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13/20

13.空の上から領地を見る ①

「フーちゃん、おはよう!!」




 翌日、私は眠っているフーちゃんを起こしに向かった。すやすやとベッドの上で眠っているフーちゃんを見ていると、笑みがこぼれてくる。

 暑かったのか、寝相なのか、フーちゃんは布団を投げ出してしまっていた。




 ベッドの横に屈んで、フーちゃんの顔をじーっと見る。

 可愛いなぁと見ているだけで嬉しくなる。なんだろう、双子で、顔はそっくりなはずなのにフーちゃんの方が何倍も可愛く感じる。



「フーちゃん。フーちゃん……」



 私が何度も何度も声をかけると、フーちゃんの瞳が開く。




「ん……」

「おはよう。フーちゃん」

「あ、おはよう。ユーちゃん」



 起き上がったフーちゃんは、まだまだ眠たそうだ。

 なんだろう、私はこうやってフーちゃんが動いているだけでもただただ嬉しい。




「フーちゃん、起きた?」

「うん……」



 まだ眠たそうにしながら、フーちゃんはベッドから降りて歩き出す。




「朝食の準備出来ているからね」

「うん。……ユーちゃんは、朝から元気だね」

「早めに起きて、素振りしてたから」



 私がそう言ったらフーちゃんは驚いた顔をした。



 私は休暇をもらっているわけだけど、だからといって怠けるわけにはいかない。私は現役の竜騎士だもの。体を動かして、何かあった時のために整えておくことは重要なの。

 いざという時に使い物にならないとなると困るから。

 それに私は体を動かすことがとても好きだもの。時間さえあれば鍛錬をしている気がする。




「ユーちゃんは、いつも朝、体を動かしているの?」

「ええ」

「なら、私も少し早く起きて、ユーちゃんが素振りしているのとか見ようかな」




 フーちゃんも私と一緒に過ごす時間を沢山作りたいとそう思ってくれているのかな? とそう思うと嬉しいよね。

 そのまま私たちは食堂で朝食を食べた後、お母様たちに「出かけてくる」と口にしてフーちゃんと一緒に屋敷の庭へと向かった。

 ユーシュの元へと近づく。

 昨日のうちに、フーちゃんを乗せる予定だとは伝えてある。まだ眠たそうにしているユーシュに私は声をかける。




「ユーシュ」




 私がユーシュの名を呼んで近づくと、ユーシュは瞳を開ける。薄緑色の瞳がじっと、私の方を見ている。

 今日もユーシュは可愛いなと、思わず笑みがこぼれる。



「おはよう。調子はどう?」



 私がそう言って声をかけると、ユーシュは『元気だよ』と思念を送ってくる。



 私の方に頭を差し出してくるユーシュを撫でまわす。相変わらず撫で心地がよくて、いつまでも撫でておきたくなる。こうやって愛情表現をすることはとても大事なことだ。

 竜騎士と呼ばれる人たちの中では、竜を大切にしない者も過去にはいたらしい。そういう人たちは後々大変なことになっていたらしいというのは記録として残っている。基本的には竜とは心を通わせた方がずっといい。私は竜が好きで、ユーシュ自身のことも大好き。

 私にとってたった一人の愛竜だから、ユーシュは特別な存在なのだ。




「ユーシュ、今日は昨日言ったみたいに私とフーちゃんを乗せて飛んでほしいの」



 私がそう言ったらユーシュは了承するかのように鳴き声をあげる。



「前も思ったけれど……、ユーちゃんの竜は本当に大きいね」



 そう言いながらまじまじとユーシュのことを見るフーちゃん。

 フーちゃんにとっては、これだけ大きな竜はまだまだ見慣れないのだろう。



「私のユーシュはかっこいいでしょ? 私と一緒にずっと戦って来てくれた、大事な相棒なの」



 私がそう言ったら、ユーシュは同意するように嬉しそうにしている。

 体はとても大きいのに、ユーシュはこういう所が可愛い。



「いいなぁ。そういう関係、凄く素敵だと思う」



 フーちゃんにそう言われて、私まで嬉しくなった。



 フーちゃんは私の愛竜だからこそ、ユーシュのことを怖がらないでいてくれているのだろうなと思う。

 ただ野生の竜は人食いを行う存在もいるから、竜全体を恐れないのは問題かも。だからそのあたりはフーちゃんにちゃんと説明をしないといけないわ。

 基本的に野生の竜に遭遇することはフーちゃんはないかもしれないけれど、念のため伝えておくことは大事だもの。

 でもまぁ、そういう注意は後でにしましょう。




「フーちゃん、行こう」

「うん」



 私は軽くユーシュの上へと飛び乗り、そしてフーちゃんのことをユーシュの上へと乗せる。



「じゃあ、ユーシュ。領地内を見て回りたいから、飛んで回ってくれる?」



 私がそう言って笑えば、ユーシュがまた鳴き声を上げる。

 それからユーシュはその場から高く飛び上がった。フーちゃんは竜に乗るのは二度目なので、少し緊張した様子だった。



「大丈夫だよ。フーちゃんの安全は私が保証するから」



 私がそう言えば、フーちゃんは笑ってくれた。



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