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実験室のメリークリスマス

『実験室のメリークリスマス・イヴ』の続きです。

視点は変わらず本編に登場しない顧問です。

「おーい、お前ら起きてるかー」

朝食の時間が近づいてきたので男子部屋にノックしてから入ると。

「なんだこりゃ」

浜辺に打ち上げられた魚みたいなのがいっぱいいた。


「あっ。先生、おはようございます」

そして何故か男子部屋なのに舞戸もいた。

「なんでお前はこっちにいるの」

「いや、もう寒くて。向こうの部屋、一人でぽつん、ですよ?寒いですよ!しょうがないから着替えてこっちに避難してきた次第で。ちゃんと入る時にノックしましたしノックしてから10カウントもしました。KOでした!」

流石にこっちで寝るほど常識が無い訳じゃなかったか……いや、多分男子諸君に帰されたんだろうなー。こいつの事だから。

「で、なんでこいつらは干からびた魚みたいになってんの」

「私は知らないですけど遅くまでガタガタジャラジャラやってましたよ。ほら起きろ」

言いながら舞戸はまだ往生際の悪い事に布団で寝ている針生の布団を剥いでいく。布団をはぎ取られた針生はそのまま転がっていって、畳んで積んである布団に埋もれてまた眠り出した。うーん、こいつたくましいなー。

「ガタガタジャラジャラ、って」

「麻雀ですね、きっと」

……。うん、幾ら眠くても実験はやってもらうからね。


朝ごはんを食べながら元気なのは舞戸と社長位なもので、あとは全員どこかしら眠そうにしていた。鈴本と角三は食べながら寝てる。お前らこんなんで実験できるのか?




全員実験を開始したところで僕は僕の雑務を片付けようと研究室にこもったり職員室と行ったり来たりしてたら、中庭の方で歓声が聞こえた。……非常に聞き覚えのある声の。

「おーい!お前ら実験はどうしたぁーっ!!」

アイツら何雪遊びしてんだ!実験はどうしたっ!ほんとにもーっ!

「あっ、先生!私はさぼってる訳じゃありません!試料は恒温乾燥器にぶち込んだので今は待ち時間です!」

「俺らは今ソックスレー抽出器回してるところなんで待ち時間です」

「俺達は溶液冷やして再結晶させてるところです」

「接着剤が固まるまでに1、2時間かかるんです」

……。そうかー。こいつらここまで織り込み済みだったのかー。やられたなー。


待ち時間ならしょうがないから、僕も見学することにした。

「で、これは何を作ってるところなの」

「海外だと雪だるまって3段じゃないですか」

そうね。スノーマンとか3段だよね。

「折角なので何段まで行けるか挑戦してます」

現在は……5段か。

「で、その6段目を詰む為の足場を作ってるところです」

……そうかー、雪をひたすら積んでは踏み固めてたのは足場づくりか。

「雪だるまもいいけど風邪ひくなよー。あと実験忘れるなよー」

「はーい」

「了解です」

「分かってます」

……断言しよう。この中の半分は実験忘れるか風邪ひくかするぞ。


この後昼ご飯の為にこいつらを呼びに行ったら、雪だるまは実に7段になっていた。なんかきもい。




「で、なんでお前ら今度は何やってんの」

昼ご飯を食べて暫くして実験室を覗いたら、今度は全員でトランプに興じていた。……ええっと、インディアンポーカーだっけ?全員カードを一枚だけ引いて、自分以外の全員に見えるように持つ。それをお互いに嘘を交えながら教え合って、それを聞いてカードを交換するかどうかを決める。

全員交換するか、交換しないことを決めるかしたらカードをオープンして、勝敗を決める、という奴だな。

よし、折角だから見てみよう。

「舞戸さんはそのままだと角三君に負けます」

角三はスペードの5で、舞戸はハートの8だから、社長は嘘を吐いてる訳だけど、全然そういうかんじがしない辺りが凄いよなあ。

「そういう社長は変えなくていいよ、結構強いから」

舞戸の言う通り、社長はダイアのキングだから結構強い。あ、カードの強さは3が最弱で2が最強なんじゃないかな?

「ね、俺のどう?どう?」

「んー、針生は変えてもいいかも。もっといいのが出る可能性のが高そうかなー」

「そっか、ありがと、変えるわ。加鳥は10だから変えないと1位にはなれないよ」

針生、おい、お前加鳥に騙されて今ジョーカー捨てたぞ。

「角三君、正直に教えてくれ。俺のカードは幾つだ」

「2」

「そうか、ありがとう。角三君のも2だ。変えなくていい」

「……そう?」

おい、角三、お前スペードの5だぞ。変えた方がいいぞ。鈴本のカードは2だから、ホントに角三は嘘がつけないんだなあ、と実感する。

「えと、俺のは」

「刈谷は7、鳥海は9。このままいくと刈谷は最下位だけど?」

羽ヶ崎もさらさら嘘を吐くなあ。刈谷が持ってるのはクイーン。鳥海はホントに9持ってるのがミソかな。

「あ、じゃあ俺変えます。羽ヶ崎君は10だから最下位にはならないですよ」

「いや、羽ヶ崎さんは6ですから最下位になります。変えた方がいいです」

「そういう社長も8だけど?刈谷変えて強くなったから変えないとやばいんじゃないの?」

……こんな感じの非常にややこしいやり取りがあり、最終的にはジョーカー捨てたのに2を引いた針生がスートの差で鈴本に勝って1位、最下位は引き直して4を引いてしまった鳥海だった。

「えーと、じゃ、鳥海は……じゃー、何か黒歴史を1つ提供!」

「えー……えーと、じゃあ、俺が中2の時の話なんだけど……」

……どうもこいつら、1位が最下位に何か命令できる、みたいなルールでやってたらしい。道理で緊張感があったわけだよ!こいつらはなんかしかをベットしないと死ぬ病気にでもかかってんのか?


その後研究室の方に居たら……鈴本と羽ヶ崎がやけくそになりながら「俺達結婚します!」と報告にきてそのまま凄い速さで帰っていったり、角三が無言で不思議な踊りを披露して帰っていったり(パントマイムだったらしい)、社長が懇々とエネルギー問題についてスピーチして帰っていったり、加鳥が来て肩揉んでくれたりした。

……お前ら、楽しむのはいいけど僕を罰ゲームの一環として利用するのやめない?いや、楽しいんだけどさあ。……あ、加鳥、もうちょっと右。あー、そこそこ。




そうこうしている内にまた実験が始まったり、トランプが始まったりして夕方になり、合宿は終了した。

やっと終わったよ……。アイツらと居ると楽しいんだけど若くない身としては疲れるんだよね……。

部員たちが仲良く帰っていくのを見送ると、なんとなーく実験室が寂しい。

アイツらホントに騒がしいから、居なくなった時に凄く虚無感があるんだよね……。


なんとなく窓から中庭を覗くと、彼らが作った雪だるまの成れの果てらしいアーチ状の……地面からでっかいポン○リング半分だけ召喚したかんじのオブジェが見えた。




翌々日。冬休み中だけど部活はあるからね。

「おはよー……あれ」

「鈴本と羽ヶ崎君と加鳥が風邪ひいて欠席で、角三君と針生が寝坊だそうです。舞戸さんと刈谷は家の用事で欠席で、社長は連絡がつきません」

……。

「鳥海、実験やる?」

「寒いんで帰っていいですか?」

……。

「うん、僕も今日はもう帰るわ……」

お前ら、ON/OFFが激しすぎるんだよっ!!

補足までに。


彼らがやっていたインディアンポーカーは、スートの差もあるので、同じ順位の人が2人以上いるという事はふつうありません。

しかし、最下位が2名になることはありえます。『スペードの3はジョーカーに勝つ(スぺ3があった時点でジョーカー最下位)』のルールを適応していた場合です。

このルールが適応され、尚かつジョーカーが2枚入っていて、2枚のジョーカーの強さに差をつけていない場合に限り、最下位2名が誕生し得るという訳です。


今回は鈴本と羽ヶ崎が結婚報告をしていましたが、これはこういう訳だったのです。

因みに、スぺ3を引いたのは角三です。

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