傷の観察
角三視点です。よって、地の分が少なく、読みにくいです。
時系列は130話の途中です。
キャラクターのイメージが崩れる恐れがあります。
痛い描写かもしれません。
脱ぎます。
ご注意ください。
舞戸は、『変装』解くとき、気を抜くと2層とも解いちゃう、らしい。
神殿に宣戦布告した日の次の朝、起きたら、ケトラミがいた。
いつもは、居ないのに。この時間、もう狩りに出ちゃってるから。
近づいたら、睨まれた。
……お腹に舞戸が埋もれて寝てた。舞戸を起こされると思ったのかな。
珍しいから、起こさないように近づいてみたら、顔に火傷みたいな痕が見えた気がした。
良く見ようと思ったら、舞戸が、起きてびっくりした。
「……どしたの」
瞬きしたら、痕は消えてた。
失礼な事をしちゃったような気がして、何か言い訳したような気がする。
それから、ええと……勇者を、撃退した後。
社長に頼まれて、舞戸を起こしに行ったら、やっぱり顔に火傷みたいな痕が見えた。
今度は良く見えた。
いつもは『変装』で隠してるけど、舞戸は、顔に傷が残ってる。
あと……どこ、だっけ。……右脚?
別に、こんな環境だし、傷自体は別に、珍しくない、と、思う。
……んだけど。
その後、舞戸起こして、俺は部屋に戻った。
「おかえり」
丁度、鈴本が着替えてる所だった。
鈴本は、脱いだら凄い。……傷が。
多分、一番傷が残ってると思う。
目立つのは、腰骨の上あたりの、継ぎ目みたいな火傷の痕。
それから、脇腹に、抉れたような傷が大きく残ってて、他にも、沢山。小さいのも大きいのも。
「……角三君、どうしたんだ」
あんまりじろじろ見るなよ、って、言うけれど、別に隠したりもしない。
近くに針生が転がってたから、ちょっとシャツを捲ってみる。
やっぱり、傷だらけだ。
暫くそのまま見てたら、針生がもぞもぞして寒そうにしたから、戻した。
「……本当にどうしたんだ、角三君。何かあったのか?頭でも打ったか?」
鈴本が凄く心配そうな顔で、俺を見てた。
……ちょっと悲しい。
「いや、その……傷」
傷、だけで鈴本は分かってくれたみたい。
「……ああ、そういう事か。増えたよな……っていうか、元々は0だったし」
鈴本は着かけてた浴衣をもう一回脱いで、傷を確認し始めた。
「この脇腹は多分、この世界に来て一番最初に食らった深い奴で、火傷は大体全部火竜のだな。これは猪か?」
案外、覚えてるものらしい。
「おつか……え、えええ、何やってんの?」
鳥海が入って来て、驚いてた。
「ああ。傷を見ていた」
「ああ、痕?俺のも見る?ん?」
返事してないのに、鳥海も脱ぎ始めた。
「んー、俺は鎧着てるしなー。そんなに無いや」
それでも、鎧の継ぎ目とかには傷があるし、火傷は鎧に関係ないから、ある。
「で、角三君は?」
えっ。
……うーん。
「はいはいお着替えしようねーばんざーい」
ちょっと考えてたら、鳥海に脱がされてた。
「鈴本程じゃないけどけっこうあるね」
単純に、鎧、だと思う。
鎧の面積が、鳥海>俺>>>>>鈴本だから。
……というか、鈴本は鎧、無いから。
着物だって、よく舞戸さんに切れた所繕ってもらったり、縫い直して貰ったりしてる。
『鈴本の装備は今や何も見ずに縫えるぜ!』とか言われてた。
多分、同じ奴、いっぱい縫ってストックしてあるんだと思う。
「それにしても、どうした?急に」
鈴本が鳥海の傷を見終わって、俺に聞いてきた。
……ええと。
「舞戸が」
「また何かやらかしたのか」
「今度は何やったん?」
……違う。
「『変装』、解けてて」
言ったら、二人ともそれで分かったみたい。
二人とも、考えるのが早いから、凄い。
「……まだ残ってるか」
「顔に」
「……あー……顔、だったよね……」
鈴本と鳥海がちょっと考えるみたいに黙った。
「……え、ちょ、何やってんの。なんで脱いでんの。きもいんだけど」
その時、ドアが開いて、羽ヶ崎君が入って来て、引いてた。
「傷を見てるんだってさ」
「俺じゃなく、角三君が、な?」
ちょっと誤解されそうだからやめてほしい。
「ところで、羽ヶ崎君はどうなのかなーって」
鳥海が羽ヶ崎君に近寄る。
「……やだからね、僕は」
羽ヶ崎君は逃げる。
「折角だしいいじゃんえーいっ」
「ふぎゃっ!」
鳥海が飛びかかろうとしたら、針生踏んだ。
「何!?何!?敵襲!?」
……起きた。流石に針生も、踏まれたら起きるみたい。
今度起こす時は踏んでみようかな。
「……え、何?服を脱がすモンスターでも出たの?」
俺と鳥海と鈴本見て、針生はびっくりしてた。
……俺でも、驚くと思う。
「よし、こいつも脱がそうぜ!」
「なになになにきゃー!」
……針生のはさっき見たからいいや。
「俺脱がされたのに羽ヶ崎君が脱いでない!」
「なんで僕がそんなのに付き合わなきゃいけないわけ?」
「固い事言うなよ!」
「ちょ、やだ、離っ!」
結局、羽ヶ崎君も鳥海にやられた。
羽ヶ崎君は、腕に沢山、痣みたいな痕がある。凍傷の痕なんだ、って、後で聞いた。
氷魔法の調節がうまくいかないと、自分の腕もこうなっちゃうんだ、って。
……羽ヶ崎君は、時々魔法の練習してるから。……えらいと思う。
「そもそも、なんでこんなことになったわけ?」
「ああ、それはな」
羽ヶ崎君に聞かれて、鈴本が説明しようとした時、ドアが開いた。
「……え、あの……あの、えっと、これは一体」
「僕は夢でも見てるのかなあ」
刈谷と加鳥も帰ってきた。
「同志!あそこに脱いでいない者が!」
「同志!これは脱がすしか!」
鳥海と針生は、ノリがいい……んだと、思う。変態なんじゃない、と、思う。
……うん。
「え、脱げばいいの?というか、何やってるの?」
加鳥は……もうちょっと、躊躇、してもいいと思う。
「角三君が傷見てるんだってさー」
……そろそろ、誤解されそう。
「ふーん、そっかあ。……僕は最近はずっとガ○ダムに乗ってるしなあ」
加鳥は元々遠距離攻撃だったし、最近は……うん。
けど、右手に火傷みたいな痕がちょっと残ってる。ビームの撃ちすぎ?
「俺もそんなに無いですよ」
刈谷は、治すのが本職だから、怪我はあんまりしない。
刈谷が倒れたら、俺達全員危ないから。
だから、刈谷の事は全員で守ってる。……それでも、魔法とか、そういうのは当たっちゃうんだけれど。
「こうなると社長が気になるね」
「呼びましたか」
社長は、もうちょっと……動じてもいいと思う。全員脱いでる、っていう状況見て、全然反応がない。すごい。
「舞戸さんが捕虜全員を『眠り繭』で封じたみたいです。動けますか?」
出番みたい。皆で慌てて着替える。
もう捕虜……勇者軍団は寝ちゃったんだから、半分寝間着みたいな恰好でいいや。
「それにしても、どうしてこういう状況になってるんですか?」
それを鈴本が説明しようとした時に、刈谷と加鳥が来ちゃったんだっけ。
鈴本が説明すると、全員黙った。
俺達、顔に傷は残ってない。
顔への攻撃は避けやすいし、目とか耳とかは優先して治すから。
「……ねえ、舞戸の顔の傷ってさ、僕らが責任取ったりしないといけない訳?」
……せきにん。
せきにん。
……せきにん?
「……いや、舞戸は気にするな、って言ってただろう」
「まあ……うん、良いんじゃないの、気にしなくても」
せきにん……とる、って……えー……。
「舞戸、と、結婚する、ってこと?」
「角三君、1テンポ遅い上にわざわざ言っちゃだめ!」
針生に後頭部叩かれた。……あ、うん、ごめん。
「ま、まあ、世間一般ではそう言うけど。舞戸さんとしてもいい迷惑だろうし」
「僕らとしても願い下げだし。僕は嫌だからね、あんなの」
うん、まあ、そっか。
「……あのですね。俺達、元の世界に戻る時には体は戻るんですよね?」
ジョージさんのこととか考えると、多分、そうなんじゃないか、って思うけれど。
「じゃあ舞戸さんの傷も戻るんじゃないんですか?となれば、考えなくてもいいと思いますよ」
……そうだった。
……心配して損した。
「で、社長は?一人だけ脱がないってのは良くないと思うわー」
「俺もですか?多分見ない方がいいと思いますよ?」
……ええと。
「男は度胸―!」
社長がそう言う時は本当にやめておいた方がいいのに、針生が社長のシャツ捲った。
……!
「うわあああああああああ!」
「うわあああああああ何これ!」
「言ったじゃないですか。良いですか?自分の体というのは実験台にして唯一誰からも文句を言われない人体なんです」
……説明、しない。見てない。俺は、見てない。
見てない見てない見てない見てない見てない見てない見てない見てない見てない
気になったから、後で舞戸に聞いた。
「はあああ!?いやいやいやいやいや、それ、それ……少なくとも、君達の責任ではないし、その、そういう気の遣い方しないでよ。うん」
「……そっか」
あんまり気にしなくてよかったみたい。
「……というかさ、君は……その、何、私なんかで妥協しちゃってもいいと、思った訳?」
妥協……?
舞戸は俺の顔見て、なんか察してくれた、らしい。
「つまり、私と結婚してもいいと思ったのか貴様は!っていう」
……考えて無かった。
うーん……。
うーん。
……んー……?
「駄目だよ」
考えてる途中で、駄目だって言われた。
「……変な事言うようだけどさ、ちゃんと、っていうか……幸せになってね」
その後、何かもう少し話したんだけど、覚えてない。
……「舞戸もね」って言いそびれた、っていうのは、覚えてる。




