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第1話 眠り姫との出逢わない出会い - 1

 



一一また、か。



 ふと気が付けば俺はいつも隣を見てしまっていた。

 無意識ってのは実に怖いものである。


 暖かくなりつつある春真っ盛りの中の昼下がり。

 簡潔に言い表せば午後一発目の現代国語の授業中。


 これは適度に腹の満たされた食後だからだろうか。



一一いや、違う。



 ならばこの穏やかな陽気からくる無償の心地良さのせいか。



一一いや、別にそういうわけでもない。



 自問自答に明け暮れるも、己が返せる言葉はただ一つ。


 この瞳に映る、睡眠中の女の子(・・・)にただ見惚れてしまっているだけなのだ、と。



 あえて少しだけ情報を追加させていただこう。


 彼女は〝孤高の眠り姫〟と評されるただのクラスメートである。


 そのあだ名の示すとおり、いつでもどこでも俺の目には眠っている姿しか映っていないのである。


 常に難解な数学然り、よく聞き取れない英語然り。

 まして呪文のような世界史なんかは言わずもがな。


 この俺でさえ頬を叩いて必死に授業に食らいついているというのに、件の彼女はすやスヤリと眠り呆けていらっしゃるらしく。


 これで叱られないから尚のこと謎なのである。


 悔しさが半分、羨ましさがもう半分。

 ついでに妬ましさもほんのり付け添えさせていただきたい。


 俺の中に微かに記憶に残っている活動中の彼女と言えば、体育の時間にいかにも睡魔と戦うように目を擦りながら、最後尾のあたりをチンタラと走っている姿くらいだろうか。


 とにもかくにも俺の中の彼女は、それほどまでにも常に寝ているという印象しか他にない、まさに寝起きの淡夢のような薄ーい存在であるはずなのだが。


 だとしたら。いや、だとしても。



 どうして俺は一一



 そんな彼女の姿に、毎日のように見惚れてしまっているのだろうか。



 

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