宗盛記0106 応保元年十二月 家と車と邪魔者と
今回は章の終わりなのもあって、増量でお送りします。
いろいろあった1161年も終わりです。
五郎出仕を訂正しました。
もう少し後になります。
南泉殿の部屋割を少し訂正しました。
応保元年十二月師走
二十五日
「婿入りできませんでした」
糸子に手伝って貰って服を変えてから、寝殿に行って愚痴る。父上も帰っておられた。
「今日行ってすぐ婿入できるはず無いでしょう」
と母上が笑う。
自主隔離が終わって近寄るのが解禁されたので、三の君と四の君は庇に出てきて俺にじゃれついてご満悦である。五の君が混じりたそうに寄ってくるのを抱き上げて膝に置く。糸子は女房なんで御簾の外でいいらしい。俺の隣に座っている。綺麗なお姉さんに興味津々な妹達。
糸子は宴会とか時々来てたけど、裳着前の妹達には会ったことなかったか。
「貴方達の叔母で義姉になる糸子よ」
その自己紹介、気に入っているんですね。
「「「???」」」
混乱する妹達。
「清子の姉の糸子…様だよ」
「ん…母上の妹君?」
さすが三の君、天才ではなかろうか。
「そうよ〜。でもオバさま、って呼ばないでね」
妙な迫力を出すんじゃありません。
「そう言えば、候名つけてもらってないわね。つけて?」
「え?あ、そうか…うーんと…明るいと書いて、明の局、とか?」
「最高よ。殿」
耳元で言われた。
自制。
時忠邸の様子を父上と母上に糸子で話し合う。
「とはいえさすがにむかつくから、俺の家人連れて行って門ぶち壊して、清子さらって来ようかなと思ってるんですが」
「やめんか馬鹿者」
「年内に結婚できるよう帰ってきたのに」
「帰って五日で結婚できるか」
「三日通って餅食えば結婚できるんだとばかり思ってました」
「「「はぁ~」」」
そのため息は小言より応えます。
「つ…糸子は三郎の新棟使ってね。足らないものはこちらで用意するから」
そう、概ねできているのだ。半年かけて造った新築の俺の家。南泉殿が。そう言えば初見だから見に行くことにした。三人とも来ると言う。妹達も付いてきた。
あと残ってるのは給水塔の内部と夏の離れと一部の内装。給水塔は色々自制を捨てて建てることになった。俺のこだわりで八角形の二階建て。宝形造りの屋根が夢殿みたいで格好いい。銅板貼板瓦葺き。こちらは桟瓦にした。天辺に置いた火炎宝珠から屋根の四方に伸びる避雷用の鎖も付けた。一見持仏堂にも見える。中にいるのは牛だが。一階部分は牛の歩くコースとポンプ等機械部分と縦方向の配管だ。水は井戸から直接ポンプで二階の貯水槽に上げる。そこから各建屋に配管が繋がっている。一杯になったら水が滴ってくるので、そこで牛はしばらくお休み。八角形はまぁ、洗いやすいというのもある。寝殿造りの中で異彩を放っているが、自宅位好きにさせてもらおう。
南泉殿は機能重視の伊豆の私宅よりは外側は寝殿造りに寄せたが、夏冬対応でかなり快適になってると思う。基礎と柱組は八月に指定の通り。
防火対策でこちらも銅板貼板瓦葺。本葺きで丸瓦の中には銅管を通し、給水塔から水を送って貯め、温まった水を厠や風呂で使うようにしてある。白い平瓦と黒い丸瓦が変わった屋根を作り出している。
板瓦にしたのは軽量化のためだが、水に強い栗の板に銅板を貼ったので錆びれば青白くなって日光を反射してくれるだろうと思ったのだ。銅板を使ったのはもう一つ、水を落とすので殺菌効果を持たせるためだ。費用は普通の瓦より高い。
屋根は俺の好きな入母屋で、棟は東西に向いて簀子の渡り廊下によって東側で東泉殿と繋がっている。破風には冬以外には風が通るように格子戸付。渡り廊下の接続部と反対側の西壁に妻戸。四つつけるのが標準だが防寒のため二つにした。南東端から別棟で池に張り出しの釣殿、夏の離れが建設中。
女房の局も十二畳の個室が北側に六つあるし、俺や清子は中央にそれぞれ十二畳の個室と塗籠の寝室がある。個室には炬燵用の掘抜もついている。夏は板を被せて面一にする。部屋が別れているから書院造になるかな。
俺の部屋は東から二番目の十二畳。東の端の窓のある部屋が清子の部屋である。俺の部屋はその隣。北側には床の間がある。書院造なんで、付書院と脇床もある。脇床には違い棚に地袋、天袋。床柱は四方柾の檜だ。実は柾目板四方に貼った集成材。この部屋には窓が無いが南庇に向かってひと続きになっているので、障子を外せば庇を通して庭に繋がっている。東から三番目は空部屋、四番目が塗籠だ。
南側は宴会できるように七十二畳の巨大な庇だ。
南に延ばして池に張り出した釣殿は夏向きに色々考えてある。ここの土台は煉瓦と漆喰モルタル製。南と東には戸袋部分以外は壁無しで柱のみの全開放。西の外壁は白壁塗。南と東には長く屋根を延ばして水中に立てた柱で支えている。モデルは栗林公園の掬月亭。
全ての部屋には天井があり、CLT製の壁の間には柿渋に浸して防虫したヘチマを詰めて、防音と断熱を図ってある。
厠と風呂は屋内中央列西端。十二畳に個室の厠三つと手洗い。ちゃんと常時稼働の換気扇も付けた。動力はもちろん水。
風呂の浴槽は二畳分ある。洗い場もたっぷりあって流しっこもできるのだ。
さらに寝室の塗籠は徹底防音鍵付。風呂に直結の扉もある。ムフフ。
逆に材とかはCLT多用で安く上げた。
「え、こんなのいつの間に」
と糸子。
「本当にすごいわよ。先月辺りは殿が引っ越すってずっとうるさかったぐらい」
と母上が笑う。
「⋯」
あさってのほうを見て知らんぷりする父上。
なにそれヒドい。赴任地から帰ってくる前に息子が新築した新居の横取りとかあんまりである。
「さて、さすがに親宗をなんとかしないとね。明日話をつけましょう」
母上もちょっと怖いです。
「ところで、俺の車、来ました?」
「なんだそれは?そんなものも造っておったのか」
「あ、まだか じゃ様子聞いてみよう」
幹也の所に人を遣る。
「牛車は色々決まりがうるさいぞ?」
「牛車はね」
「「「⋯」」」
それから皆で南泉殿の確認をしながらこの半年の伊豆の話をした。糸子の目が点になっているし、妹達は見たこともない造りの新棟の探検に大はしゃぎである。
しばらくして車が届いたという報せが来た。
早速、そちらも実見。
俺の作ったのは、二頭立ての四輪馬車。牛車と同じく馬車に屋形を固定したものだ。フレームは新設計した。
外装は塗装こそ網代の八葉車に似せてあるが、サイズからしてまったくの別物だ。早速ウチの馬を繋ぐ。見た目はどっちかというと軽便鉄道の客車に近い。車輪のサイズが全然違うが。幅は五尺、長さは一丈と大体軽のワンボックスカー位ある。唐破風屋根にするとうるさそうだから、普通に銅板打ち付け黒漆塗の切妻。側面スライドドア採用。さらに外が見えるように跳ね上げ式の窓が開けてある。車体の高さを下げるために、車軸は車体の最前部と最後部に取り付けた。もちろん前の車輪は連動して左右に動く。内部は椅子式。前列右寄りに御者席があるが、これは基本自分で御するつもり。馬を御する為に少し前に飛び出している運転席の左に助手席、右の隅の空きスペースには扇風機があり、ギア一つで車軸と連動して風を送ってくる。更に扇風機の後に炭火鉢の固定スペースがあり、冬は温風を車内に循環させる。
座席は前列後列椅子式の(前世の)乗用車仕様。こちらにも扇風機と炭火鉢が着く。内装は網代と木のむき出しで華美にならないようにしてある。雨衣の要らない塗りつぶし。さらに二層構造にしてヘチマを詰めて防音断熱。もちろん材は檜。端材だからそれほどコストはかかってないが、虫や水に強く強度は高い。フロント部分は足元と手綱を通す隙間以外は紗貼り。この隙間も垂衣で覆われている。前に大きく張り出した庇があるので多少の雨なら大丈夫。側面の窓はドアの上部がこれも紗貼りになっている。上には少し張り出した雨除けがある。
各席は御簾で区切ることもできる。後席の更に後ろはフラットなトランクスペース。前にボンネットスペースが要らないのでその分かなり広く、人なら二人は乗れる。中央と左右に青銅製のバックミラーと、明かりを入れる龕灯も付けた。警告用の自転車式のベルも付けた。ワイパーとウィンカーは諦めた。他にも色々ギミックあり。
「いい出来だ これほど俺の希望を理解してくれるなんて」
幹也の手を握って言う。
「いやそのそんな⋯へへへ」
そう、俺はファミリーカーが欲しかったのだ。助手席に清子を載せ、後席に糸子や子供たちを乗せて、京内ならさっと遊びに行ける。そんな馬車が欲しかったのだ。ふははは。
「なにこれ⋯こんなの誰の牛車よりすごいじゃない。こんなの許されるの?」
と糸子が呆然と言う。
「馬車だからね」
自信たっぷりに応える。無駄に広い通りの街なんだから大丈夫なはず。機能と快適さには拘ったが、奢侈を咎められないよう、装飾は最小限にとどめた。
「乗って良い?」
と母上。わざわざ壺装束に着替えて見に来た。
「もちろん」
後席のドアを後にスライドさせる。ちなみに前席は前にスライドする。
「儂もいいか?」
「どうぞどうぞ」
「私もいい?」
「ちょっと狭いけど俺の横へどうぞ~」
「何だこれは」
「ふかふかね」
後席で父上と母上が話している。座席と背もたれは厚手の布で四角柱を一面に作って、中にコイルスプリングを嵌め込んだソファータイプだ。さらに鹿の皮を貼ってある。そらふかふかである。
車軸のサスペンションは定番の板バネ。スイングアームも考えたんだが縦に長くなリすぎるからなぁ。
伏矢と亀二、亀三がついてくれる。後、幹也も。
本来、騎馬武者に同行してもらう仕様だ。
「付き添いはちょっとしんどいと思うが、今日は近所にしとくから。そのうちお前たちも御せる様になってくれ」
と牛車役三人に声をかける。三人共顔が引き攣る。
白銅(青銅の一種)のミラーの位置を調整し、サイドブレーキを固定していた鍵を回して外し、手綱を持ってスタート。鍵の予備は無くす心配から複数作った。足はブレーキペダルに乗せる。残念だがアクセルペダルはない。六波羅内をくるっと回るコース。最初は牛くらいの速度で、少しずつ行けるところまで速くして、やがて元に戻して人の早足程度の速度で一周りしてウチの車寄せに帰ってくる。普通に牛車の倍は速い。急ぎなら自転車位の速さはだせそう。
「いい、最高だ」
「「「⋯⋯」」」
隣を見ると糸子は少し口を開けて目の焦点が虚ろだった。後席を見ても同様。
「くれ」
「嫌です」
「頂戴?」
「いや、母上までそんなこと言われても」
「時々乗せてね?」
「もちろん」
そんな会話をしつつ寝殿に帰る。
「「おかえりなさーい」」「⋯」
三の君と四の君、少し遅れて五の君がやってくる。
「兄上おかえりなさい」
四郎も戻っていたようだ。
「ただいま。そうだ、来年の小松引きはみんなで一緒に行けるね」
「「はーい」」「うん⋯」
妹達可愛すぎ。
二十六日
「車止めのあれ、兄上の⋯ですよね」
「おお、いいだろう」
「兄上しかいませんよね⋯」
なんだよその諦めの入ったような表情は。
乗せてやらんぞ。
人をやって親宗が出仕から帰ったのを確認してから、時忠邸へ向かう。新作の馬車で。助手席には糸子。
結婚直前に横槍を入れた親宗を、許す気はない。
もちろん護衛付きだ。祐親や茂光達伊豆勢にも付いてきてもらった。二十騎程の武者込みだ。まるでカチコミである。
今日は既に門衛が立っている。こちらの馬車と護衛を見て顔色が変わる。
ガチガチに緊張しながら体を張って門を塞いで俺を止めようとするのは立派なものだ。もちろん向こうからは何もしてこないが。
「清子!迎えに来た!外出の支度をしてくれ!」
車を降りた俺が門の前で首から吊ったメガホンを使って大声で叫ぶ。
別に清子が出てこなくてもいい。叫ぶことに意味があるのだ。引き攣る門衛達。
「親宗の阿呆に無理強いされてるんだろ!助けに来たよ!」
叫ぶ。
「自分がもてないからって僻みやがってあの甲斐性無しの親宗め!」
叫ぶ。
「直ぐに助けてやるからね。結婚前の妹閉じ込めるとかまるで変質者だな!親宗は」
叫ぶ。
「親宗の人でなし!」
親宗が血相を変えて飛び出てきた。あれ?こいつこんなに小さかったっけ?
ちなみに俺の三つ歳上の親宗は、昨年の夏に元服して六位蔵人改め従五位下の蔵人として出仕している。もちろん、滋子様と父上の引きである。
「屋敷の前で喚き散らすとはなんたる非常識な!」
「来たか。姉妹に才能全部取られた出涸らしの親宗。泣かされる前に清子渡せ」
「俺は叔父だぞ!うつけの貴様になぞ言われる筋合いはない!」
「俺は四位だ!お祖父様の遺徳で辛うじて貴族やらせてもらってるミソカスの親宗よりも偉い!」
「ぎ…、ぐ…」
「まともに話すこともできんのかこの能なし。時忠殿の意に逆らって妹監禁する家の恥。たかだかお留守番の分際で何勘違いして当主面してやがる」
「わ、私がこの家の正当な当主だ!大体、お前の母親なぞたかだか半者の娘ではないかっ!この家で真っ当な血筋は、俺と滋子姉上達だけだ。公卿の孫の俺が当主であるのが当然なのだ!」
「母上は三位で帝の乳母君だ、このバカバカバーカ。二代前の位しかとりえのない落ちこぼれの半端者」
煽る煽る。言ってるのは子供のケンカの悪口みたいなもんだが。
「俺の、俺の母上が一番偉いのだ!正妻なのだ!正当な嫡男は俺なのだ!俺が決めたことがこの家の決まりだ。お前なぞ流刑地で暮らしているのがお似合いだ。清子はやらん!」
「育てて貰った恩も忘れて何言ってやがるこの馬糞野郎。人の嫁閉じ込めるとかお前ごとき格下が何勘違いしてんだ出来損ない。まさかお祖母様を粗略に扱ったりしてないだろうな」
「お、お、お前の係わりの半物の婆あなどすぐに追い出してやる!」
「親宗。それは誰のことを言っている?」
馬車の後席が後に開く。
「多少哀れになってきたので何を言ってもまぁ、大目に見てやろうと思っていたが、さすがに聞き捨てならんな」
そう、時忠殿である。婚儀の打ち合わせで昨夜伊賀から戻ったばかりの。帰りがけにウチに寄ったのを事情を話して今日付き合ってもらったのだ。
「あ……あにうえ?」
「お前を当主にした覚えなぞないぞ?」
「こ、こいつが、このうつけが!」
震えながら俺の方を指差すが、舌を出してやる。時忠殿には見えない角度で。
「こんな、こんなヤツが四位などありえない!こんなうつけ者が!」
次はニヤニヤ笑って狩衣の袖から中指を立てて見せる。もちろん時忠殿には見えないように。
「俺が当主だろ!俺の言うことに従え!」
門衛の方を向いて叫ぶが、既に皆門の中に下がってこちらの方を見ようともしない⋯。
「うおおぉ!」
辺りを見回した後、助けが得られないことに気づいて、ようやく切れて殴りかかってきた。なんだこのゆっくりした動きは。余裕で躱して襟を掴んで脚を刈る。大外刈。伊豆で結構相撲をとってたから、体が組打に慣れている。きれいに決まった。尻から落ちて動けないのをマウントポジションで押さえつける。下でもがくが非力すぎる。先に攻撃されたんだから、このままボコって顔の形を変えてやろうかと思ったが、保護者が見てるからな。そう、母上も来てる。
「親宗…半者の娘の姉ですよ?私のこともそんなふうに思っていたのですね」
「あ、あ、あ、時子姉上、ちがっ、ちごがっ」
押さえつけられ襟を締められたままの親宗真っ青である。
まぁ、そう仕組んだのは俺だが。
一緒に車から出てきた糸子が諦めたように大きな溜息をついた。
「とりあえずこれからのことを話し合おう。宗盛殿。離してやってくれ」
俺が立ち上がった後も、放心した親宗は横たわったまま身動きしなかった。
中門の所で見ていたらしい清子は、ちょっと出てきて照れていた。結婚前の見納めかな。保護者がいなければこのままハグしたいところ。
季子姫もちゃんと見に来ている。
今度は問題なく上がって、話し合いの結果、俺の婚儀は年が明けて八日となった。
女叙位の日だがウチの一族には予定がない。滋子様も東宮の件で逼塞させられているらしい。結婚式には久しぶりに会えるかな。
糸子は清子の世話のため一度帰ることになった。
どうでもいいんだが、親宗は山科の時忠殿の別邸に移されることになった。毎日二里半の通勤である。里内裏の開門の一刻以上前には出ないと遅れる。ざまぁ。人の恋路を邪魔するから、馬に蹴られて飛ばされるのだ。
まぁ、俺にえげつなく罵られて嵌められさらに投げ飛ばされたのはみんな見ていたので、情状酌量ありありである。
最早、結婚を妨げる邪魔者はいない。
二十七日
上西門院に帰京の報告。感染管理からするとよろしくないんだが、俺には発熱も水疱もないし御簾越しで距離もあるからそれほど問題にならないと思う。正月八日に結婚して、多分そのあたりには次の職も決まってるだろうから、こちらには一月下旬からまた五日に一度出仕することになった。十日に一度は宿直もあり。年内に相談に来れて良かった。
午後は正子姉上の所に。解官をくらって散位の信隆殿はすっかり消沈している。ええとこのボンの初めての挫折である。
姉上に愚痴を言われるが、一応対策まで考えたんですよ、俺。
既になんとなく立場が逆転しているのが面白い。嫁は怒らせちゃダメだな。
二十八日
仁和寺に帰京の報告。
空性様は八月のうちに讃岐に発たれたそうだ。
覚性法親王様に献上と夏の御礼を申し上げる。
予想通り、殊の外蝋燭が喜ばれた。伊豆の寺社での試験結果を伝え、今後こちらでもっとお納めできますと伝えると是非にとの話になった。
なんせ輸入価格の半分以下だ。可能なら全て買い上げたいとのお話。できるなら都の真言宗寺院全てで欲しいそうだ。高額商品なのに潜在的な需要はどれほどになるか。下級貴族で終わるなら、もうこれだけで十分食べていける額だ。俺は金遣いも激しいから、あくせく金儲けしないといけないが。
正月八日に結婚しますと言うと、夫婦和合の祝福を頂いた。密教系だから聖天様かな?ありがたや。
帰って章子姉上とまったりする。
俺の新棟を見て気に入ったらしく、一部屋欲しいというので了解。吉野、糸子、波路、章子姉上でもう四部屋埋まった。衝立で仕切った局じゃなくてちゃんとした壁のある個室は魅力的に映るらしい。風呂トイレ完備だしな。でも炬燵でゴロゴロしてるとまた太りますよ。
二十九日
今月は小の月なので、大晦日。
当然、父上も四郎も出仕である。
親隆様に帰京の報告。
改元直後のこの九月の十五日に参議に就任されたそうだ。ちょうど信隆義兄上が解官くらった日か。お祝いを申し上げるが、体調がよろしくないらしい。疫病が気になることもあって、出仕が滞りがちだと言う。精のつくものをということで、伊豆の一夜干しと大根の味噌汁ととろろ飯で昼食を作る。鰹節が改良してよりいい出汁とれるようになったので、削り器と一緒に厨に置いてくる。忠子叔母上や親雅殿も心配そう。
帰って年越しの支度。
主におせちの一部と雑煮の出汁取りである。
ウチの厨も進歩しているが、俺の鰹節も進化しているからな。
家の隣で鳴り響く六波羅蜜寺の鐘を聞きながら、こんな風に今年は終わった。
これにて第四章終了です。
いつものように、二週間のお休みをいただきます。
人物も多いため、人物紹介の作成で全部飛びそうですが。
次回再開は2/17(火)を予定しています。
次章からも宜しくお願いいたします。




