19.久しぶりの職場
「ユーフィレエ様! おはようございます」
「お久しぶりです。ユーフィレエ様。妹様が帰ってこられたんですよね!?」
「隊長、おはようございまーす!!」
私が久しぶりに職場へと顔を出すと、部下たちが声をかけてくる。
部下たちは私がフーちゃんを探していることを皆知っている。というか、私達一家の失われた令嬢の話は国内でも有名だったから。それに私が仕事で様々な場所に赴いた時にいつもフーちゃんのことを探していたのだ。
「おはよう、皆。そうよ。私の大切な双子の妹が見つかったの。本当にうれしくて仕方ないわ。あなたたちにもそのうち紹介するつもりだから、その時はよろしくね。もし嫌な思いをさせたら、私は怒るわよ」
フーちゃんのことを話していると、自然と私は頬が緩む。だけど牽制も忘れないようにしている。
だってフーちゃんが嫌な思いをするのは許せないもの。
フーちゃんはただでさえこれまで苦労をしてきたの。それこそ私が想像できないぐらい、ずっと大変だったのを察している。
「もちろんです!」
「隊長の大切な妹様に嫌な思いをさせるわけがないです」
「フーフィレエ様が見つかって本当に良かったです」
私の言葉に部下たちは当たり前のように頷いて、そう言って笑ってくれた。
なんだろう、私は産まれた家もだけれども本当に恵まれている。一番は、周りの人だろうか。
私が自由気ままにフーちゃんのことを探すことが出来る環境だったのもこういう周りに恵まれていたからだ。
……私がそのことばかりを考えて、フーちゃんのためにって周りを蔑ろにするとかをしなかったからだろうけれど。私はフーちゃんを探すことを第一にはしていたよ。でもちゃんと仕事はしていたし、竜騎士としてきっちり成果は出してきたつもり。というかお母様たちも流石に私がそういう調子だったらきっと注意をしてきただろうしね。
「ユーフィ」
部下たちと会話を交わしていたら、いつの間にか近づいてきたセドラックにくっつかれた。
気配は感じ取っていたけれど、セドラックならば問題ないので私はそのままされるがままだったの。
私がフーちゃんと一緒に居たいからとしばらく仕事を休んでいたのもあってセドラックに会うのは少し久しぶりだった。
「久しぶり。会いたかった」
「私もよ。セドラック。私が休んでいる間、ありがとう」
くっついてきたセドラックの頭を撫でる。なんだろう、少し離れていたからか、甘えたいモードでも発動しているのかもしれない。
私もセドラックにくっつかれるのは嫌じゃない。寧ろ好きな方だ。
「隊長は本当に副隊長と仲良しですよね」
「羨ましい! 俺も恋人欲しいなぁ」
部下たちは私たちがくっついているのなんて見慣れたもので、そんなことを言って騒いでいる。
そういえばセドラックとの結婚話を進めるとは決まっているけれど、私が領地に帰っていたのもあって具体的にはまだ決まってないのよね。
ちゃんとそのあたりも話し合わないといけないわ。
「セドラック、もうすぐ定例の時間だから一旦離れて」
名残惜しいけれど、朝の定例の時間がやってきている。
部下たちは……正直言って私達がくっついたままでも気にしないかもしれない。けれどもそれだと流石に示しがつかないというか、周りが許しているからと言ってそのあたりをきちんとしないのは違うもの。
そう思っているので、私はセドラックに離れるように言った。
セドラックは私の言葉を聞いて離れる。
それから私が休んでいた間の報告を色々と受けることになった。緊急の要件以外は私の元へと届かないようにしていた。セドラックは私がフーちゃんとゆっくり過ごせるようにとあんまり仕事の連絡を私にしてくることはなかった。
実際に報告を受けてみると、私が休んでいる間もそれなりに色々あったみたい。……正直私に報告をしても良かったものもあったわけだけれど、その問題もしっかり片付けているあたり流石セドラックだわ。
私は皇族の血を引くから、『竜姫士』なんて呼ばれて隊の中でも注目は浴びているとは思う。だけどセドラックも含めて、私の仲間たちは凄いの。
私が居なかったとしても何かあった時にどうにでも出来るだけの力を持ち合わせているのよ。
私にとって自慢の婚約者と、部下たち。
「私が休んでいる間、皆、よくやってくれたわ。あなたたちが部下であることを私は誇りに思うわ」
私がそう言い切ると、部下たちは嬉しそうに笑った。
私はなるべくこういう言葉は本人に伝えるようにしている。人によるだろうけれど、少なくとも私は褒めてもらえた方が嬉しいもの。
私が竜騎士になったばかりの頃、私の頑張りを認めてもらえたからこそ私はこうして一生懸命頑張ってこれたんだもの。
自分がされて嬉しかったことは部下にもする方がずっといいと私はそう思っているの。実際にこうやって告げることで部下たちのモチベーションも上がっているみたいだしね。