魔法協会セミナー 三時間前
「それじゃ、今日の魔法協会セミナーの段取りをカイルさんからお願いします」
「承りました、杉山副会長。最初の講座は、ミソノさまによる、えーっ『魔術紋の歴史と使い方(基礎編)』でよろしいでしょうか?」
「……はい、人前でお話するのは得意じゃないですけど、お兄ちゃんが居てくれるなら」
アカネが円卓テーブルの上で手をもじもじさせながら、不安げな顔でコチラを見てくる。
俺は力強く頷く。
資料を読ませてもらったが、流石、座学成績ナンバーワンだけあって要所を抑えつつ分かりやすい解説で、俺も魔術紋使えるんじゃないか? と思えるほどの内容だ。
アカネの表情がパーッと明るくなる。
足りないのは自信、少しずつ成功体験を重ねていけばきっと名講師になれるはず。
「ミソノさまの次は、パシーさまの『魔術経営2.0~魔術紋をアップデート~』で間違いはございませんか?」
「アグリー、マジカルパーソンが今求められているのは魔術紋のDX化ね。エレメンタルギアの普及が迫る中、生き残るための成長戦略が必須よぉ」
うふっとコチラに向けて胸の谷間を強調してくる、そういう意味のDX化なのか!
ギロリと二つの殺意も感じる。顔を上げるのはやめよう。
冗談は、さておいて、パシーはオッパイがスゴイ!! だけじゃなくて、魔術を用いての経営戦略が繊細かつ大胆で、この資料を用いて講座をしたらイセコスにおけるパイナップルコンピューターの創始者みたいなプレゼンになりそうで楽しみだ。
「そして僭越ながら私が三番手を務めさせていただきます、題名は『(公社)ボッカイ魔法協会入会のススメ』ですが、杉山副会長、こちらで問題無いですか?」
「ええ、オッケーです。カイルさんの人柄があふれるような優しい内容で、みんな興味を持ってくれると思いますよ!」
ニコリと笑顔を向けてくれるけど、カイルさんが相当、ストレスを貯め込んでいるのは、先週のサシ飲みで分かった。
こんなに紳士なカイルさんは酔うと喜怒哀楽全開の疲れている中間管理職まんまなのである。それにボッカイの戦い(あんなこと)があったのに、未だシャギーリ魔法協会の副会長を辞めていないのか、辞めさせてもらえないのか。
『入会しないという選択肢を選ぶとシドウさまがやってきます』なんて資料に毒を吐き出してしまっているが突っ込めないです。
「最後のオオトリはアタシね!」
「ええ、そうです。シドウ会長によるフィナーレでこの魔法協会セミナーが締められることになります」




