表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/86

僕らの村で起こった悲劇

この話は『汝は人狼なりや?』『人狼ゲーム』『タブラの狼』というように一般に呼称されているゲームをプレイしている話です。

よって、元のゲームのルールが分からないと色々分からないかと思われます。


ゲームのルールをここで説明するのもどうかと思われますので、興味のある方は『人狼 ルール』とかで調べてみるときっと幸せになれます。


・役職は一般的な物を採用しているつもりです。

・役職の内訳はランダム方式を取っています。(村の内訳が必要最低限しか分からないでスタートするシステム)



時間軸は113話です。

視点は羽ヶ崎です。

あまり期待せずにどうぞ。

「……暇だね」

 鉄格子の向こう側、石の通路の、外と室内を隔てる壁には、小さく明り取りの、やっぱり鉄格子が嵌った小窓がある。

 そこから見える空は青い。

 時々、陽の差し方が変わってきて、時々、遥か遠くで雲が動く。

 ……僕らが『投獄』されて、もうそろそろ15分すぎたかもね。

「これ、いつまで投獄されっぱなしなん?ん?」

「さあ。向こうに動きがあるまで俺達が動くわけにもいきませんし、とにかく待つしかないですね」

 正直、こんな鉄格子、鈴本なら普通に斬れるだろうし、角三君とか鳥海なら素手でへし曲げられそう。

 僕だって氷で石の床を破壊していけば自力で脱出できるだろうし、社長も同じく。

 加鳥はビーム出して鉄格子溶かせるし、針生は影を通ってどこにでも行ける。

 刈谷も頑張れば光魔法の類で壁の破壊ぐらい、できるんじゃない。

 舞戸はどうせ『転移』で一発。それでなくても、ハタキで一発だし、なんならあのでかい狼か何か呼んだらなんとでもなるでしょ。

 ……けど、それもできないから。

 この国がどういう状況なのかまるで分からない。とりあえず分かってる事は、この国の女王が異国人……僕らと同じ学校の生徒たちを集めている、っていう事実だけ。

 だから、情報収集のためにも、僕らは鉄格子の中に収まっててあげてる訳。

「逃げられるのに逃げられないって、すごい暇だねー」

 針生が床でごろごろしてたら、放り出した足が鉄格子に当たってすごい音がした。

「針生、うっかり牢屋を壊しでもしたら面倒だ、気を付けろ」

「でも暇。すごく暇―」

 このままほっといたら、暇でごろごろし出す怪力連中に牢屋壊されて厄介な事になりそうで嫌。

 それに、いい加減僕も飽きてきた。

 寝ててもいいけど、全員で昼寝するとやっぱり寝相の悪い怪力連中が怖いし。

(教室って無駄に頑丈みたいだから、教室で寝てる分にはこいつらの寝相の悪さって別に危険じゃないんだけどね。こういうところだとちょっと怖い。)

「……どのぐらい時間があるか分からないですが、1ゲームぐらいなら、できるんじゃないんですかね」

 だから、僕らがこういう結論に達したのも、しょうがないと思う。

「やりましょう。『人狼』」




「カードが無いよね。どうする?」

「そのぐらい作りますよ」

 すぐに社長が床の石材からカードを作った。

 石材は一回練り直して均一にしたものらしい。色のムラとか、模様の違いとかは無い。

 全くプレーンな面が裏面。で、表面には『人狼』とか『村人』とかの文字が浮き彫りみたいになってる。

「書体が綺麗に明朝体」

「社長っぽい」

 文字がきっちりし過ぎで不気味なのも社長っぽい。これで変なフォントとかミミズ文字だったら笑えたけど。

「人狼が2枚、狂人が2枚、占い師が2枚、霊媒師が2枚、狩人が2枚、村人が2枚、妖狐が1枚の中から9枚引いて使いましょうか。絶対に人狼1と占い1は入るようにするいつものパターンで」

「せっかくだからキューピッドとか化け狸とかカラスとか入れない?駄目?棺桶職人は?」

「面倒になりますから」

 舞戸は第三勢力だらけの人狼が割と好きらしいんだけど、ああいうのってたまにやるから面白いんじゃないの。

「んー、ま、とりあえずプレーンなのでやってから時間余ったらそういうのもやってみるんでいいんでない?」

 ……って事で、役職はこれで決定、と。

 となると、いよいよゲームスタートになるんだけど……。

「んじゃ、そろそろこの手錠が邪魔になってきたんでー……そいやっ!」

「……ん!」

「まあ、鉄の鎖程度で異国人を拘束しようとした方が馬鹿だよな」

 カードを見たり配ったり、時にはジェスチャーなんかもしたいから、後ろ手に拘束されてるのが邪魔になる。

 適当に各自、手錠を破壊して手を自由にした。

「……へるぷみー、人外のみなさん……」

 当然、舞戸は自力でできなかったから角三君に壊してもらってたけど。

「……やっぱさ、おかしいって……なんなんだよ手錠素手で壊せるって……」

 あっさり千切れた鎖を手首でぶらぶらさせながら舞戸が遠い目してるのがなんか笑えた。




「あ、GMどうしよっか」

 そういえば9人でやる気でいたけど、これ、GMが要るんだよね。

「あ、とこよがやってくれるってさ」

 舞戸のスカートの中からメイド人形が1匹出てきてやる気に溢れたジェスチャーしてる。

「え、それさ、舞戸さん不正し放題じゃん。この子の見てるものって舞戸さんも見えるんでしょ?」

「失礼な。私がそんなことをすると思ったかね」

 ……まあ、舞戸、ことゲームの類に関しては無駄に一生懸命だから、そういう事はしないと思うけど。

「いいんじゃないんですか。折角ですし、とこよさんにGMをやってもらいましょう」

「え、でもとこよって喋れないじゃん」

「『朝になりました』の所だけ合図してもらえたら、あとは適当に頭叩いて起こすとかで事足りるでしょ」

「じゃあ、合図用のベルも作っておきましょう」

 社長が器用にまた牢の床を変形させて、小さい土の鈴を作った。

 早速とこよが飛びついて鳴らしてる。

 ちりんちりん、と、そこそこいい音が鳴った。これが鳴ったら『朝』って事ね。はいはい。

「ええと、じゃあね、とこよ。GMの仕事というのはだね……あ、めんどくせ。『共有』」

 ……まあ、舞戸って説明ヘタだし、『共有』できるようになってよかったんじゃないの、ってこういう時思うよね。




 ちりんちりん、と鈴が鳴る。

 これが『夜』の合図。

 各自配られたカードを確認したら、顔を伏せて、床を叩いて物音を……。

「あ」

 ……。

「ちょ、タンマ。……ごめん、社長、直して……」

 床を叩いた拍子に、角三君が床、ぶっ壊してた。

「冗談じゃないわ!やめろ!なんなんだ角三君!私を殺す気か!さては貴様狼だなッ!」

 石畳が割れて、微妙に隆起したりしてる。

 割れた石畳は舞戸のすぐ左に鋭く突き出て、もう少しずれてたら舞戸に刺さってた位置。

「……気を付けましょう。今回もあと少し、右に亀裂が走っていたら舞戸さんが巻き込まれて0日目にリアルに死ぬ羽目になっていました」

 ……ね。気を付けて欲しいよね。ほんとに。


 角三君のせいで一時中断したけど、とりあえずまた再開した。

 もう本気で床を叩く奴は居ない。角三君はひやひやしながら叩いてるらしいね。ぺたぺたした音が混じっててなんか気が抜ける。

 ちりん、って時々鈴が鳴りながら、とこよが何かやってる気配だけが漂った。


 ちりんちりんちりん、とけたたましく鈴が鳴ったら、『朝』の始まり。

「ええと、じゃあとこよ。今日の死体は誰かな?」

 ……余談だけど、前、僕が狐を引いたときは0日目で占われて初日に死んだ状態で始まった。

 何もせずに死ぬのってやってらんないよね。

 舞戸の問いかけにとこよはふわ、って浮き上がって……。

 ……堂々と胸を張って、とこよ自身を指さした。

「ああとこよ―」

「惜しい人?……を亡くしたー」

「なんてこったー」

 GMが『初日死亡者』になって、皆が棒読みでその死を悼むところまでがテンプレみたいなもん。

 僕も適当に乗っておきながら、頭の中で戦略を立てる。

 ……問題は、いかに早く狼を見つけるか、なんだけどね。




「では、時間はこれでいきましょうか」

 また器用に、社長が砂時計を作り出した。

 ……岩石の中からケイ素だけ取り出して水晶にして、それで砂時計を作ったみたい。

 無駄に器用で笑える。

「では、話し合いを始めましょう」




「じゃあ、とりあえずセオリー通りいく?黒当ての占いさん、居たらどうぞ」

「はい」

 鳥海が黒当て……人狼を見つけた占い師が居たら出ろ、って言ったその瞬間に手を挙げる。

「加鳥占って黒」

 占い結果を告げると、加鳥が表情1つ変えずに僕を見た。


「そっかぁ。……えっとね。僕も占い師なんだけど、羽ケ崎君、白だったんだよね」

「嘘臭い」

「だって他に名乗り出るタイミング無かったじゃないかぁ……わざわざ白だったのに初日で出るのもアレだし……」

「あ、えっとさ、じゃあ、私もいいかな。……占い師です。羽ヶ崎君を占いました。白でした」

 占い師が3人出てきたぐらいで動じる面子じゃないけど……まあ、僕と加鳥と舞戸、っていう3人が出てきたら……「誰が偽物でもおかしくない」とか思われてそうで嫌。


 この時点で僕目線では、加鳥が人狼、舞戸が狂人、ってかんじ。

 他の人には僕が偽物っぽく見えてるかもしれないけどね。

「……ええっと、じゃあ、とりあえず初日は誰、吊ろうか」

「村人吊りでどうでしょうか。占い師が自称で3人もいるんですから、明日になればどうせボロが出ますし、羽ヶ崎さんが生き残っていたら羽ヶ崎さんが人狼です。羽ヶ崎さんは泳がせておいていいと思います」

「だな。下手に役職を切るのも怖い」

「そうだねぇ」

「……それでいいと思う」

 ……別に、自慢でもなんでもないけど、この面子の中では、多分僕は結構人狼が強い方。

 だから警戒されて妖狐初日死亡が多発するわけなんだけどね。

 それで、社長なんかは僕のことを『村人陣営ならどうせすぐ死ぬ、人狼陣営なら生きのこるから殺せばいい』みたいな酷い考え方で始末しようとしてる節がある。

 つまり社長に任せておくと絶対に僕は死ぬ羽目になるって事。いい加減にしてほしいよね。

「んー、じゃあ、俺村人っす。今日は俺を吊ってください、って事で」

 まあ、今日の所は村人吊り、って事で名乗り出た鳥海を吊って終了。

 明日以降にどう動くか、かな。




 投票で無事鳥海が吊れて死亡。

 そうして『夜』が来る。


 またとこよが色々やってちりんちりん鳴って、朝が来る。


「はい。じゃあとこよ、今日の死体はどれかな?」

 舞戸が尋ねると、とこよは飛んで行って針生の頭の上に座った。

「……あ、これ、俺が死んだって事?」

「でしょ」

 とこよが針生の頭の上で手を合わせて『なむなむ』ってかんじのジェスチャーを取ってる。

「惜しい人を亡くしました」

「死体仲間が出来てうれしいっすわー」

「えー、俺死んじゃったの、何もしてないのに……」

 針生がぶつぶつ言いながら鳥海と一緒に牢の隅に移動する。あそこが『死体安置所』ってことみたいだね。

「……では、2日目の話し合いを始めましょう」




「じゃあ、占い結果から出すんでいいよね?パーが白、グーが黒で、占った人を指す。いい?」

 僕が声を掛けると、自称占い師達が頷く。

「じゃ、いくよ。いっせーの」

「せっ」

「せっ」

「せっ」

「せっ」

 ……。

「……おい」

「……取り合えず、全員の結果をきちんと聞いていきましょうか」


 最初は僕。

「社長占って白」

 次が舞戸。

「鈴本占って白」

 次は加鳥。

「刈谷占って白だよ」

 ……で、最後に刈谷。

「加鳥占って黒でした」


 まさかの、自称占い師が4人になるっていう事態に全員開いた口が塞がらない。

「……え、なんで刈谷は今頃出てきたの?」

「一日目が白だったので!」

 いや、対抗で加鳥も舞戸も出たんだから出ろよ。

「一日目は誰を占ったの?」

「舞戸さんです。白でした!」

 だろうね。

「なんで舞戸」

「目の前だったので」

 ……なんか、既に信用に値しないんだけど。

「……まあ、いいけど。そうしたら、何?ええと……とりあえず、加鳥が2つ黒、出てるんだけど」

 ……可能性の話とかし始めたら終わりが無いし、どうしようもないんだけどね。

「とりあえず考えなきゃいけないのは、狐でしょ」

 だから、僕はここで提案する。

「今、黒が2つ出てるのは加鳥。そのうち1つは刈谷が出した黒だから信用しにくいけど」

「えっひどい」

「妥当だと思いますよ」

 全体的に、今の所刈谷に対する信用は低い。

 だって1日目に3人も占い出てるのに出てこない理由が分からないし。

 だから、この際利用させてもらおう。こんなに分かりやすく怪しく出てきてくれるんだったら、吊るしかないでしょ。

「もし僕が人狼だったとしても、加鳥は僕に白出してるんだから絶対偽物だよね。その仮定でいったら、真占いは舞戸、って事になる。だったら、加鳥を吊っておけば黒サイドは1人吊れる」

「えっひどいなぁ」

「加鳥が人狼だったら僕が真占いだから、加鳥を吊っておけばいい」

「やっぱり僕を吊ろうとするのかぁ」

「……けど、とりあえず人狼が1人分かってる僕としては、加鳥ほっといて狐を先に吊りたいんだけど」

 刈谷を指させば、刈谷はあからさまに挙動がおかしくなった。




「刈谷の出方がおかしすぎるのは分かる」

「信用できないのも同意」

「えっえっ」

 ……まあ、普通に考えて出て来るタイミングおかしすぎるからね。

 今僕にできるのは、できるだけ刈谷に対する不信感を煽っておくことかな。

「刈谷が狐とも限らないんじゃ?」

「でも、今占われてないのは刈谷と……角三君と舞戸か。僕と舞戸がそれぞれ僕と鈴本と社長と加鳥を占ってる。角三君がここで潜伏妖狐だったら怖いけど、そこまでケアしてる時間は無い。ここで1人吊って残り6人。1人夜に噛まれて5人。人狼2の狂人1が残ってたらそこでパワープレイでゲームセットできるから」

 ……今、僕にとって幸運なのは、よく喋る鳥海が初日に吊られてくれた事。

 それから、社長が黙ってくれてる事。……まあ、社長の役職は想像がついてるんだけどね。じゃなきゃ、喋ってるだろうから。

 あと怖いのは加鳥だけど、加鳥はとりあえずこのターンを生きのこる事には賛成してくるだろうから、刈谷から吊ることに異論はないはず。

「……羽ヶ崎君は、舞戸を真占いと見てるんだな」

「そうじゃなかったら妖狐ケアできないでしょ。別に舞戸が狂人説を出したいならそれでもいいけど、4人出てるうちで加鳥が黒出てて、刈谷はあからさまに怪しい状況で吊るなら、とりあえず怪しい奴からじゃないの?」

 人狼2残りかもしれないから、ここで黒サイドを吊らないと村人側の負けになる可能性がある。

 心象的には刈谷が絶対不利。

 情報的には加鳥が一番黒い。

 他に、喋ってる僕と、一応舞戸あたりも怪しい、って事になるかもね。

 ……だから、今日はこの中からとりあえず吊るのがベストなはず。

 そして、僕としては先に刈谷から吊ってしまいたい訳。

「狐に勝たれるのは癪だし、そうじゃなくても狂人吊れれば次のターンでもパワープレイにはできないでしょ?」

 舞戸はどうせ思考が追いつかない。それに、僕が舞戸を信じてる体で行ってる以上、舞戸も僕に乗るはず。

 鈴本は考えさせたら強いから、考える時間を与えないように、ひたすら喋って結論を迫って投票まで持ち込めばいい。

 角三君は……ほっといていいや。どうせ、僕らだけでももう票の行き先は固まってるし。


「……うん、私も刈谷から吊るに一票で。明らかに怪しいし、村人サイドだとしてもこの先議論引っ掻き回して邪魔しそうだッ!」

 元々心象で刈谷が圧倒的に不利だったから、ま、煽れば気の短い舞戸なんかはすぐこういう結論になるんだよね。こいつ馬鹿だからね。

 村人サイド吊ったら人狼サイドが残り2人以下じゃないと負けなんだけどね。ま、刈谷に対するこの心象からして、刈谷が村人陣営だとは考えにくいし。

「リアル狂人ですかね。俺もそれでいいと思います。決め打ちしてしまいましょう」

 社長も乗ってきた。……ま、そうだろうね。

「えっ、えっ、ひ、酷いな、俺は本物の占い師なんですよう」

「……怪しいから刈谷から吊ろう」

 刈谷がなんか弁明してるけど、もう怪しさしか感じない。角三君にすら見捨てられてる。

「……この場合怖いのは、羽ヶ崎君と舞戸が結託している可能性か?」

「あ、私はまだ羽ヶ崎君の事、疑ってるよ。どっちかっていうと狂人っぽい気がするけど」

 まあ、舞戸も僕を疑うふりはしないとおかしいから別にいいんだけど。どうせ疑う所間違ってるし。

「でも、やっぱり吊るなら僕に黒を出した刈谷からでいいんじゃないかなあ」

「次は加鳥だけどね」

「え、いや、それは考え直そうよ……」


 ……そうこうしてる間に、砂時計の中身が無くなっていた。

「あ、時間だね。……じゃ、投票に入ろうか」

 鈴本が口を開きかけたけど、タイムアップ。……セーフ、ってとこ?




 当然、その日は刈谷が吊られて、また夜が来る。

 ……ふわふわちりんちりんやって、ま、朝が来る。

「とこよ、じゃあ、今日の死体は」

 ……とこよが舞戸の頭の上に乗った。そして両手を合わせる。

「……私が死んだらしいね」

 妥当かな。……僕だったら確実性を考えて鈴本噛んでたと思うけど。

 舞戸には『狩人なのに占い師を騙る』とかいうプレイをやる度胸も頭も無い。

 だから、確実に人数を減らしたいんだったら、角三君か鈴本が狩人の可能性を考えてどっちかを噛んだ方がいいんじゃないの、って気がするけど……ま、グレーな奴を残しておきたかったのかもね。舞戸は真っぽかったし。

 どうせもうゲームセットなんだけどね。


「……じゃあ、話し合い、ですね」

 社長が砂時計をひっくり返して、手を挙げた。

「狂人です。人狼の皆さん、パワープレイしましょう」




「うん。じゃあ、鈴本に入れるのでいいかなぁ。羽ヶ崎君って狂人だよね?」

「いや、僕は真占いだから」

 ここはあくまで突っぱねておく。

「加鳥に入れよう」

「……え?ん?」

 あ、角三君が悩みだした。

「……ああ、詰み、か」

 鈴本はもう結論が出たらしい。

 ……なんとなく僕を見る目が恨めし気だから、僕の役職にも気づいてるのかもしれないけどね。

「じゃあ、もう投票に入っていいですね?」

「……加鳥に入れればいいの?」

「そう。角三君が狂人とかだったら鈴本に入れればいいと思うけどね」

 ま、僕はあくまで『真占い』だから。

「じゃあ、投票に入ります」




「……刈谷を吊るべきじゃなかったのか」

「まあ、加鳥を先に吊るべきだったよね」

「まさか僕が生き残っちゃうとは思わなかったなあ。一日目に黒出てたのに3日目まで生き残っちゃったよ」

 鈴本と角三君が加鳥に2票。

 僕と社長と加鳥で鈴本に3票。

 鈴本が処刑されて、ゲームセット。

「わー、ありがとう羽ヶ崎君。やっぱり議論の主導、巧いよね」

「白の出し方も巧かったですね。あれで俺が羽ヶ崎さんが狂人だって気づけましたから」

 社長の台詞ににやり、としていると、とこよが上からやってきて、僕の手を取って持ち上げた。


 一瞬固まった舞戸がすごい速さでスライディングするみたいにして来て、僕のカードをめくって確認した。

「……ちっくしょおおおおおおおおおお!」

「ありがとうね真占いっぽく振る舞ってくれて」

 僕のカードは、『妖狐』だ。




「あああああああああああ妖狐おおおおおおおお!」

「え、嘘でしょ!?え、え……え、羽ヶ崎君、だって、舞戸さんに占われてたじゃん!」

「いや!だから私、狂人!」

「ん?でも加鳥が人狼でしょ?で、社長が狂人っしょ?」

「あ、俺は人狼でした」

「分かりづらっ!……え?で、羽ヶ崎君が妖狐で、舞戸さんが狂人だったら……」

 ……絶対に人狼と占い師は入れる、というのが今回のランダマイズの条件だったから、全員、『必ず1人は占い師が居る』っていう前提で動いてた。

 でも、まさか、ね。

「うっそ!あの一番怪しくて間違いなく出方を間違えた狂人か何かっぽかった刈谷が真占いだったの!?」

 あの怪しさしかなかった刈谷が真占いだなんて、誰も思わないよね。

 僕も、僕自身が妖狐で、『舞戸に占われたのに溶けてない』って分かって無かったら、舞戸が真占いで刈谷が狂人か何かだと思ったと思う。

 あれは、無い。

「だから俺が本物だって言ってたじゃないですかー」

「うっわ!うっわ!お前が戦犯だよ!人狼でも妖狐でも無くて村人を破滅に導いたのお前だよ!」

「初心者が入る人狼はカオス、って、本当なんだな……」




「……さて。このままでいられますか皆さん!」

「いられないっすわー」

「次こそは羽ヶ崎君を溶かすぞ!」

「いや、僕が狐引くとは限らないでしょ」

「やっぱり駄目ですね。羽ヶ崎さんが生き残ってたら殺さないと」

 うっわ、ひっど。

「じゃあ、次のゲームといきましょうか」

 ……まだ時間もありそうだし、もう2ゲーム3ゲーム、できるかもね。



~今回の役職~

 村人 :鈴本、鳥海

 占い師:刈谷

 霊媒師:針生

 狩人 :角三

 人狼 :柘植、加鳥

 狂人 :舞戸

 妖狐 :羽ヶ崎←win!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ