20.おじ様とおば様との会話 ①
私はたまっていた仕事を片付けていく。
少し長めの休みをもらったからこそ、色々たまってはいるもの! 幾らフーちゃんが見つかって嬉しいからといって、それではしゃいでお仕事をおろそかにしてはいけないわ。
こういう時にやらなければならないものを出来なくなる人もいるけれど、私はそういう風にはなりたくないからきちんと気をつけようとは思う。
「えーっと、これを進めて……」
正直身体をうごかす方がとても好きなのだけど、こういう書類仕事も大事だからね。
一生懸命私が仕事をしたら、フーちゃんに凄いって言ってもらえるかもと思うとやる気が出る。
私はフーちゃんに誇れる私でありたい。フーちゃんに軽蔑されるようになったら嫌すぎるもの。
そういうわけで私はてきぱきと作業を進める。
これが終わったら、ユーシュに乗って見回りしてこようかなと思っているの。
そんなことを考えながら仕事を進めていたら、文官から「皇帝陛下がお呼びです」と言われる。
おじさまから呼び出しを受けた私は早速向かうことにした。
「ごきげんよう、おじ様、おば様」
目的地についたら皇帝陛下と皇妃様――私にとっておじ様とおば様に挨拶をする。
お二人とも忙しいから、時間が出来たら話をしましょうとは言ってあった。他でもないフーちゃんのことについて話すことは幾らでもある。報告はきちんとしているけれどね。
楽にして掛けていいと言われたので、椅子に腰かける。
私の目の前に、皇室のパティシエが作ったケーキがおかれる。おじ様もおば様も私のことを可愛がってくれているので、話すときはいつもケーキなどを用意してくれている。私が甘い物が好きだからって毎回、こうなの。
「フーフィレエにはいつ会えるのかしら?」
「もう帝都には来ているのだろう?」
食い気味にそう口にするおば様とおじ様。
フーちゃんの心構えとか、準備とかがあるのでまだお二人はフーちゃんと対面していない。早く会いたくて仕方がないのだろう。
「数日以内には登城する予定のはず。だから、それまで楽しみにしてもらえると」
私がそう言ってにっこりと微笑めれば、おじ様とおば様も笑みを浮かべる。しかし次の瞬間には真顔になる。
「それで報告は聞いているが、フーフィレエは大変な状況だったのだろう?」
「そう。報告した通りに、私のことをフーちゃんと間違えて婚約破棄をしてきたの。本当に信じられなかった!! 相手がフーちゃんじゃなかったとしても、あんなことを公の場でするのが本当にありえないわ」
思い出せば思い出すほど、やっぱり信じられない気持ちになる。
例えばフーちゃんが相手じゃなかったとしても、こんなことをしでかしている時点であの国にとっても問題児だと言える。そもそも後ろ姿とはいえ、婚約者を間違えるのもおかしいし。
「フーちゃんの元婚約者のことは調べさせてるけれど、私が誰か知って大混乱はしているみたいだわ。でもまだフーちゃんが大々的には公表されていないから、嘘なのではないかとか、信じられないとか騒いでいるとかも聞いたの」
現実逃避でもしているのかもしれない。フーちゃん相手に彼らは良い扱いをしてこなかったから。
――それはすなわち、破滅への道だ。
それにしてもまだ大人しくしているのならば、爵位は失われたとしても普通には生きられるだろうに……。フーちゃんのことをあることないこと今も言っているのは頭が悪いというかなんというか。
反省の色が見えないのはマイナス点。それに我が家を甘く見ているのも本当になんだかなぁと思う。だって私達が彼らの状況を調べられないはずがない。だから彼らは表面上だけでもまだ反省した態度を見せるべきだと思う。
「なんとも愚かな」
「私もそう思う。大体、王国の王家が口にしていることを疑うのも不敬罪だわ。フーちゃんはもう彼らと関わらせる気はないけれど、大々的にお披露目する際には彼らの耳にも届くぐらいにフーちゃんを素敵にしたいわ」
正直わざわざフーちゃんのことを貶めるような相手と、関わらせるつもりはない。まぁ、フーちゃん自身が話したいとか言ったら別だけれどもね。
フーちゃんが帰ってきたんだとお披露目する場はそのうち整えられるだろう。
その時にフーちゃんがとても素敵な女の子なのだと噂になるようにしたい。それでせいぜい、フーちゃんを大切にしなかったことを彼らが後悔すればいいと思う。
「その時は王家からも装飾品を送ろう」
「ドレスに関してはあなたたちで決めるわよね? それ以外の部分でもちろん、援助するわ」
おじ様とおば様は私の言葉に、そんな風に提案してくれる。
お揃いのドレスは手配してあるけれど、他のものも最高級のものにしないとね!!
一度社交界に出たら、その後はフーちゃんは引っ張りだこになるだろうからフーちゃんが疲れないような範囲で、色々決めないと。