俺にできること
「……かやちゃん……?」
アカネが倒れたカヤにすがりつく。
同時に、ピリスは蛇腹剣を手にジャキ目がけ飛ぶ。
「アラアラ、お姉さまハ、ずいぶん愛されていたのネ、こーんな怖い顔してアタシに襲い掛かってくる人がいるのダカラ」
蛇腹剣が不規則な動きでジャキに放たれる。
しかし、刃は届かず、ジャキの手から放たれる閃光によって蛇腹剣は焼き切られた。
ピリスはその光景にも微動だにせず、ジャキに掴みかかる。
カイゼルシュニットの赤いラインが禍々しい光で点滅しだした。
「抗癌モードスタンバイ……考えている暇は無い……が」
ピリスはこちらを振り向くと悲し気な表情を浮かべている。
頭が追い付かない。
何が起きている、ハッピーエンドじゃなかったのか?
止めろ、ピリス、止めてくれ。
「……アタシは心中とか趣味じゃないンデ」
ジャキの身体からイナズマが迸る。
ピリスは雷撃の中、声なき声をあげながら仰け反り、そのまま地面に落下した。
「先生ぇ!!」
地面に落ちてきたピリスをパシーが介抱する。
「ンドルさん! 杉山さまとアカネさまを連れて逃げるのです!」
「ど、どこに逃げるんですかい!?」
「ここから出来るだけど遠くに!! そしてエレメントアーミーに」
全てを言い切らない内に、ンドルとカイルの頭上にイナズマが降り注いだ。
「さぁテ、邪魔しそうナ、奴らは片付けたシ、あとはゆっくり【中庸の者】を葬り去るだけネ」
軽く肩慣らしをしたかのような仕草でこちらを見下ろしている。
カヤの方を見ると、アカネが懸命な蘇生魔法を施している。
ピリスの方は意識があるらしくパシーが魔術で傷を癒し、ンドルと、カイルも身体を起こそうともがいている。
どうすればいい? どうすれば守れる?
「ジャキ、お前の目的はなんだ?」
俺に直接戦闘能力は無い、今、出来る事は情報を引き出し、時間を稼ぐことだ。
「【中庸の者】なら分かるでシょ? この世界は既に陰が極まっているノ。陰陽転化を起こしケイラスを巡ラせ、全てを回帰させル。母なるケイラスに還ル、素晴らしい目的なのヨ」
もはや、疑う余地は無い。
イセコスは何かしらの事情で世界の均衡が崩れ、この世界のエネルギー源とも言えるケイラスは偏った方向に振り切れて、邪気が生まれた。
東洋医学で言うなら、陽が極限まで弱まり、陰が極限まで強さを増す。
夏至があるように冬至も起こる、地球でも世界はバランスを保つために天変地異を起こしている。
イセコスではそれが極端な方法になるということだ。
しかし、全てには因果が必ずあるはずだ。
ケイラスの均衡を崩しているのは……
「まズは、エレメントなル傲岸不遜が罷リ通る、このシャギーリヲ滅ぼス、エレメントマスターは永遠の円環ノ外デ滅ビよ」
――エレメントか。
エビルベアの残った死体、そこから取り出す魔石、それによって起動しているエレメントギア、そしてそれを用いて、イセコスを支配したエレメントマスター。




