表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

35/63

第4話 新キャラに缶コーヒー要素は必要ない - 8

 

 苦し紛れのポーカーフェイスを試みるより先に。

 まず心配すべきは姫の身体のほうだろうよ、俺。



「えっと、大丈夫か?」


「だ……大丈夫さ、問題はない」


 いや、それはダメなヤツの発言だったと思うんだが。

 フラグと言い直してやってもいい。


 おそらくは突然に美佳から素っ頓狂なことを言われて気が動転してしまっただけであろうが、さすがは孤高の眠り姫サマである。


 二、三回咳払いを繰り返したのちに、スンとまたいつもの平然さを取り戻しなさった。


 未だほんのり顔が赤いのは急激に息切れをしてしまったからなのだろう。


 まったくご愁傷様なことである。


 しゃーない。

 姫の代わりに答えてやるとするか。



「別に付き合ってないからな。俺と姫はただの友人だよ。しかもわりと最近知り合ったばかりのな。ある意味では出来立てほやほやの白ご飯みたいな関係だ。そうだろ?」


「あ、うん。そうだね。概ねヨウの言うとおりだと思うよ。そうさ、ただの……ただの友人だ」


 ほら、すかさず無表情でフォローしてくれたあたり、すっかり持ち直しているらしい。


 何事もなかったかのような澄まし顔が実に美人だ。

 いつも以上に大人びて見えるぜ。


 さすがと賛辞を述べさせていただきたい。


 見てみろ。華麗な連携プレイを前に、電波ツインも納得の顔を見せ始めてくれたじゃないか。


 このまま黙ってくれるのが一番ありがたいのだが、どうやらそういうわけにもいかないらしい。


 ポンと小気味よく平手を打った後、美佳はまるで金魚のようにぱくぱくと口を開いてから、すぐに俺たちに見せつけるように仰々しくため息を吐いたのである。


 一覧の動作に無駄がありすぎる。

 そして清々しいほどのそのドヤ顔はなんだ。


 安堵が二割、ニヤリなシタリ顔が残りの八割。

 不可解を通り越して正直気色が悪い。



「ふぅっふーん、なぁんだです。変に勘繰っちゃって損しちゃいましたよー。それじゃあ美佳にもまだまだチャンスがあるってことですよねぇ?」


「いや、そういう話じゃないと思うんだが」


「こまかいことは気にしちゃダメですよ」


 彼女としてはビシィッとポーズを決めたつもりなのだろうが、対してハマってもいないから驚きだ。


 俺はつけ入る隙を与えたつもりはないからな。


 っていうか聞いているのか、おい。

 そもそもチャンスってなんだ。熱いのか。



「……とはいえ、姫さんは満更でもなさそうなのが手強いですね。おまけに先輩は鈍感タイプときましたか。ふむふむ。なるほどなるほど。これは中々に手こずりそうな予感がプンプンしてますですよ」


「ん? 何か言ったか?」


「ほぉらーそういうとこーです」


 最後のほうに関してはやけにボソボソと喋っていたせいで聞き取れなかったんだが。


 ただ、コイツの表情を見る感じ、別にどうでもよさそうな感じとも見受けられてしまった。


 あくまでこちらをからかっているだけのような。

 完全な本心ともまた微妙に異なっていそうな。


 ゆえに特に深掘りはしなくともよいだろう。


 とりあえず視線と首の動きで疑問の意を示してみたところ。



「確かに小声で色々と呟きましたけど、別に大したことは言ってないつもりです。どうかご寛大な御心で適当に聞き流していただければと」


「おっけ。そういうだろうと思ってたよ」


「とはいえ少しだけで構いませんので、先輩。お時間を頂戴してもよろしいですか? ちょこ〜っとだけ姫さんとお話しておきたいことがありまして」


「……うん? 私にかい? ヨウではなく?」


「はいです」


 姫の問いかけにコクリと頷きを返してから、テーブルに身を乗り出すようにして姫のほうに身体を寄せ始めた栗金電波っ娘である。


 そして時を同じく不思議そうに首を上げた姫さんである。


 このタイミングでいったい何の話題をぶつけ合うというのだろうか。


 ただし黙っていろと言われたので素直に従っておくことにするが。


 この際だ。椅子も一個分引いておいてやろう。

 やけに胸を張っていることだけが気がかりである。


 スレンダーかつ小柄な体型ながら、あまり質量の芳しくなさそうな胸をグイと張って牽制していらっしゃる。


 きっとまだまだ成長期の真っ只中なのだろう。


 高校生の今は上半身の盛りが少なかろうとも、大人になるにつれていずれは納得のいくモノが手に入るだろうよ。


 あえて何も言わないけれども。


 紳士とは無闇矢鱈に口を開かない者のことを表すのさ。


 物思いに耽りつつも、ただもの静かに拝聴させていただいたところ。



「ぅおっほんッ。姫さんや。どうかお一つお喜びくださいな。たった今美佳はアナタを永遠のライバルに認定してさしあげましたのです!」


「な、何だって? ライバル?」


 姫が聞き返してしまったのも無理はないだろう。


 横で聞いているだけの俺もまったく同じ状況なんだからさ。さすがに説明不足がすぎると思う。


 誰か詳細な解説を加えていただきたい。


 こちらの気持ちを知ってか知らずか、美佳が意気揚々とした様子で続ける。



「そして同じく、これは宣戦布告なんですからねっ! この場を借りて牽制させてもらいます。先輩は誰にも渡しませんからそのおつもりで!」


「……ふむ……ああ、なるほどね。キミが何を言いたいかについてはだいたい理解したよ。ただし、それを踏まえた上でも今はまだ受けて立つとは言えそうにないかな」


「んななっ!? 美佳はハナから敵じゃないと仰るおつもりですか!?」


「はははっ。いやいや、まさかまさか」



 いやいやいや、俺のほうこそ待て待て、だ。

 そこ、いったい何の話をしていらっしゃる。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ