第6話 俺とテストとコーヒー厨 - 4
――ほい、回想終わりっと。
とまぁこんな感じの会話をつい最近にしていたというわけだ。
俺の記憶にも新しい。
思い返せば案外いろいろと出てくるものである。
テストの点数は合計で760点。
よし、改めて再認識できたな。
そろそろ現実の思考へと戻っておこうか。
ここはマイHRを出てすぐの廊下であり、今は壁に貼られている順位表を確認しようと、その場へ向かっている真っ最中なのだが。
「おっ、アレだな」
順位表の発見とほぼ同時のこと。
先ほどまではあまり気になっていなかったが、ふと気が付けば廊下のとある一点に、詳しく言えば順位表の先頭辺りに、それなりの人だかりができていたのである。
あの人混みに首を突っ込むのは正直あまり好ましくはないのだが、そのまま待っておいても人の数が減る気配はない。
おまけにこのまま見て見ぬふりをして放っておけるほど、俺の好奇心やら野次馬根性やらも一筋縄でもないわけで。
まるで背水の陣を自ら敷いた特攻兵のような気持ちを胸に抱きつつ、意を決して人だかりの中にズイズイと潜り込んでみたところ。
もちろん順位表の内容もそうだが、先ほどは遠目に見えていただけだったが、今は人だかりの中の生徒連中の顔が、よりはっきりとよく見えるようになったわけだ。
驚きと好奇が半々ずつ、といったところだろうか。
皆一様に順位表と己らの顔を見比べては、どこか〝嘘だあり得ない〟とでも言いたげな疑心の色が見え隠させていたのである。
何だ、いったいどうしたというのだ。
テストの結果程度で何故にそんな顔ができる。
どうやら周囲の目は順位一桁代の辺りに集中しているらしい。
高校生になってから初っ端のテストで、自分の順位よりも余程そちらのほうが気になるらしい。
だが、だいたい予想はできてたはずだろ?
ほとんどメンツが変わってないわけだからさ。
とは言いつつも、そういう俺もキチンと内容を見てみないことには何とも言えないんだけどさ。
廊下というかなり横長な空間に掲示するためか、どうやら一位から最下位までが縦書きでずらーっと列記されているらしい。
えーっと、どれどれ……?
……4 3 2 1
……浅 新 湊 柳
……井 澤 川 有
……義 正 葵 姫
……明 人
……六 六 六 七
……八 八 九 五
……四 九 三 一
……点 点 点 点
ほほう、なるほど――イヤイヤちょっと待て。
縦書きだとイマイチ分かりにくいな。
スマートに横書きに脳内変換してみるぞ。
クドいようだが合計点数を再確認しておこう。
今回のテストのMAXは760点なのである。
どうかこの三桁の数字を頭に刻み込んでおいていただきたい。
1位 柳有姫 751点
2位 湊川葵 693点
3位 腐れ縁 689点
4位 浅井義明 684点
うん? いや、何だって?
3位の名前が変になっている、だって?
待て待て、今大事なのはそこじゃないだろう。
よってサラリと割愛させていただくとして、だ。
改めて状況の整理をさせてもらおうか。
この上位勢の結果から推察してみるに、今回のテストではせいぜい取れて600代の後半が実質の上限値という感じだったのであろう。
俺からしても至極真っ当な数字だと思われる。
そこそこに難しかったしな。
別にこの高校は一流の進学校でも何でもないゆえに、700点弱も取れていればキチンと授業を理解している優等生だと胸を張って闊歩できるだろうよ。
決して不真面目ではないが、かといって大して真面目でもない俺にだって容易に分かるさ。
いや、だけどな……!
一位の獲得点数、さすがにバグってないか?
760点中、751点。
これはつまり、ほとんどの教科は満点を取っているということに他ならないだろう。
むしろどの教科を取りこぼしたんだと問いただしてみても構わないレベルかもしれん。
何より、一位の名前に驚愕してしまったわけだ。
断トツ、トップオブトップ、最多点数獲得王。
誉れある先頭の位置にあの〝柳有姫〟の名が刻まれていたのである。
いやはやどこからツッコミを入れたらいいんだよマジで……。
姫は、普段の授業はほとんど寝ながら聞き流しているはずなのに。
どうしてこんな点数が取れるというのだろうか。
ついこの間に、せいぜい眠い目を擦りながら気楽に頑張ってみるよとか何とか言ってなかったか!?
俺の返した『姫も頑張れよ』というあの軽い一言が、悪い意味で脳裏に鮮明に蘇ってきてしまう。
畜生め。動悸と立ちくらみが襲ってきたぜ。
とても落ち着いていられるような状況じゃない。
ここに集まる連中の気持ちも分かった気がするよ。
こうなりゃせいぜい中の微上か微下程度の俺のテストの順位など、今はもう心底どうでもよくなっている。
それこそいつでも確認できるだろうしな。
とにかく今は姫に直接問いかけてみることを最優先にすべきだろう。
このテスト結果について、つい先ほどに彼女が『だいたい分かってるから』などとつまらなそうに呟いていたはずだ。
何か秘密か理由を隠しているに違いない。
……だが、この俺に話してくれるのだろうか。
ええい!
迷うくらいなら足を動かせ、俺よ。
お前はそんなに弱気なキャラだったか!?




