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第1話 眠り姫との出逢わない出会い - 5

 

 ところで今日というのは、入学式から約二週間後と余日が経った平日のことである。


 中学の頃は憧れだった〝古典〟と呼ばれる現代に生きる俺たちにとっては意味不明な授業や、同じく〝リーディング〟や〝ライティング〟と言ったこれまた日本に生きる人間にとっては特に必要としたくない英語の授業開きなども、それはもう過去の話となってしまった。


 もともと中学では可もなく不可もなくを体現するような成績を維持していた俺は、高校に入っても変わらず〝可もなく不可もなく〟な理解度を貫く予定でいたわけで、それはそれで授業中にもまぁまぁな余裕があったりなかったりしている。


 牝牛の寝言のような授業を軽く聞き流したとしても、テスト前に詰め込んでおけば何とかなるだろう。


 それくらいは楽観的でいさせてくれよ畜生め。



 そんなわけで、俺は暇つぶしがてらにちょこちょこ隣を向いてしまっているのである。



 ちなみに俺の座席は、最窓際より一つ廊下側の、一番後ろに位置している。


 おまけに俺の前に鎮座しているヤツが柔道部の期待の新星とくれば、その背中の広さがよそ見の絶妙な壁ともなってくれているのさ。


 ゆえに教師からの注意もあまり受けぬまま、言わば視覚の死角の範疇で自由に過ごせているわけである。


 更に言ってしまえばそんな好条件が揃っていたおかげで、孤高の眠り姫の「見るな。寝にくい」という生の声を聞くことが出来たとも言えるのだ。


 一応コレはお空の遥か上にいるかしれない神様に感謝の祈りを飛ばしておくべきかもしれんな。


 どうも天の神様、ありがとうさん。

 おかげで貴重な体験ができました。


 アーメン。南無南無。アジマリカン。

 


 視線の先を変えて、窓の外をちらりと見やってみる。

 広々とした夕焼け空がじんわりと広がっている。


 なかなかに綺麗だろ? 悩みも不安もない証拠さ。

 時間を持て余している結果だとも言えるのだが。



 さてさて。神様やら運命やらの有無を信じるか否かはこの際置いといて、だ。


 たった今授業に集中しきれていない俺ではあるが、それは眠り姫様も同じなはずだ。


 机と机、通路を挟んで反対側で居眠りなさる彼女ことポニテ色白の眠り姫は、果たして勉強は出来るほうなのだろうか。


 黒板の前に立っている教師の話などは聞かずに、まして机に頬を貼り付け続けているところを見ればとてもそうは思えないのだが。


 この問いの答えはおろか、答えに導いてくれそうな奴さえも俺の知り合いにはいないわけで、この悩みのタネが消え失せることも発芽して花開くこともアリはしないだろうさ。


 考えない方がよっぽどマシということか。


 そうだよ俺、今は授業に集中するべきなんだ。


 ほーら見てみろ。老齢教師が震えながら黒板にミミズのような字を書いているではないか。


 消される前に一応は書き写しておこうぜ。

 テスト前の俺に泣き喚かれても困る。


 危機管理能力は人並みにあるつもりでな。

 

 そうして適当にノートを埋めて、適当に蛍光ペンを引く作業を繰り返すうちに、授業終了のチャイムが鳴り響いてしまった。


 ほーれ見てみろ。やればできるじゃないか暇つぶし。



 その後のHRも滞りなく終わり、早くも自宅までの帰路につくことになったわけであり、その他のエピソードはこれと言って特になかった。


 もちろん話を急ぐつもりも微塵もないのだが、至って普通な男子高校生の俺にフォーカスを当てることほどつまらん話題はなかろうよ。



 目の保養になるわけもなし。

 まして暇つぶしになるわけもなし。



 なるほど、それにしても。


 「見るな、寝にくい」……か。


 いつ頃、俺の視線に気付いたのだろうか。

 まさか背中ならぬ横顔に目が付いているとでも?


 はははは、まさか、そんなそんな。

 彼女に限って嘘寝をこいているわけでもあるまいし。



 ……夜も謎も疑念も深まるばかりだな。





 新たなイベントが起きたのはその翌日のことである。



 


次話から実質の本編開始となります!

ブクマと評価のお忘れはございませんか!?

(*´v`*)


それでは引き続き

本作品をお楽しみくださいませっ!

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