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ボッカイの街

 これは、ドラファンの街並みだわ」 

 某国民的ゲームを例えに、レンガの壁と木のドアで出来た家々が立ち並ぶ、ボッカイの街を見渡した。

 キャンプした場所から数時間歩き続けて着いた街、ボッカイ。

 多くの人々が行き交い活気にあふれている。

 まるで原宿のように賑やかだ。ただ、原宿と違うのは個性的なファッションな人達ではなく、頭に耳が生えている猫のような人間や、テカテカ光る鱗のトカゲ人間、亜人と呼ばれる人々も交じっていること。

 国産というより海外産のゲームの世界みたいだ。


「ひと昔前は、魔法使い達の遺跡しかない忘れられた村だったが、今はコス市随一の繁華街へと変貌したのだよ」


 太陽の下、多くの人々がいる中でもピリスの存在は一際、目立っている。

 グラマラスな美人でもあるが、それは彼女がこの世界イセコスにある、シャギーリ共和国の軍隊であるエレメントアーミーの特務大尉でもあるからだろう。 

 昨夜は日が出始めるまで多くの事を教えてもらったが、正直眠すぎて全て覚えているかはあやしい。ただ、この国はエレメントマスターあってこその繁栄を築き、エレメントギアの進歩によって生活水準を上げ、魔物の脅威を下げたそうだ。本来、あのエビルベアの存在も異例のことらしい。


「さて、もう少しキミとの時間を楽しみたいのだが、私にも仕事があるのでね」

「え、マジで? ここでお別れ?」

「そう、マジで。と言っても、路頭に置き去りにというわけにはいかないから、ある場所を尋ねると良い」

「それは異世界の迷子センターみたいな?」

「迷子――言い得て妙なことを言う! キミはやはり面白いな!」


 子供のようにはしゃぎながら、背中をバシバシ叩いてくる。

 わりかし、痛い。


「まぁ、アイツ等が迷子ともいえるか、ケイラスに翻弄されるイセコスの迷子たち」

「ケイラス?」

「何でもないさ。尋ねる場所はボッカイ魔法協会にいる、えーっとどっちだ、アカネ……アカネ・ミソノだったかな」


 もろ和名なのだが。


「それって、もしかして俺の世界の」

「いや、イセコスの民だ。考え方は異世界かもしれんな」


 イジワルする前の子供のように口角を上げた。

 この顔は不安でしかない。


「オブザーバーもあるから私が居なくても言葉は通じる、きっと親切にしてくれるさ、魔法使い達なら」

「え、魔法使いって、そういえば魔法協会とか言いました!?」

「はいこれ」


 右手に収まる程度の麻袋を渡してきた。ズシリとした感触。


「当分は生活に困らない程度の金貨だ。大事に使えよ」

「あ、ありがとう、でも、魔法使いって」


 俺の質問を遮って


「お別れの前に一つ……キミのお陰で私はキミと同じくもう一度、生きる道が得られたようだ。感謝している」 


 ピリスが急に神妙な顔つきになり、


「キミは、この世界に大きな一石を投じることになる……いや、なった」


 いきなり変な事を言いだした。 

 昨日、光の粒子が見えたとか言ったから中二病だと思われているのか?


「感謝しているなら、ピリスが住んでいる街の方がありがたいんだが」


 ピリスは神妙な顔つきから、わずかにほほ笑んだ。


「キミを連れて行きたいが……キミは、魔法使いと出会うべきだよ、スギヤマ」

「それはどういう?」 


 ピリスは何も言わず、ターンと高く飛び上がり街の城壁を越えて去って行った。

 最後までマイペースだったな。でも、色々親切にしてくれたのは間違いない。

 城壁の向こうへと届くように頭を下げる。


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