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15.空の上から領地を見る ③


「ユーシュ、蹴散らして」




 私がそう言って声をかければ、地上で人を襲っていた魔物達をユーシュが魔法で蹴散らす。

 器用なユーシュは、襲われている人に被害が行かないように魔法を行使することが出来る。流石、私のユーシュよね!

 昔はもっと魔法の制御が上手くできていなかったと思うのだけど、今ではすっかりこんなに魔法を使うことが上手になっていて嬉しい。



「わぁ……」



 フーちゃんは魔物をあまり見かけたことがないのだろう。驚いた顔をしている。フーちゃんはこういう竜の使う魔法も見たことないのだろうなと思う。



「大丈夫?」



 私が襲われていた人たちに声をかければ、彼らはへたり込んでいたり、感激した様子を見せたりと対応が様々である。



「『竜姫士』様! ありがとうございます!」



 一部の人たちはそう言ってはしゃいだ声をあげる。



 ただ幾らこの国が竜になじみが深いとはいえ、平民たちは竜と関わったことがあるわけではない。だから遠目に見るのはともかくとして、これだけ至近距離で竜を見たことがないので怯えている人もいる。



 ユーシュのような竜は頭が良いので、よっぽどのことをしなければ人に牙をむくことなどしないのだけど、おびえるのも仕方がないことだとは分かっている。



「怪我はないかしら? 街まで向かうのが難しそうならそこまで送るわ」



 私がそう言ったら、「送っていただきたいです」と言われた。なので彼らの乗っている馬車のすぐ傍に控えて、街まで送った。



 領地の人々は私の顔を皆、知っている。だから街に近づけば近づくほど騒ぎになっている。

 私とフーちゃんが一緒に居るのを見て、皆嬉しそうにしている。そういう表情を見るのも好きだ。

 送り届けた後に、私達はまたユーシュに乗って領地を見て回ることにする。




「ユーちゃんは凄いね。いつもこうやって人助けをしているんだね」

「困っている人が居たら助けるのは騎士として当然だもの」

「助けられた側からすると、ユーちゃんがピンチに駆けつけたら王子様か何かに見えるんだろうなぁ」

「そう?」

「うん。だって私だったらユーちゃんに華麗に助けられたら、かっこいいなぁって思うもん」



 そんなことを言うフーちゃんが可愛くて、私はにこにこしてしまう。

 だって本当に可愛いのだもの!!




「フーちゃん!!」



 可愛いなと思って、思わず抱き着いたらフーちゃんも笑っている。



「フーちゃんがピンチになったら、私が絶対に駆けつけるからね? これから色んな人と出会ったら嫌な思いをすることもあるかもしれないけれど、その時はちゃんと言ってね?」

「うん。……でも私もユーちゃんを守れるようになりたいな。そっちの方がいいと思うから」

「ふふっ、フーちゃんに守ってもらえるのはそれはそれで嬉しいなぁ」



 私の大切な半身、双子の妹。私が居ない所で嫌な思いをすることもこれからあるかもしれない。双子でもずっと一緒に居られるわけではないから。

 私も休みを終えたら仕事に戻るしね。

 フーちゃんがこの国に戻ってきて、沢山の世界を広げていくだろう。きっとフーちゃんは人気者になるんだろうなぁ。

 ああ、でも他の人たちに囲まれて、私と居るよりそっちと居るのが楽しいとか思われたら寂しくなっちゃうな。



「次は向こうに飛んでみようか!」

「うん」



 私が誘えば、フーちゃんは頷いてくれる。

 まだまだたくさんの場所をフーちゃんに見せてあげたいなと思う。


 空の上からだからこそ見れるものが沢山あって、その景色をフーちゃんを共有できるのが楽しい。



「あそこに大きな花畑あるんだね」



 フーちゃんがふとそう言った。フーちゃんは香水が好きだから花畑にも興味津々なのかも。



「あそこにおりようか」



 私はそう言って、ユーシュに指示を出して降り立ってもらう。



 お花が好きなのも、フーちゃんらしいなぁと思う。フーちゃんに色々買ってあげたいし、お揃いのものとかもっと欲しいな。お花にまつわる珍しいものとかを探してみようかな?

 竜騎士として仕事をする関係で色んな場所に顔を出すのだ。今度から遠出した時は毎回フーちゃんへのお土産を探す形になりそうだなと思った。




 それにしてもこうして花畑に来ると、幼い頃を思い出す。

 フーちゃんが居なくなる前、家族皆で花畑に来たことがあった。フーちゃんはその時も、楽しそうに笑っていた。その時と同じように、フーちゃんと花畑に来れるのが嬉しい。

 ずっと私はフーちゃんとの思い出を大切にしてきて、いつかまたフーちゃんと会えたら……と思っていた。

 だから、本当にうれしくて仕方がない。





「フーちゃん、昔もこうやって花畑に来たことあるの、覚えてる?」

「んー。ちょっとだけ……、でもあんまり覚えてなくて」



 そう言ってフーちゃんは少し悲しそうな顔をする。



「なら、これから沢山こうやって思い出作ろうね!」

「うん!」



 フーちゃんは私の言葉に笑っている。


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