に鳥の翼が生えていて、脚はどことなく爬虫類っぽいです。

「では、俺達は今からあれの羽を採らなければならない訳ですが……」

「……倒してしまってもいいんだろう、とは、言えないな。今の体じゃあ、戦闘するにも不安だ」

 そして、そんなモンスター相手に、俺達はというと……。

「俺、身長15cmだし!」

「僕は水に浸かってないと死ぬから動けない」

「僕は機体に乗れなくなっちゃったからなあ」

「俺、剣はなんとか持てるけど、盾、持てない……」

「刈谷は足が根になってるから、動けないだろ?そして俺は手が無いから刀を持てない。戦力半減どころじゃないな」

 ……体の変化によって、色々と、不都合が生じていました。

 これは……どうすればいいんですかね……?




 ということで、キメラを遠目に眺めつつ、作戦会議です。

「まず、できないことを無理にやろうとするのはやめましょう。ある意味、体の変化はチャンスです。デメリットを埋めるのではなく、メリットを伸ばすべきかと」

 そして当然のように社長が議論を先導。うん、多分、それがいいと思います。

 俺が自由に動けるようにするのは、正直、無理です。そこに労力を費やすぐらいなら、別の角度から戦い方を探った方が効率的ですよね。

「まあ、それは分かるけど。……ってことは、僕は固定砲台扱い、ってことでいいの?」

「そうなるでしょうね。羽ヶ崎さんは水が無い所では呪文の詠唱もできないようですから。だったら動かずに、遠距離から魔法で援護してもらった方がいいと思います」

 社長はそう言うや否や、地面に適当な窪みとバリケードになる石壁を作りました。羽ヶ崎君も黙ってそこに水を流し込んで池を作って、そっちまで這って移動……してる途中で、鳥海に運搬されて池に放流されました。なんか微妙な顔してますけどしょうがないと思います。はい。

「じゃあ、僕と刈谷もそんなかんじでいいかなあ」

「いや、刈谷は羽ヶ崎さんと一緒に遠距離から援護と回復でいいですが、加鳥はむしろ、動き回ってください。馬の機動力を生かさないのは勿体ないです。地上からの攪乱をお願いします」

 普段、後ろで構えて動かない加鳥は、逆に動き回ることになるみたいですね。慣れないことをやる訳ですから、ちょっと心配ですね。

「鈴本は空中からの攪乱をお願いします。刀を持てなかったとしても、脚に刃物を括りつけておくことは可能ですよね」

「ああ、分かった……くそ、足技なんて使った事もないぞ……」

「無理はしないでくださいね。あくまで攪乱ですから。……角三さんは、剣一本で戦って下さい。鎧は装備できる分だけ装備して、防御は捨てていいです。普段の鈴本みたいな戦い方を意識してみてください」

「……やってみる」

「鳥海はいつも通りに動けそうですね。いつも以上に盾役をお願いします。俺は状況に応じて魔法による攻撃と援護を行います」

 ……そして、役割が各々に割り振られていき……そして。

「え?社長、俺は?俺は?」

「針生はこれをお願いします」

 針生に、小さな瓶が渡されました。

 小さな瓶、とはいっても、今の針生にとっては抱き枕サイズです。結構大きく見えますね。

「これ何?」

「毒です」

 ……まあ、はい。それはなんとなく分かってました。

「針生はこれをキメラの口腔へ放り込んでください」

 ……。

 俺の脳裏に、ふわっと、図が浮かびます。

 キメラの口の中に毒の瓶を放り込もうとした針生が……毒の瓶ごと、ぱくん、と食べられる様子が……。

「え?それ、俺に食われろってこと?」

「直前で逃げてください」

「いや無理無理無理無理!食われるよ!毒ごと食われるよ!」

「……白ぴくみん……」

「やめて!」


 ……結局、針生は影からチクチクやる係になりました。

 うん、妥当ですよね……。

「あ、私は?」

「お前は出てくるな。隠れてろ」

「はい……」

 ま、まあ、舞戸さんも妥当、です、よね……。




 そして戦闘が始まりました。

「こっちだ!」

 先鋒は鈴本です。空から真っ直ぐ急降下して、脚に括りつけたナイフをキメラの背中に突き刺しました。

 キメラが反撃するより先に羽ばたいて離脱。そこに羽ヶ崎君が氷の弾丸を数発撃ちこんで攪乱して、加鳥がキメラの周囲を凄い速度で走りながらビームで攪乱。

 角三君がちょっと暴走気味なぐらい攻撃的に突っ込んでいって、鳥海が角三君を守りながらキメラの攻撃を引きつける、と。角三君が突出しすぎて鳥海が守り切れなくなったら、社長が岩の壁を間に挟んで守っています。

 見えないですけれど、多分、針生は影からチクチクやってるんだと思います。キメラが時々、変な動きをするので。

「暇でござる」

「あ、はい。暇ですね」

 そして舞戸さんは俺の横で、ケトラミさんに隠れて(埋もれて?)います。俺はその横で待機です。

 皆の様子を見る限り、今回、俺の出番はないかもしれません。素直に嬉しいです。回復役は暇なのが一番ですよね。

「……案外皆、大丈夫そうだね」

 舞戸さんは珍しそうに、皆の戦いを見ています。ああ、そうか、舞戸さんは普段、俺達が戦う様子をあんまり見ないんですよね。

「普段はこんなに攪乱ばっかりしないんですよ。今日は慎重に慎重を重ねるかんじの戦い方をしているので、普通に見えるんだと思います」

「そ、そっか……普段はもっと……ううむ」

 実際、戦いづらそうなのは見ていてもなんとなく分かります。

 いつもとは違う役割の人が多いですから、連携もちょっとガタガタしてますね。

 それでもそこそこに連携できて、安全に戦えているのは……あれですね、元々のチームワークの強さでごり押ししてるかんじですね!

 ……こういう時、仲悪くなくてよかったなあ、って思います。はい。




「……うらあっ!」

 珍しくも角三君が吠えつつ剣を繰り出して、キメラの心臓を貫きました。尚、角三君はこれにより返り血でびっしょびしょになりました。怖いです。

 キメラは数度、暴れるように動いたものの、すぐに動かなくなりました。

「……やったな。あー、慣れないことなんてするもんじゃないな。疲れた」

 普段の数倍疲れたような顔をしている鈴本が地上に降りてきて、地面に仰向けに倒れました。

「ぎゃー!潰れる!潰される!あっぶな!」

「わ、悪い……」

 が、どうやら、倒れた先に針生が居たらしいです。既のところで逃げ出した針生が怒りながら鈴本の頭上をぐるぐる飛んでます。

「お疲れ様でした。では俺は薬を……」

 社長はキメラによじ登って、翼を採取してきたらしいです。速いですね。

 そしてほくほく顔で実験室に向かって歩いて……そこで、ふと、真顔になったかと思うと……倒れました。

 倒れました。

「しゃ、社長ー!」

「珍しいな……」

「何、明日は槍でも降るの?」

「んー、異世界だとそれも普通にあり得そうで怖いわー」

 各々、好き放題言いながら近づいて(俺や羽ヶ崎君は歩けませんし近づけません!)、社長を運んで俺の傍まで連れてきてくれました。

 要は、回復する為ですね。すぐに回復しました。

 ……が、社長は起き上がる気配がありません。

「……舞戸さん」

 喋れるようにはなったみたいですが……いつもの社長とは大違いです。寝起きよりも意識が朦朧としてそうです。

「うん!どした!?どした!?何かできることはある!?」

 呼ばれた舞戸さんも、これには大慌てです。だって、社長が社長じゃないってかなり緊急事態ですもん。

 が。

「ちょっと、血、ください」




「吸われた……」

「お疲れ様です」

 そして舞戸さんはまたしても犠牲になりました。

 今回は社長が本当にヤバかったので、舞戸さんも比較的おとなしく犠牲になっていましたが……なんか、可哀相ですね。はい。すぐに回復しましたが、失血の分は戻るまでに時間がかかりそうです。

「舞戸さん、ご馳走様でした」

「うん……」

「では俺は調薬してきます。夕方までには完成させますので」

 一方、社長はすっかり元気になったようです。よかったです。これで多分、薬もできると思います。


「……まあ、なんだ、舞戸は……ドンマイ、だな」

「うん……」

「弱いのが悪い」

「はい……」

「……食べてごめん」

「うん、それは本当にね……」

 舞戸さんはどうしていつもこういう役回りになっちゃうんでしょうか。

 一番弱いから、とか、そういう理由だけだと説明できない気がするんですよね……。

 本当にドンマイ、です。はい。




「できました」

 そして、ありあわせで済ませた昼食の後!ついに!

「俺達の獣化を治す薬です」

 できました!やりました!ありがとうございます社長!

 見れば社長の容姿は完全に元通りになってますね。元々がそんなに変化が無かったので、あんまり変わってませんけれど。

「ですが、材料の都合で残り7人分しかありません」

 えっ、あれっ!そ、そうきましたか!

「あれっ、なんか俺、このやりとり前にもやった気がする」

「気じゃないぞ。……おい、社長、わざとやってる訳じゃないよな?」

「いえ、わざとではありませんよ」

 社長がいつもの笑顔です。狂気の笑顔です。

 元気になって良かったような、良くないような……。


「……今回は公平にじゃんけん、とはいかないな」

「うっかり角三君をそのままにしておいたら、舞戸さんが食べられちゃうよねえ」

「……ごめん」

 ということで話し合いの結果、肉食動物の鈴本と角三君が除外され、明らかに行動が不便になる俺と羽ヶ崎君と加鳥が除外され、踏みつぶすなどの事故防止の為に針生が除外され……。

「最初はグー!……あ、勝った」

「あちゃー、負けたわー、裏読みすぎたなー」

 舞戸さんと鳥海の公正なるじゃんけんの末、鳥海がもう1日猫又でいることになりました。

「うーん、私、もう一日尻尾生えてても良かったけどなあ」

「なら舞戸さん、こちらの獣化する薬を服用すれば」

「あ、やっぱりいいです。遠慮します」

 ……そして案の定、社長は逆の薬も作ってたみたいです。




 その後、猫耳が生える薬同様に、この薬も色々と楽しく使われました。

 事故は起きたり起きなかったりしましたが、舞戸さんが加害者になることだけはありませんでした……。


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