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 ロベリアの言う通り、七つを迎えた後は他の家の子供達と遊べるようになった。

 「……負けました。またドルフィン様の勝ちですね」

 正面に座っていた子が次に席を譲る。

 ドルフィン達は今日も今日とて流行りのボードゲームに興じていた。もちろん、ドルフィンは負けなしだった。

 ボードゲームを始めた当初は皆で順に対戦していたが、ドルフィンがあまりに強いため、今では誰がドルフィンにいち早く勝つかという総当たり戦になっていた。


 子息たちが帰った後、部屋の片付けにロベリアがやって来た。

 ドルフィンの部屋付きとして、また子ども達の使用する客間の掃除メイドとしてロベリアを配属してもらったのだ。残りの乳母や子守メイドはドッピオに残し、ドルフィンには新しく従者が増えている。

 「ドルフィンさま、本日はいかがでしたか?」

 「今日もまたボードゲームだった。僕の全勝」

 「いつものお三方とですか? 皆さま懲りませんねぇ」

 「連戦は疲れるよ。次は別の遊びにしてくれと言った」

 くすくすと笑いながらロベリアは手を動かす。

 掃除メイドのロベリアと過ごす時間は多くない。何を話そうかと考えるドルフィンをロベリアが優しく促した。

 「さすがですドルフィンさま。さ、旦那さまと奥さまがお待ちですわ」

 

 七つになって変わったことがある。食事を両親と食堂で取るようになったことだ。

 と言っても、仕事だの社交だので三人が揃うことは珍しい。

 今日の夕餉はそんな珍しい日だった。

 そしてドルフィンが席に着くと早々に伯爵が口を開いた。

 「ドルフィンが王子殿下の学友に選ばれた」

 「まぁ。本当ですの?」

 「ああ。頭もよく、剣術も使えると陛下のお耳に入り、今日王子殿下の学友にどうかと声をかけられた」

 ドルフィンは少し驚いた。確かにボードゲームでは負けなしだし、この間騎士家系の子の家で行った打ち合いでもいい勝負をした。

 しかしそれがすぐに王の耳に入るとは思わなかったのだ。

 「素晴らしいですわ」

 「王子殿下はご優秀で、穏やかな気性をお待ちのためご学友も多いというのに……ドルフィンにも声が掛かるとはありがたいことだ」

 「本当ですわね。 ドルフィン、よく務めるのですよ」

 「はい、母上」


 「ロベリア! 王子の学友に選ばれたぞ!」

 自室に戻ると、部屋で細々した作業をしながらロベリアは待ってくれていたようだった。

 すぐに先程の話をするとロベリアがぱあああっと表情を明るくした。

 「ドルフィンさま! おめでとうございます! ロベリアは、ロベリアは、とても嬉しゅうございます!」

 「来週の集まりから参加するんだ」

 堅苦しい両親と違い、抱きつかんばかりに喜ぶロベリアの笑顔が嬉しかった。




 すぐに王子と会う日はやって来た。王城は大きく、どこに目をやっても華やかで、少し落ち着かない気がした。

 「どうぞ」

 ノックをすると返事があり、中に入るとテーブルを六人の男子が囲んでいる。ここでもボードゲームが流行っているようだ。

 「お初にお目にかかります。ドルフィン・サフィラスと申します」

 上座にいる王太子の方へ礼をする。

 「やぁ、サフィラス家には世話になっている。 ドルフィンとも仲良くできると嬉しいよ」

 ドルフィンより一つ上の王子が穏やかに迎え入れる。

 「ドルフィンはボードゲームが得意なんだって? 早速だけど相手をしてもらえるかな?」


 王子のゲームの腕はそこそこだった。攻めも守りも順当で危なげがない。

 が、見ていて気づいたことがある。王太子は続けて負けている子に対して、手を抜いて勝たせてやっているようだった。

 ドルフィンにはそれが馬鹿らしく思えた。

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