サラ再び
「で、カイル達には来るように伝えたのアカネ?」
「うん、お兄ちゃんの治療が終わったあとに来るように魔法で伝えておいたよ。お兄ちゃんと旅行なんて絶対行くしかないよね!」
アカネは満面の笑みで俺の腕をぎゅっと抱きしめてくる。
大統領親書の返答に関して決める為にみんなに集まってもらう段階であって、そもそも旅行ではないんだが……う、考えると、胃が痛むぜ。
すると、ドアが開く音が聞こえてきた。
「……パシーがいるから遅れると思ってたけど、いが」
カヤの顔色が変わると同時に、アカネも真剣な顔になり俺を庇うように前に立つ。
なんだ……もしかして、オオカワか!? それともジャキ!?
緊張した面持ちの二人を余所に、しんきゅういんのドアがゆっくり開いた。
「え!? サラ!?」
サラは俺の顔を見るとニコリと笑って一礼してきた。
敵意は無さそうで、ドアの前に立ちメモ帳に何かを書いている。
その間もカヤとアカネは緊張を解かずに臨戦態勢のような恰好をしている。
いつもの二人なら余裕をもって対応しているだろうが、カヤは魔力をジャキに奪われているし、アカネも激戦の疲労で魔力が相当落ちている。ジャキとの戦いは魔法使いにとって相性が悪いのだろう。
そんな状態の二人なので噂の魔刀使いへの警戒はギリギリの状態のように見える。
「アンタ! どういうつもりよ!?」
「お、お兄ちゃんは、ぼ、ボクが守る!」
二人の敵意にサラは驚くと、ポニーテールを左右に揺らしながらアワアワしてメモ帳をこちらに向けてきた。
……何かするつもりならわざわざ正面から来ないよな。
俺は立ち上がり、アカネに「大丈夫」と言ってから「武光! 危ないわよ!」との声を無視して、メモ帳を受け取る。
『昨日はありがとうございました。本当は、昨日の内にフリーライトへ帰ろうと思っていたのですが……もう一度、杉山さまとお話したくて来てしまいました。噂で聞きつけました杉山さまの鍼灸術というものにも大変興味がありましたので、勝手なお願いですが拝見させていただければとの思いです』
うーん、やっぱりみんなが言うようなテロリストには到底思えない。
……だけど、関わり合いをこれ以上深めてしまえば……エレメントアーミーとの関係が気になる所だ。
『わざわざ隣国から船旅でやってきた『女子』を関係無いと切り捨てるのかい?』
ピリスめ、一体どういうつもりなんだ、まったく。
「アカネ、彼女……サラ・ヴァーディさんは耳が聞こえないんだ。その代わりに読唇術で言葉を読み取れるけど、俺の言葉は分からないみたいだから通訳してくれる?」
俺の言葉にアカネはキョトンとした顔でサラと俺を交互に見比べると、ぢと目になった。
嫌な予感しかない。




