封筒
「ん、どうしたの? もしかしてピリスとケンカしたとか? ねぇねぇ、なんでなんで?」
ウキウキした顔で聞いてくる。
ケンカはしているつもりはないが、スッキリした別れとは言い辛い。
「ケンカになる前に仕事があるそうで帰ったよ」
食欲をそそる匂いに誘われ、目の前のクリームシチューを一口食べる。
はぁ、美味いし落ち着くなぁ、カヤの味は。
「……仕事ねぇ。それって、あの魔剣使いの娘絡みとか?」
カヤも知っているのかよ。というか、後で聞いたらみんな知っていたみたいだけど、そういうことは先に教えて欲しい。
「そうだよ。うっかり俺が魔刀使いと言ったら血相変えて帰っていったよ」
一番、血相変えていたのはカイルだけどね。曰く「魔刀使いというのは、フリーライト魔法剣士協会の会長代行と言われておりますが誰もその姿は見たものはいないのです」だそうだ。
それに乗っかってンドルは青い顔して「オレっちも聞いた事あるぜ……1000年は生きている伝説の老人で現れた先では……死屍累々の丘が築かれるんですぜ……」だそうで。
アカネも「眼が4つあって、あらゆるモノを見通す力と山をも切り裂く爪を持った大男なんだよ!」とはね。
パシーはそれを聞いて爆笑しているだけだったが。
少なくとも魔刀使い、サラ・ヴァーディは俺達と変わらない聾唖の美少女だったのが真相だ。
信じられないような顔をしていたが、得てして真実とはそんなものだ。
……ただ、ウダルが銃口を向けた時に発した殺気の件は伏せておいた。
(公社)を厄介ごとに巻き込むつもりはない。
次のイベントなどに現れたら参加を丁重にお断りすればいいのだ。
「……なるほどね」
えー!! と感嘆符だらけの言葉が飛び出してくると思ったが、カヤは何かを思案するよう腕を組んだ。
「魔刀使いと聞いて、驚かないんだな?」」
返答がくるまで、目の前の良い香りがする料理を堪能する。
いい予感がしないから、今のうちに少しでも食べてしまおう。
カヤは立ち上がると手紙置きから封筒を持って俺に差し出してきた。
ナイフとフォークを置いて封筒を開ける。




