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未来携帯物語  作者: 楠木あいら
爽子
9/16

同士

 行方不明になっていた彼女の姿があった。

 『なぜ?どうして?』という疑問と同時に、開かれた扉から彼女の所に向かって良いものなのか、警戒が生まれ不安になっていった。

 でも、強い力が爽を電車内から出した。

 それは爽の精神的なものではなく、背後にいる爽子でもなかった。

 前方にいた赤茶色の男…。

 爽の記憶にはないが、爽が住んでいた赤い星の者であるのは読み取れた。

 読み取った時にはもう、爽達は電車から引きずり出される状態にあった。

 『疑問』が頭に浮かんだ爽の頭から、それが瞬時に消えて『危険』と『殺気』何よりも"守らなければならない『その単語が頭にひらめいた。

「爽子さんっ」

 電車移動中に返してもらった武器を、向かってくる方向に振り上げた。

 爽が所持しているのは伸縮自在の武器、棒。

 それは強い力を感じると元の大きさに戻る。武器を戻している暇がない状態では、攻撃を受けとめるための動作で元に戻すしかない。

 1メートルほどの、鉄よりも軽く丈夫な武器が現れたのと同時に、強い衝撃が爽の腕に伝わってきた。

 今の騒動を眼にした人からどよめきと悲鳴が上がったが、当事者たちにとっては関係のないことだった。

 とはいえ双方とも駅員や警察がくるまえに終えたい。

 ましてや爽から見れば、捕まらず、爽子さんを守らなければならない。

「…電車」

 電車に戻れば、彼女だけでも。それに気づいた爽は後ろを振り返った。



 振り返った時には、もう扉は閉まろうとしていた。しかも…

 痛みが肩に走っていた。

 よそ見をした一瞬をつかれたらしい。

 顔を前に戻した時、爽の目は、赤茶色の髪をした男がさらに一人、近づいていた。しかも、その男の投げたナイフが痛みの原因らしい。

「………」

 爽は、混乱を覚えた。

 赤茶色の髪をした者たちは、爽と同じ星出身で、味方でもある。

 その者たちが、爽に刃を向けてきた。

 さらに消息をたっていた紅子の存在。

「…」

 その言葉が処理できず、爽の頭の中でうごめいていた。

 さらに肩の痛みは増し、周りの人たちは一斉に視線を向けていた。

 そして、いつくるかわらからない駅員や警察…。

「……」

 爽は解けない謎の渦に飲み込まれそうになったが、爽子の存在が爽に動かす力を与えた。

 考える事は、後でもできる。今やらなければならない事は、ただ一つ。


 戦い、爽子さんを守ることが先決だと。

 爽は、ありったけの声を上げた。

 肩の痛みと頭の中でうごめく疑問の言葉を消し飛ばそうとするために。

 爽は、相手の腹部を思いっきり突いた。

 特別任務の補欠だが、応見に認められる能力値はある。

 棒だから致命傷を与えることはできないが、爽にはバレーボールを破損るすほど(体育の時間に実践)の腕力がある。

 突かれた相手が数メートル先までふっとぶ力を。

 守らなければならないと答えを出した爽は、冷静に判断と素早い行動を始める。

 近づいてきた男の手首を棒を叩いて、手にしていたナイフを落とさせて、膝の後ろを蹴った。

 体勢を崩し始めた男の腹部に懇親の力で棒を突く。

 その男も棒をつかって頬リ投げようとしたが、爽は、爽子が左側に移動した事に気づき、慌てて振り向いた。

「爽子さ…」

 発した自分の声が銃声によって消された。

 崩れ、落ちて行く爽子を目の当たりにして、爽は二つのことを知った。

 爽子が爽をかばってくれた事。

 それと銃を放ったのが、紅子だった事。

「………」

 それを理解できるまで、同じ姿をしたロボットが床に沈む時間を必要とした。

 新たなる野次馬の悲鳴がどこかで届いた。

「死ぬことはない、逃げてっ」

 呆然とする爽に爽子は、声を上げた。

 彼女は操縦席にいる。電源を切るか、オフラインにすれば命に別状はない。

 今、狙われているのは自分自身。

「…」

 爽子さんに言葉をかげる暇なく、爽は走り出した。

 再び銃声が聞こえたが、運良く当たることはなく、爽は改札口に向かって走り出した。

 紅子が爽子さんに銃を向け、同じ星の者たちが私に攻撃してきた。

 目の前で起きた出来事を爽の頭は記憶できたが、理解できないでいた。

 考えをまとめたくても、同星人たちが追いかけてくる今、爽は、ただ走るしかなかった。

「はぁ…はぁ…」

 爽は見たこともない町の中を、生命維持のために走り回った。

 走りながら爽は赤い球体電話の電源を切って、それを上着のポケットに沈めた。


 未来の携帯電話にも、自分のいる場所を把握できる機能がある。

 特別任務、補欠とはいえ爽は星側から見れば重要な存在であり、いつでも居場所を把握できるように携帯から情報を得ている。

 爽と同じ星人たちが、ここの駅にいたのはその『探知機能』が原因だった。

 本来なら同星人から保護されるための機能だったが、襲撃するため悪用されてしまっていた。

「はぁ…まったく、もう」


「はぁ…」

 走りまわり、ため息をついて落ち着いた時、爽はどこかの公園のすみにいた。

 公園は、はしゃぐ子供たちの姿はなく、しぃんとしている。

「っ…」

 肩がずきんと痛んだ。投げナイフはかすった程度なので、傷は浅いが、血が爽の白いシャツを染めていた。

 抜き取ったナイフに毒らしきものを塗った形跡はないから、忘れた頃にくる痛みに耐えれば何の問題もないようだ。




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