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4.目が覚めた時にフーちゃんがいる幸せ

「ユーちゃん、この花、とても綺麗だね」

「うん。凄くかわいー」




 幼い頃、フーちゃんと私は家族で一緒に花畑に来ていた。花を見て二人で笑いあう。そんな幸せな光景。

 だけど、次の瞬間にはその光景が移り変わる。そこにはフーちゃんの姿はない。



「フーちゃん、フーちゃん!!」




 小さな私がフーちゃんの名を幾ら呼んでも、そこにはフーちゃんの姿はないのだ。

 黒い手が、フーちゃんを奪っていく。そして私が幾ら手を伸ばしてもフーちゃんには手が届かない。



「はっ……」




 その状態で私は目を覚ます。

 悪夢を見てしまい、額から汗が流れている。




 私は慌てて隣を見る。

 そこにはすやすやと気持ちよさそうに寝息を立てているフーちゃんの姿が映る。



 私はフーちゃんが奪われていく場に居た。そして手を伸ばしてもフーちゃんを取り戻せなかった。

 私はその日から時々、フーちゃんを奪われる悪夢を見ていた。

 でも――私たちの宝物であるフーちゃんは見つかったのだ。

 私はフーちゃんがこうして隣に居てくれるというだけでも嬉しい。目が覚めた時にフーちゃんが居るというだけで夢なのではないかみたいなそんな気持ちになる。





「んっ……」





 フーちゃんが目を覚ました。

 そしてきょろきょろとあたりを見渡す。そして私と目が合ったかと思うと、急に焦点が合った。




「フーちゃん、おはよう」

「ユーちゃん、おはよう……」






 眠たそうに目をこするフーちゃんは可愛い。




 私の可愛い双子の妹。リュシバーン家の三女の帰還はまたたくまに皇国中に広まるだろう。そしたらフーちゃんには縁談が様々舞い込むだろう。……フーちゃんを任せられるって思える相手にじゃないと私も家族も、フーちゃんをその人には渡せない。

 それに出来れば近場に嫁いでほしい。折角フーちゃんが帰ってきたのにまた離れ離れになるのは寂しい。それでいてフーちゃんをうんと愛してくれる男じゃないとダメ。




「フーちゃん、今日はお祭りだよ」

「お祭り……? 何か特別な日なの?」

「フーちゃんが帰ってきた記念でお祭りするって」

「え」




 私の言葉にフーちゃんが目をぱちくりさせる。

 不思議そうな顔をしているけれど、そんなに疑問に思うことでは何もない。




「だって、私達の大切なフーちゃんが帰ってきたんだからお祝いするのは当然だもん!! リュシバーン公爵領ではフーちゃんを見つけることを皆願ってたの。だからね、皆でお祝いするのは当然なんだよ!」

「そ、そうなの?」

「うん。あのね、フーちゃん。本当にね、皆フーちゃんが帰ってくるのを望んでいたんだよ。だから領地全体でお祭りをするの」




 昨日、フーちゃんが帰ってきたばかりなのに皆、凄く準備が速いよね? リュシバーン公爵領は行動すると決めたらすぐに行動しちゃうタイプの人の方が多い気がする。この辺はお爺様やお父様がそういう性格だったからというのも大きな要因なのかも。

 私もやると決めたらすぐに準備しちゃうしな。こういう風に行動力に満ち溢れている領民たちのことを私はとても誇りに思っている。




「というか皇都の方でも祭りが近々行われるよ。一緒に行こうね!」

「皇都でも……?」

「うん。だっておじさま――皇帝陛下にとってもあなたは姪だもの。皇国中できっとお祝いになるわ」




 私の言葉にフーちゃんは信じられないと言った様子である。




 フーちゃんはそういう立場の人間だ。皇帝の姪。周りから優先されるのは当然で、周りから大切にされるのは当然で、フーちゃんが帰ってきたのだからこれだけ騒ぎになるのは当然のこと。

 フーちゃんのこういう様子を見ていると、本当に本来なら与えられるはずのものを与えられずにフーちゃんは生きていたのだというのが分かる。拾ってくれた夫婦は大切にしてくれていたみたいだけど、その後の子爵家と婚約者の家であった伯爵家はフーちゃんによくしてくれなかったのだ。

 皇族の血を引く公爵令嬢としての暮らしを、今まで出来なかった分、フーちゃんに満喫してもらわないと!





「フーちゃんのことは皇国中が待っていたんだよ。だからこうやって帰還をお祝いされるのは当然なんだからね? 朝ごはんを食べたら一緒に祭りを見て回ろうね。リュシバーン公爵領を沢山案内するから!!」





 フーちゃんのことを皆、大切に思っているんだよ。フーちゃんは本来蔑ろにされていい存在ではないんだよ。皆、フーちゃんのことをずっと待っていたんだよ。

 そういう本心からの言葉を過剰なほどに告げているのは、自分なんかのために祭りなんて……と信じられない様子のフーちゃんに当然のことなんだよって思ってもらうため。

 私の言葉にフーちゃんは何とも言えない表情で頷く。





 そして私たちはその後、朝食を食べるために食堂へと向かった。


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