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14.空の上から領地を見る ②

 ユーシュがふわりと飛び上がる。

 地上が一気に離れていく。ユーシュはフーちゃんのことを配慮して、戦闘態勢の時よりはずっとゆっくり上昇している。こういう気遣いが出来るところも、私のユーシュの良い所だと思う。



「フーちゃん、下をのぞいてみて」



 私がそう言ったら、フーちゃんは恐る恐ると言った様子で下を向く。魔法で落ちないようにはしているのだけど、それでも不安なのかフーちゃんは肩手を私の肩に置いていた。

 少し体が震えているのは、竜に乗るという行為にフーちゃんが慣れていないからだろう。



「凄いね」

「でしょ? 私ね、上空からこの領地を見て回るのが好きだわ。穏やかに過ごしている領民達の姿を見るだけで、嬉しくなるの。上空からの景色もきれいに整えられているから、余計に楽しめるの。竜たちも、私達竜騎士も楽しめるように出来ているんだよ」

「本当にリュシバーン公爵領は、竜や竜騎士が身近なのね」



 フーちゃんがそう言って笑っている。



 この領地は竜と共に生きてきた。だから皇国内の他の領地とは色々と異なる。この領地、独特のものも沢山ある。まぁ、皇国自体が竜と関わりが深いから他の国よりは竜に纏わる物が多いのだけど。




「あっちには大きな畑があるんだね」

「うん。あっちはねー、村とかが連なっている地域だね。私たちの暮らしている街に届けられる穀物などを育てているんだよ」



 リュシバーン公爵家の屋敷がある街は、公爵領の中心部だ。そこから少し離れたところまで飛ぶと、そこには畑などが広がっている。公爵領はいくつもの街や村を有しているので、一日で全てを見て回るのは難しいのだ。でも出来る限り、領内を飛び回って、フーちゃんに領地を見せようと思った。




 竜での移動は他の馬車などの載り物よりもずっと速い。

 だから短期間で色んな場所を見に行けるのだ。




「あっちには大きな山があるんだね。上から見ると不思議な形をしてるんだね」




 フーちゃんは上から見た領地内の景色を様々見て、楽しそうに笑う。

 ころころと変わる表情から、楽しんでいることが分かる。




 フーちゃんが楽しそうにしているだけで、私はただただ嬉しい。こうやってユーシュの上に二人で乗るのが当たり前というか、よくあることになれればいいってずっと思っていた。

 フーちゃんが見つからなかった間、いつかフーちゃんと一緒にこうして居たいとずっと考えていた。

 だからフーちゃんを見ながら、にこにこしてしまう。





『ユーフィレエ、嬉しそう。ねぇ、もっとスピード出したら駄目?』

「嬉しいよ。あと、スピード出すのは駄目だよ。フーちゃんがびっくりしちゃうでしょう?」



 ユーシュの言葉に私はそう答える。

 フーちゃんは私がユーシュと話しているのを聞いて、声をかけてくる。




「えっと、私はもっとスピード出してもらっていいよ?」

「本当に大丈夫?」

「うん。だってどれだけ素早くても、ユーちゃんが居れば大丈夫でしょう?」



 そんな可愛いことをフーちゃんが言ってくれる。

 私はそんな嬉しいフーちゃんの言葉に頷いた。




「じゃあ、少しスピードあげてもらうね? フーちゃん、私に捕まってて」

「うん」



 フーちゃんがそう言って頷いてくれたので、ユーシュに指示を出す。そうすれば、ユーシュははしゃいだようにスピードをあげはじめた。

 私のユーシュは、素早いスピードで飛び回ることが好きだ。とはいっても私だけの時よりは遠慮してくれている。ユーシュが本気を出して飛んだらこんなものじゃすまないもの。




 とはいえ、フーちゃんからしてみれば驚くほどのスピードなのだろう。

 私の体にぎゅっと身を寄せていて、驚きの声をちょくちょくあげている。



「は、速いね。なんだか、下の景色がゆっくり見れない感じ。でも、楽しいかも」

「ふふっ、楽しんでくれているのならよかった。ユーシュはね、こうやって飛び回るのが大好きなの。私もユーシュに乗るのが好きだから、よくこうやって散歩をしているの」



 私もユーシュもこうやって散歩をするのが好きだ。

 ユーシュの上から見下ろす光景が好きだし、ユーシュが楽しそうにしているのを見るのも好き。ユーシュと一緒に色んな場所へ向かうのが楽しくて、私はユーシュのことを家族のように思っている。



「そうなんだ。私も、こうやって乗せてもらうの好きかも」

「なら、これからも幾らでも乗せてあげるね」




 私がそう言って笑えば、フーちゃんも笑ってくれた。



 しばらくそうやって少しスピードをあげたユーシュに乗りながら、下を見下ろしていると……、



「あ、フーちゃん、ちょっとあそこ向かうね」



 私は魔物に襲われている人たちを見かけた。



 そういうのを見かけたら、放っておくわけにはいかない。そういうわけでフーちゃんに一言声をかけて、ユーシュにそのままその場に下降してもらった。


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