第7話
『な……なに、あれ……!?』
ミナの声が恐怖に染まる。
モニターに映る彼女の表情に、初めて本当の恐怖が浮かんだ。
その巨大デビルズは、ミナだけを標的に定めたかのように、異様な光線を放った。
光線を浴びたミナは、金縛りにあったように動きを止める。
『恐怖……恐怖……良質な恐怖の味……』
デビルズの思念が直接脳内に響いてくる。
精神攻撃か!
この声はどうやら俺たち全員に届いているようだ。
『司令官……たすけ……こわ……』
ミナの瞳から涙がこぼれる。
彼女の体から放たれていた光が急速に弱まり、逆バニースーツの能力が失われつつある。
恐怖に震える彼女の肌が青白くなり、露出した腹部が強張っている。
汗が全身を伝い、スーツの隙間から滴り落ちる。
「ミナ! 撤退しろ! 聞こえるか!」
俺はマイクに叫ぶ。
だが、応答はない。
クソッ! やはり実戦は早すぎたか!
『ミナさん!』
通信機から、カレンの切羽詰まった声が聞こえたかと思うと、彼女の姿がモニターの端に映る。
後方待機のはずのカレンが、前線に向かって走っている!
彼女が走るたびに、薄紫色のスーツに包まれた柔らかな肢体が揺れる。
彼女の丸みを帯びた胸が上下に弾み、露出した背中のラインがしなやかに波打つ。
彼女の動きには普段の臆病さはなく、ただ仲間を救いたいという一心だけが見て取れる。
「カレン! 戻れ! 命令違反だ!」
俺の制止も聞かず、カレンは恐怖に震えるミナの元へ駆け寄る。
彼女がミナの横にかがみ込むと、二人の露出した肌がほんの僅かに触れ合う。
それは戦場のほんの一瞬の出来事なのに、どこか儚く、美しい光景だった。
「大丈夫です、ミナさん」
彼女はミナの肩にそっと手を置く。
「わたしたち、一人じゃありませんから」
その瞬間、アイリの冷静な声が響いた。
『精神干渉波のパターン解析完了。対抗シークエンス、実行』
アイリは狙撃銃を構え直し、全身から強烈な青白い光を放出する。
それは彼女の肌から直接生まれるエネルギーのようだった。
彼女の銀髪が風のないはずの場所で静かに舞い上がり、彼女の冷たく美しい顔立ちが強い決意の色を帯びる。
アイリの放った特殊な光弾が、巨大デビルズの額にあるコアらしき部分に着弾する。
デビルズが一瞬怯んだ隙に、カレンの癒しの光がミナを包み込んだ。
二人の体が密着し、カレンの柔らかな胸がミナの背中に当たる。
カレンの両手がミナの露出した肌に触れる瞬間、二人の周りに紫とピンクの光が渦巻くように広がる。
その光は徐々に強さを増し、周囲の戦場を浄化するかのような清らかさを帯びていく。
「……カレンちゃん……アイリさんも……」
ミナは涙を拭い、ゆっくりと立ち上がる。
彼女の顔に、新たな決意の色が浮かぶ。
「……ありがとう。あたし、もう大丈夫!」
彼女の体から、先ほどよりもさらに強い、虹色のオーラが立ち昇る!
そのオーラは彼女の肌の隅々から溢れ出し、特に露出した部分からは眩いばかりの光が放射される。
彼女の身体つきがより一層くっきりと浮かび上がり、まるで神話の戦士のような威厳を帯びていく。
「仲間がいるから! あたしは戦える!!」
ミナは雄叫びと共に巨大デビルズに飛びかかり、渾身の一撃を叩き込んだ。
オーラを纏った拳がデビルズの巨体を貫き、その姿は光の粒子となって霧散した。
その衝撃は凄まじく、周囲のデビルズたちも連鎖的に爆発四散していく。
爆発の閃光の中で浮かび上がる三人の姿は、戦場の中で輝く三つの星のようだった。
『…………何が、起こったんだ……?』
モニター越しに、速水の呆然とした声が聞こえる。
俺は、ただ目を見開いていた。
これが……羞恥心を克服し、仲間との絆によって増幅された、『逆羞恥エネルギー』の真の力……?
◇
戦いが終わり、静寂が戻った戦場。
疲労困憊のはずの三人は、しかしどこか誇らしげな表情で、俺の指揮車両に戻ってきた。
三人のスーツは戦闘の影響で所々破れ、露出部分が通常以上に増えていた。
汗で濡れた肌が月明かりに反射して、妖しく輝いている。
ミナの小麦色の肌、アイリの白磁のような肌、カレンの桜色を帯びた肌、それぞれの質感や色合いの違いが、妙に官能的な雰囲気を醸し出していた。
「司令官! 見てくれましたか! 私たちの勝利です!」
ミナが満面の笑みで敬礼する。
彼女の健康的な肌は戦いの熱でほんのり赤みを帯び、その頬の紅潮が彼女の興奮を物語っていた。
「ああ……よくやった」
俺は初めて、心の底からの賞賛の言葉を口にした。
「君たちは……俺の想像を超えていた」
そこに、速水も苦々しい表情で近づいてきた。
彼の目が一瞬、三人の姿を舐めるように見つめたのをはっきりと感じたが、すぐに正気に戻ったようだ。
「……ちっ。借りを作っちまったな。だが、勘違いするなよ。今回のはまぐれだ。次に来るデビルズは、もっと手強いぞ」
「分かっている」
俺は頷き、三人の顔を改めて見回す。
ミナの太陽のような笑顔、アイリの僅かに和らいだ(ように見える)表情、カレンの安堵の微笑み。
戦いの高揚感が残る彼女たちの表情には、言葉では表せない魅力があった。
この任務は、狂っている。
だが、彼女たちとなら、あるいは。
「明日から、本当の地獄の訓練を開始する」
俺はニヤリと笑って宣言した。
視線は思わず三人の汗で輝く肌に引き寄せられるが、すぐに目をそらす。
「君たちの力を、限界まで引き出してやる。覚悟しておけ」
「はい!」
ミナが元気よく答え、片足を前に出して敬礼のポーズを取る。
その動きに合わせて、彼女の揺れる胸元が目に飛び込んでくる。
「望むところ」
アイリが淡々と答えながら、わずかに艶っぽい笑みを浮かべる。
冷静な彼女とは思えない表情に、戦闘の高揚感を感じた。
「ふぇ……? は、はいぃ!」
カレンは少し戸惑いつつも、小さく頷いた。
彼女の顔に浮かぶ赤みが、何とも言えない可愛らしさを醸し出している。
三者三様の返事に、俺の中の何かが確かに変わったのを感じていた。
不条理で、非常識で、最高にクレイジーな俺たちの戦いは、まだ始まったばかりだった。