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宗盛記  作者: 常磐林蔵
第1章 覚醒、保元の乱

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宗盛記0013 久寿二年十一月

十一月霜月


宮中ではお祭好きな新帝を迎えて、華々しく大嘗祭…は来年らしい。即位祭が行われるまでは大嘗祭は行わないのが通例だとか。まぁ、服喪もやたら長いしなぁ。



神様はひと月のバカンスを終えて出雲から帰って来る頃。そういえば出雲大社も縁結びの神様だったっけ。紅葉が散り、冬至が近いと聞いて、そうか、クリスマスシーズンなんだなと思う。カボチャは無い。時々雪が降る。雪の京都、昔なら喜んだんだが外出できないと寒いだけである。


早朝つとめては 努めて耐えても 冷たきに 雪降りたるは さらにつめたし


枕草子を題とした力作だったが、これを見せた時の六の君の反応が一番冷たかった。



貰った綿羽めんうが随分溜まった。綿羽というより、ダウンのほうがわかりやすいかな。

綿羽は貰ったら湯通しする。野生の鳥はダニが多いんだ。湯通し前の袋も屋外に置いとくようにした。角盥に綿羽を袋ごと漬けて、熱湯で卵を死滅させて荒布で濾してからもう一度袋に入れて風通しのいい所で天日で乾かす。一羽で七〜八匁(一匁は3.75g)位。たまに鷺とか鶴とか交じると一挙に二十匁程。三百匁(約1.1kg)程溜まったので布二枚を合せて横にポケット状の袋を造って、そこに綿毛を入れて端を縫う。

この時代、針の断面が四角いのに驚く。釘と一緒か。穴はどうしてるのかと思えば、頭を細く伸ばして折り返して鍛接する、のだと思う。

縫い物は途中から吉野が手伝ってくれた。というか、男の子のするものではありません、とたしなめられた。解せぬ。

できたものはそう、羽布団である。

これを衾の下に被ると、予想通りとてもとても暖かい。湯たんぽとの組合せは極上。早速父上に見付かって取られそうになるが、今回は死守である。作り方を説明してご自分でお作りくださいと。綿毛を溜めるのに時間がかかるのだ。おかげで食事の膳に鳥肉が増えた気がする。

自分の分ができるまで、また四郎が潜り込んでくる。皆にいきわたるのにふた月程掛かった。

これが十年と経たず貴族の間で拡がるとは思っていなかった。都近辺で鳥の消費が増えたという。


炬燵計画はまだ置いておく。火事が怖いのだ。でも炭団の準備もいずれ進めねば。


結構自制が効かなくなっている気がするが、まだまだやりたいことはある。特になんとかしたいのが、風呂とトイレだ。トイレは水流が必要なので後回しにする。

風呂はどうかというと、毎日結構激しく体を動かす俺は、湯で体を拭ってはいた。しかし日本人は風呂に入りたい。


ちゃんと風呂はある。風呂殿と言う蒸し風呂、和風サウナが。これは前世でも地元でも入ったことがある。一時間ほど離れた所に塚原から風呂というのがあった。

これはこれで良いものなのだが、毎日のこととなるとお湯の風呂も欲しい。

実はこれもあった。湯殿という。問題は、これは禊に使う場所で、陰陽師の指定した日しか使えない。ふざけるな。それでもどちらかを使うので二、三日に一度はどちらかの風呂に入っている。

思ったより綺麗好きで安心した。ペスト後のヨーロッパ中世とかなら、一生に数度とか普通だったと聞くし。その頃その地域に転生しなくてよかった。臭さで絶望する。ジュリエットだってオフィーリアだってきっと臭いのだ。尼寺へ行け。恋愛には無縁の生活を送るだろう。


でも湯殿は労力もハンパない。薪を炊いて水を沸かし、小さいけど浴槽一杯の湯を運ぶ。子供の俺にはこれをいつも使えるようにするのはまだ無理だった。

「就職したら稼いだ金で湯殿を改造するんだ」

とりあえずの目標。



流石に読み書きは随分スムーズになった。

漢籍は史書と詩歌ばかり読んでいる。

先生としては儒学を覚えさせたい様だが、あきらかにやる気がない俺を見て諦め気味。墨子だったら興味があると言っておく。


六の君が、前に作った歌のリテイクを要求してきた。

最初に贈られた歌があれでは、あんまりだと言う。

「そもそも歌というのは、三十一文字で世界の有様とその心を表す、神にも仏にも通じる世の宝なの。聞いてるっ?」

「ちょっと怒ったところも可愛いと思う」

はたかれた。とても照れてるから和む。

「なんか詠みなさいよぉ」

顔が赤い。目は伏せてる。

「ん~~」


よのなかを みそひともじで つくせよと むたいにすぎる うたよめるひと


またはたかれた。


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散文和歌という時代に先駆けた新たなジャンルを作ってる可能性
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