6.朝食を食べて、領地を見て回る ②
「フーちゃん、この建物の装飾、竜があしらわれているんだよ」
私はまずフーちゃんをとある建物に連れてきた。ここはね、領内の騎士たちの詰所なのだ。リュシバーン公爵領は竜と関わりの深い家だからこそ、その領地には竜をもした装飾がよく見られる。
私にとって、本当に竜というのは身近な存在だ。
竜たちを模した彫刻を掘るコンテストがあったり、竜にまつわる行事が山ほどあったりする。
「わぁ、本当だ。凄く綺麗」
「でしょ? 十年前にね、新しく建て替えられたんだよ。その時に領内の職人たちが気合を入れて作った建物がここなの!」
前の建物も趣があってよかったのだけど、流石に建築されてからかなりの時間が経過しており修復を必要としていた。修復をするぐらいならばいっそのこと建て替えてしまおうという話になってこういう建物になったの。
ベージュ色の建物の窓は四角。外から見ると窓の下部の部分に竜の飾りがつけられている。全部の窓がそうなのだけど、飾りに関してはそれぞれ違う。屋根の部分には黒色の竜の彫刻が設置されている。これは大きくて、見ているだけで壮観な気分になる。とはいってもあくまで屋根の飾りだから、実際の竜よりはっずっと小さいけれど。
「ユーフィレエ姫様、こんにちは! そちらの方が妹姫様ですか?」
顔見知りの騎士から声をかけられる。ちなみにおじさまには息子しかいないから、私たちはこの国で姫呼ばわりをされている。
「ええ。私の大切な双子の妹よ」
私がにっこりと笑うと、周りの騎士たちが嬉しそうに声をあげる。
「やっぱり! ユーフィレエ姫様にそっくりですね。初めまして。フーフェレエ姫様。あなた様がこうしてこの地に戻ってきてくださったことを喜ばしく思います」
「あ、ありがとうございます」
フーちゃんは騎士の言葉に嬉しそうに笑っている。
そのまま私たちはその建物内へと入った。普通は関係者以外入ったらいけないけれど、私たちは領主の娘だし、特に問題はない。
それにここに務めている騎士たちも、フーちゃんが帰ってくることをずっと望んでくれていた人たちなのだ。
だからフーちゃんのことを嬉しそうに見ている人ばかりだ。
まぁ、世の中にはいろんな考えの人がいるからフーちゃんが帰ってこなければよかったという心無い考えを持っている人も世の中にはいるかもしれない。そういう人たちはなるべくフーちゃんに近づけないようにしないと!!
でも大切に守りすぎても問題が起きたりしてしまうかな。フーちゃんが一番良いと思える選択を出来るようにしたいなとは思っているけれど……。あと私はフーちゃんが戻ってきたことが嬉しくて仕方がないってはりきっているのだけど、それでフーちゃんが嫌がることはしたくないからちゃんとフーちゃんの意思を聞いてからしないとね。
お母様にも私は興奮しすぎると暴走しがちな所もあるって言われているし……。うん、ちゃんとしないと。フーちゃんにそれで嫌われでもしたら私は悲しくて仕方がなくなってしまうから。
「フーちゃん、ほら、此処からの景色凄くいいでしょ」
「うん。それにしても人が多いね?」
「フーちゃんが此処にいるって噂になっているのかも」
フーちゃんのことを一目見ようとこうして建物の周りに人が集まっているのだと思う。
フーちゃんは私の言葉にまた驚いた顔をする。
ころころと表情を変えるフーちゃんが可愛い!!
その建物の中の一般人では入れないようなエリアも私たちは案内される。騎士たちへの緊急信号の出し方とかそのあたりもちゃんとフーちゃんは知っておくべきだしね。
フーちゃんの魔力の封印を解いたら、自衛のための魔法もフーちゃんに教えようと思う。
貴族は魔法の教育を受けるものなのだけど、フーちゃんは魔力を封印された状態で魔力がないと教育を受けさせてもらえなかったみたい。というか、子爵家ではそういう教育までする余裕がなかったというのもあるらしい。
基本的に護衛がいるから問題ないとはいえ、自衛出来る方がずっといいもの。
そんなことを思いながら、私はフーちゃんを連れて色んな場所を案内する。そして訓練所に着く。
その詰所は中央に騎士たちが訓練できるスペースが併設されている。そこで剣を振っている騎士たちをフーちゃんはキラキラした目で見ている。
「わぁ」
フーちゃんはこうやって騎士たちが訓練をしているところなど見たことがなかったのかもしれない。
キラキラした目でフーちゃんが騎士たちを見ていて、楽しそうなフーちゃんに私は嬉しくなる。
「再会した時、剣を腰に下げていたけれど、ユーちゃんも剣を使うの?」
「もちろん。私は騎士だもの」
フーちゃんからの問いかけに、私はそう言って答える。
「……私、ユーちゃんが剣を扱っているところ見たいかも」
「なら、すぐに見せるわ!!」
フーちゃんが自分の見たいものを口にしてくれた! と私は嬉しくなった。
早速私は訓練をしている騎士たちに近づく。
「ねぇ、誰か私と模擬戦をしてくれない?」
そして私はそう声をかけた。