大統領からの手紙
「えー、もぐもぐ、(公社)ボッカイ魔法協会 カヤ・シドウ会長……この度フリーライト合衆国建国記念日において……魔法セミナーを? ……記念講演のご依頼!? ……フリーライト合衆国大統領ジョン・ファクト!!?? ……んぐぅ!!!」
「はい、水、水。飲み込んでから読めばいいじゃない」
受け取ったコップの水を喉に流し込む。ふぅ、俺が慌てたよ。
しかし、これって、隣国の大統領から建国記念日に記念講演を(公社)に依頼してきたってことか? それも魔法セミナーを?
「……流石に、タイミング良すぎよ。セミナーに来ていた魔刀使いとフリーライト大統領の手紙……フリーライトで何か起きているわね」
カヤはそう言いながら、俺が食べているシチューのジャガイモにフォークを突き立てむしゃむしゃ食べだす。
「……確か、フリーライト合衆国は魔術使いの国だったよな? そして、魔術使いを忌み嫌う魔法剣士と魔剣使いは、フリーライトではテロリスト扱いされている」
フリーライト魔法剣士協会という名称は魔法使いだけが認めているだけで、魔術使いやエレメントマスターは攻撃的な集団である魔法剣士協会を業界団体ではなくテロ組織として認識しているらしい。
「魔法剣士や魔剣使いは古からイセコスの守護者として魔物の脅威から人々を守ってきた。私達、魔法使いも一緒に戦ってきたけど、彼らほど戦闘向きではないの。私たちは魔物を倒し、人々を守護するため魔法を行使するのではなく、ケイラスの調和を一番に考える、でも、彼らはそうじゃなかった……弱き人々を守ってこそのケイラスの調和だと考え戦い続けた。結果は魔物の脅威を著しく下げ、人の繁栄が始まった」
「それは正しかったのでは?」
「アンタの世界はどうなの? 人が繫栄することで調和が保たれた?」
答えに窮した。
地球でも人類は自然や動物の脅威から解放され、栄華を極めている。
ただ、東洋医学の観点から言えば、それがバランスの取れている生き方か? と問われれば……肯定はできない。
「文明は著しく発達し、魔法やケイラスの解明が始まった。そして、魔術紋が作られ、ケイラスに選ばれなくとも魔法に似た力、魔術が生まれ、魔術使いが現れた。そして、エレメントの研究が始まりエレメントマスターがこの世界の主導権を握り、多くのエレメント系職による支配システムを構築していった……もちろん、その世界には魔法剣士と魔剣使いの居場所は無かったの」
「彼らが作りあげた平和が、彼らの居場所を奪うなんて皮肉だな」
「もちろん、彼らも黙ってはいなかった。だから、戦争を起こした――東の大陸で」
「え!? それって魔法使いとエレメントマスターによって引き起こされた災厄のこと?」
戦いか事故かは定かでは無いが、何らかの事象が起き、多くの魔法使いが消え、大陸は魔物の巣窟になっていると聞いた。
魔人ジャキが絡んでいるのであろう、ならば、その日は陰陽転化が起きたというこか。
引き金は魔法剣士だった?
「これは、あのクソジジイ会長に聞いた話だけど、魔法使いとエレメントマスターは魔法剣士の暴走を防ぐために何かの対策をして失敗した、と言っていたわ。いつもの退屈な昔話とあの頃は聞き流していたけど……本当だったとはね。アタシ、そっくりのブスに魔力を奪われ逃げられているから……アタシがブスって言ってるんじゃなく、アイツがブスって意味よ?」
魔法使いとエレメントマスターの間にあった事象は対魔法剣士への計画。
カヤはボッカイの戦い以降、魔法の力が弱まってしまっていた。ジャキによってカヤの力が奪われた事による可能性がある以上、ジャキは魔法使いから生まれた……まさか、東の大陸で行われていた計画は、ジャキを意図的に生み出そうとしていたのか?
いや、これ以上考えまい。(公社)には荷が重すぎる話だ。




