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宗盛記  作者: 常磐林蔵
第2章 蔵人、婚約、平治の乱

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宗盛記0063 平治元年十一月

平治元年十一月霜月


準備は整った、かな。旅行準備も戦支度も。できれば純粋に熊野行きを楽しみたかった。



親隆様のところに伺う。手土産は葡萄襲と栗襲。俺の身近では最も年長で、統子様除いて最も位の高い方でもある。

俺が記憶をなくす前に忠盛お祖父様は死んでいるので、なんとなくおじいさんのような気がしている。叔父なんだけどね。姉妹みたいな叔母とか祖父のような叔父とか。

熊野行きを報告すると、親隆様も詣でたことがあるそうだ。途中の見どころなど教えて貰う。信太稲荷や蟻通神社行きたいなぁ。この時代の住吉大社とかもみたい。白浜の温泉も寄りたいし、つぼ湯も楽しみにしている。中辺路だと橋杭岩とかは見れないか。


雉肉があるが何か珍しい料理はあるか?との仰せなので、唐揚げを作る。米の炊き方は既にウチ風になっている。一口サイズにして筋を切って割った味醂と醤油に漬けて下味をつけた雉肉を片栗粉にまぶして、荏胡麻油で揚げる。旬の柚子を絞った出汁醤油、ゆずぽんもどきで食べていただく。薬味は大根おろしとネギと刻んだからし菜。

三男の親雅様に初めてお会いする。俺の従兄弟。歳の近い従兄弟でうつけ扱いされないのは助かる。唐揚げ気に入ったとのこと。俺達の年頃はもっと肉食いたいよね。忠子叔母上にも好評であった。珍しいと喜んで貰えたが、親隆様にはちょっと重かったかな?と反省。



正子姉上のところに向かう。職場で暮らす姉上はもしかすると危険かもしれない。しばらく宿下がりできないか聞いてみたか、理由がないと無理だという。隠れるにしても一日以上は無理だろうし、門は封鎖されるだろう。どうしてもというときには、しばらく身を隠せるところを捜しておいて、と言うと、顔が強張ってしまったので、あくまで万一の場合だ、と言っておく。でも俺が何を危ぶんでいるかは伝わってしまったみたいだ。無理だけはしないように言っておく。



先の保元の乱と違って、六波羅の戦力も五百は居る。奇襲されない限り簡単に落ちる数ではない。これについては重盛兄上の判断に任すしかない。維子義姉上にご挨拶…俺の表情を見てすぐに、

「何か起こる?」

と聞いてくる。サトリかこの人は。

「可能性はあると思う。ていうかかなり高いと思う」

「あなた達は大丈夫なの」

「準備はしてる」

「ならいいわ。六波羅に籠もればいい?」

「できるだけ早く戻るから」

「ふふ、お願いね」

この人を嫁にできた兄上が羨ましい。同じ情報があれば俺よりよほどうまく対処できるんだろうなぁ。



二棟殿で暇そうにしている章子姉上と話す。

「お土産。忘れないでね。甘いものがいいなぁ」

「ないよ、そんなの」

「じゃ、海の魚かな。新鮮なの」

「どうやって持ってくるんだよ」

「あーあ、私もついていきたいのに」

「父上に言って」

「そういえば、宗盛って私が致仕してから殆ど私の顔見てないでしょ」

「あ、確かに」

「餞別に見せてあげる。入ってきなさい」

御簾が少し上がる。あれ、結構ドキドキしてる。

ちょっと久しぶりに見る姉上は、時忠殿との姉妹とはまた違った華があった。優しそうな顔立ち。目のあたりが兄上達に似ている。

「うん、姉上が美人で嬉しいよ」

「馬鹿ね。気をつけて行ってらっしゃい」

「ありがとう。姉上」



旅の前に、同行の家人と顔合わせ。

今回の同行は十五騎と聞いている。

目ぼしいものとして、


藤原(伊藤)景家。本貫地は伊勢の人で藤原だから伊藤。伊勢神宮の近くらしい。景経の父、吉野の夫。つまり俺の乳母父めのとぶである。傅役もりやくてもある。当然顔見知り。一番気安い。

でも俺が木から落ちたときに白装束で現れて死のうとした人でもあるので、頭が上がらない。ちょっと頑固。もちろん景経はもっと頭が上がらない。


藤原(伊藤)景高。景経の兄。俺とも割と気安い。今年で十六だったっけ。うつけの俺を景家のお小言からかばってくれるいい人。


藤原(伊藤)忠清。伊藤五が通り名。先の乱で源為朝と当たって、その場に居た弟、伊藤六忠直は射殺された。この度兄上の所の重太君の乳母父となった。でも実家で育てるウチのやり方だと、乳母父はあんまり出番がない。景家の弟で景家に比べてももっと頑固。さらに占いとかにこだわる。今回の出発が師走にずれ込んだのは忠清のせいだとか。


平盛国。伊勢平氏、ウチの侍でナンバー2。正六位上左衛門尉。家司。父上より四つ五つ歳上の、譜代の重臣で本貫地は伊勢の安濃津(後の津市)の辺り。今回の家人のまとめ役。ちなみに家臣トップの平家貞殿は、ウチの家令でもあるのでお留守番。八十近いし。


平盛俊。盛国の長男。筋肉の人。ガチムチな割に話し方が穏やかで頭良さそう。筋肉インテリ?歳は重盛兄上より少し上かな。


平家継

家貞長男。ウチの直轄地、伊賀の山田を治める。伊賀家継とも。伊勢の山田とも是行の所とも別の山田なんでややこしい。山田の平田が拠点なんで平田家継とか名乗ることもある。五十歳位。

知盛の乳母父。家長の父親。孫でも不思議じゃない歳の差親子。


平貞能。家貞次男。事務系も任せられるので家貞の補佐もしている。盛国と同じ位の歳かな。今回の旅も事務、会計系は貞能が務める。基盛兄上の乳母父でもある。


ウチは出自から伊勢平氏と呼ばれるが、領地は伊賀にも多い。伊賀上野の辺りもそうだ。伊勢は南側はほとんど神宮の直轄地だしね。で、平家が滅んで興福寺や東大寺に伊賀が簒奪されたあと、室町時代にさらに地方豪族に押領される。そいつらが副業始めて忍者になる。ウチが治めてたら、伊賀忍者はなかったかもしれない。


加えて、父上の郎党七騎。さらに景経。これで十五騎。加えて基盛兄上と俺で、父上と併せて十八騎になる。


従者を兼ねる雑仕は基本二人ずつ。兄上には家の者二人、俺のところは伏矢と亀二、亀三の牛車メンツに頼んだ。後は景家の所から景経に一人付いてくれる。父上の従者が多少多くて全部で三十八人。全員で五十六人となる。



二十一日。

上西門院の出仕日。

次回からしばらく休ませてもらう。

信頼様が首謀者と考えれば、ここには手を出さないだろうから、とりあえずは安全だろう。

「寒くなりますので、お体にお気をつけください。できれば年初には伺います」

「あなたも、体に気をつけるのですよ」

と統子様。

「早く帰ってきてね」

と滋子様。

気力をチャージして貰いました。



姫詣で。いつもよりちょっと早め。来月は来れないだろう。

「なにかあるの?」

清子姫。

「わかんない でも気をつけておいて」

「具体的には?」

と信子姫。

「なにより火が怖い。夜番をしっかり立てて、もし火が近づいてきたら間にある建物を崩して周りを水浸しにさせたほうがいい。無理なら早めに逃げて。後は何があっても兵には逆らわないこと。できれば隠れる場所を用意しといて。もちろんできるだけ外出は控えてね」

「怖い」

七の君。

「俺の気のせいかもしれないから、用心だけね」

「あなたは大丈夫なの?」

清子姫。

「可愛い許嫁との結婚が控えてるからね」

「…バカ」

うんうん。こういうの言ってみたかった。いきなり雰囲気がどんよりした二人の姉妹には悪いけど。


…あれ?もしかして死亡フラグ立てちゃった?



二十六日

この日、五位蔵人が一人交替。

藤原貞憲殿、三十七歳。

名前でわかるかもしれないが信西卿の次男である。四月に退任した元蔵人頭の俊憲様が長男なので、兄弟で蔵人頭、五位蔵人となった。もし乱が起こらなければこの方も蔵人頭となるだろう。

右衛門権佐で摂津守、俊憲様が蔵人頭になった昨年八月十日に右少弁、今回の五位蔵人で三事兼帯となった。三事兼帯にするための強引な人事。息子二人の優秀さを印象づけたいのがわかる。とはいえ本人は割と穏やかな感じの人で拍子抜けする。親があれだから気は抜けないが。


夜に火事…。時忠殿の屋敷のすぐ南の崇親院や河原院から、高辻烏丸の祇園御旅所、因幡堂まで広く焼けた。上西門院の相続財産でもある六条殿も焼けた…。これで統子様が手狭になったと三条烏丸殿を出るのも無理になった。

清子姫達姉妹三人が一時ウチに避難してきた。このまま避難しとけばと、言いたかったが、ウチこそが主戦場になる可能性もある。


挨拶したあとだったので気まずかったが、上西門院に出仕。出発までの数日は六条殿の後始末で忙殺された。





お盆ですね。

地元は体温超えの日々。

とても暑いので帰省の方は体調にお気をつけください。

作中では真冬。次回、熊野行きです。

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― 新着の感想 ―
いよいよですか… 皆さんご安全に!って言いたくなります。 フラグ立ててるしw
昔何かで読んだ「平治物語」で重盛が父親の清盛を励ましたってところが印象にあったのですが、史実でも熊野行きに同行していたのは宗盛君だったんですね。ところでクロスボウの開発はしないんでしょうか?
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