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だって欲しかったんだもの!

作者: 浮舟柳

……………暗い。見渡す限り、何も見えないくらい暗い。ただ黒一色だけの世界がある。



余りに暗いけど、もしかしたら目を開いてないのかもしれないな。でも、目を開けようにも瞼どころか指一本も動かせない。体の感覚すら曖昧で、立っているのか、座っているのか、横たわっているのか。

それすら分からない。




何故ここにいるんだろう。何をしに来たんだろう。どうして体が動かせないんだろう。





何一つとして、自分のことが思い出せないのは何でだろう。





何も分からない。

分からないことを理解した瞬間に、猛烈な眠気を感じた。

強制的に切り替えられるような唐突な意識の喪失だ。地の底に恐ろしく強い力で引っ張られるように、意識は急速に遠退く。

疑問も何もかも全てが輪郭を崩して頭の中で溶けて消えた。









「あまり干渉するのは良くないんだけど」


「でもこうした方が面白そうなんだよね」


「このまま行けば**は*んじゃうけど」


「だからさ、あえて問うてみようかと思うんだよね」





「ねぇ、もし君が*****なら」


「君と違う、同じ***を*せるかい?」










それは何て言やいいのか。

朗々と頭に直接聴こえた、幾重にも反響し合う声。


野太く低い男の声で。たおやかな女の声で。ひび割れた老人の声で。年端もない幼い子供の声。

楽しむように、可笑しそうに、嬉しそうに、嘲笑うように、諦めたように、憐れむように、哀しむように、期待するように、試すように。



「――――、―――――――――」



俺の答えを聴いて、ただ幽かに笑った。

そして次の瞬間。



「なら祝福という呪いを君に。呪いという祝福を君に。


どう使うかなんて、それは君次第だ。君は思うがままに、心の行くままに進めばいいよ?

邪魔などしないさ、無粋な真似は嫌いだからね」



「それじゃあ、まあ。頑張って変えてごらん。


舞台は整えてあげたんだ。どう足掻くかは自由だよ。

精一杯悩みながら生きていけ」






それを聴いて、俺は完全に意識を落とした。深く深く眠りの水底で、もう一度やり直すために。



だから知らないんだ。声を届けてた主が、眠り続ける俺を魚のように水槽の檻に閉じ込めていたなんて。

もう二度と目覚められることなんか、ないなんて―――――



「**なんて所詮こんなもんなのさ。身勝手で自己中で利己主義者。


可哀想に、そんなくそみたいな存在に捕まるなんてね」



でも逃がしてなんてあげないよ、だってずっとずっとずうっと見てきたんだもの。欲しくなっちゃったんだもの。




アハハ、と黒く闇に塗り潰された空間に場違いなだけの笑い声はいつまでも響いていた。

何かの冒頭にも使えそうですが、これで完結します。

始まらない物語、みたいな。


*の部分は単語の文字数が本文と合うものを何でも当て嵌めて読め…るかなぁ、作者としては一応全て対応する単語は考えておりますが。


ちょっと薄暗いものを書きたくなって、ぱぱっとやりました。

閲覧ありがとうございました。

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