第3話
JDF特殊訓練施設の、やけに明るい会議室。
中央のテーブルには、三人の少女が座っていた。
俺が入室すると、一斉に視線が集中する。
……値踏みするような視線じゃない。
どちらかというと、好奇心と期待……それから、若干の緊張か?
「君たちが、バニー・フォースのメンバーか」
俺は努めて平静を装い、中央の席に着く。
「はいっ!」
最初に元気よく立ち上がったのは、オレンジ色のポニーテールの少女。
琥珀色の瞳がキラキラと輝いている。
「橘ミナです! 前線突破担当です! 今日からビシバシよろしくお願いします!」
元気すぎるだろ……。
こっちは頭痛がするってのに。
次に立ち上がったのは、銀色の長い髪を持つ、人形のように整った顔立ちの少女。
だが、その表情は氷のように冷たい。
「白雪アイリ。狙撃及び分析を担当」
それだけ言うと、彼女はすぐに着席した。
無駄な言葉は一切使わない、か。
ある意味、俺に似ているかもしれん。
最後に、薄紫色のふわふわした髪の少女が、おっとりと立ち上がった。
「あの、早乙女カレンです。回復と、皆さんのサポートを担当します。どうぞ、よろしくお願いします」
彼女は深々と頭を下げる。
他の二人とは対照的に、どこか儚げな印象だ。
「 噂、聞いてますよ!」
橘ミナが目を輝かせて俺に迫る。
「デビルズ討伐数トップ! 作戦成功率100%! あの『鋼の司令官』なんですよね!?」
「誰がそんなあだ名を……。それより、君たちはあのスーツについて、どう考えている?」
俺が本題を切り出すと、三人の反応は三者三様だった。
「え? スーツですか?」
ミナはキョトンとした顔をする。
「最初はびっくりしましたけど、これが最強装備なら、もうやるしかないって感じですよね! 恥ずかしいなんて言ってる場合じゃないですし!」
あっけらかんと言い放つミナ。
本当にそう思っているのか、それとも強がりか。
「私は、気にしていない。任務遂行に合理的ならば、装備の形状は問題ではない」
白雪アイリは無表情で答える。
……本当か?
君、さっきから耳が真っ赤なんだが。
「わたしは……その……やっぱり、ちょっとドキドキしますけど……」
早乙女カレンは頬を染め、指をもじもじさせながら言う。
「でも、この力で誰かを守れるなら……頑張りたいなって……」
なるほど。三者三様、か。
だが、共通しているのは『戦う意思』があるということだ。
「……そうか」
俺は短く頷く。
「わかった。では、明日から訓練を開始する。覚悟しておけ」
「はい!」
「了解」
「はい……!」
三人の返事を聞き、俺は立ち上がる。
このどうしようもなく奇妙な部隊を、俺は本当に率いていけるのだろうか。
部屋を出ようとした、その時。
「あの、司令官」
早乙女カレンがおずおずと声をかけてきた。
「なんだ?」
「司令官は……その……私たちのこと、恥ずかしいって、思いますか?」
直球の質問に、俺は言葉に詰まる。
恥ずかしいか、と聞かれれば、それは……。
「……任務に関係ない質問はするな」
俺はそう答えるのが精一杯だった。
「顔に書いてありますよ、司令官!」
ミナがニッと笑う。
「……うるさい」
俺は吐き捨てるように言って、今度こそ部屋を後にした。
背後でミナの明るい笑い声と、カレンの困ったような声、そしてアイリの微かなため息が聞こえた気がした。
まったく、前途多難だ。