表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/6

心尽きたる戦士達

 帝国陸軍歩兵第35旅団麾下(きか)の第17小隊の我々は、ガダルカナル島転戦の途上、敵艦船に拠る艦砲射撃を受け、全滅した。

 最後に覚えていた記憶は、飛び散る戦友達の四肢と生首…身体も土塊(つちくれ)とともに四散し…我々の意識はブラックアウトした。


 長く暗いトンネルのような空間で眠っていた我々ではあったが、幸か不幸か全員一人欠けること無く同じ空間に居たため、我々は規律を正し、正面と思われる方位に向かって行軍を開始する。

 幸いにも軍服を羽織っており、素っ裸という破廉恥な格好で行軍せずに済むことが何よりも嬉しい。

 さて、行軍を進めると、ぼんやりとした光が眼前に見えてくる。

「もはや死人となった身なれば、何を恐れるものぞ!」

 そう檄を飛ばす小隊長の指揮のもと、行軍を続ける我ら第17小隊。


 やがて視界が開け、見えてきた光景は薄っすらと見覚えのある「甲子園球場」!

 周りの建物に見覚えはなく、まして中空から俯瞰した景色は何とも表現できないのだが…。


 突然足場が消え、中空に放り出される小隊メンバー。

「お前らァ~、ビビるんじゃないぞぉ~~!」

 一番のビビリ隊長が震える声で檄を飛ばせば

「は~~い!」

 あまりのおかしさに、間の抜けた返事を返す隊員達。


 甲子園では、今まさに()()()()()()が繰り広げられている。

 我々第17小隊の面々は、この試合に参加している三塁ベンチ側(後攻め)の選手一人一人の身体に()()する。

 幼さが残る選手達は動揺し、その所作で試合開始の挨拶が一時遅れる。


 取り敢えず我々は大人しくするということで、全会一致した。

 どうやら、この野球は『全国高等学校野球選手権大会』というらしく、憑依した彼らは特別枠で出場し、相手は今大会の優勝筆頭であることを、メガネも可愛い女子マネージャーから聞かされた。


 始めの三回は、彼らの手腕を見物する第17小隊の面々

 特別枠で出場するだけあって、堅実なプレーをするチームであった。

 惜しむらくは、力の差が「ソロホームラン」三本という事実でもって、彼らの前に重くのしかかっている。


(そろそろ、選手交代と行こうか?

 野郎ども、最終回の大ドンデン返しを目指すぞ!)

 監督に憑依した小隊長の掛け声が()()()()で響けば

(おーーっ!)

 選手に憑依した隊員達も()()()()で呼応する。

 彼らは、選手達の肉体を奪取出来ることを、二回の攻防が終わる頃までには把握できていたのだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ