カイゼルシュニット
「カヤ・シドウ。キミとは昔からソリが合わなかったね。けどね、キミの才能はそこの老人に利用される器などではないと感じていたよ。だからこうなる前にキミを切除するのではなく、キミを救うため色々考えていた……おかしいだろ、合理的に生きてきたこの私が魔法使いであるカヤ・シドウを助けたいなど……けど、私も出会ったから」
ピリスはチラッと俺の顔を見た。
「キミもスギヤマ・タケミツを好きになったのかい?」
五色のイナズマをまとった無数の瓦礫がピリスに襲い掛かった。
その挙動はカヤの怒りに呼応するかのように感情的だった
ピリスの居た場所に瓦礫が降り注ぎ土煙で覆われた。
「フハハハ、なんという破壊力か。この魔力では例えエレメントアーミーの俊英と言われようがひとたまりもあるまい」
瓦礫の衝撃だけではなく土煙から迸るイナズマを見れば素人の俺さえ恐ろしいものだと分かる。周囲の人達を守るためとは言えアカネを戦闘不能にした攻撃力だ。
「いたたたぁ……流石にコレがあっても防ぎ切れないか」
地面に刺さっていたジュラルミンケースを盾にピリスは立っていた。
しかし、無傷とは言えず額から血を流している。
「なんだと! バカな!? 今のカヤくんに壊せないものなどないはず……なんなのだ『それ』は!?」
オオカワの狼狽にピリスはニヤリと笑った。
『それ』と呼ばれたジュラルミン『ケース』の中に何かが入っているということか。
そういえばオブザーバーを貰った時にピリスのステータスに書いてあったな。
あれは、確か、
「カイゼルシュニットか!」
俺の発言に周囲の人達は驚きの表情を浮かべると同時に、ピリスがこちらをぢとーっとした目で睨む。
「キミって奴わあぁぁ! どこまで人の個人情報を盗み見る気だ! 私のスリーサイズだけではなく、まだ実戦で披露していない最高機密兵器の情報まで盗むとは」
「タケちゃん、先生ぇのスリーサイズ知っているの!? ……教えてくれたら、アナタにフルコミットするけど」
「うん、先ずはパシー嬢からカイゼルシュニットのテストをしてみるか」
緊張感の無いやり取りをかき消すかのように、カヤは雄叫びをあげた。
「やる気がビリビリ伝わってくるねぇ、シドウ」
「カヤくん、何をしておる!? おかしな真似をする前に攻撃したまえ!」
オオカワの魔術声に反応せず、長く深い息を吐きだしピリスから視線を離さない。
「フッフフ、キミを助けるためにタケミツを送り事態の変化を期待したが、どうも誤算だったみたいだ」
ピリスが俺を魔法協会に導いたのはカヤの心境の変化を促すためだったのか。
……なんて大胆で場当たり的な判断、合理的とは思えない。
まぁ、ピリスらしいと言えばそうだが。けど、結果はオオカワの計画通りになってしまった。
ソリが合わないとはいえ、共に学んだ仲間としての気持ちが残っているなら、ピリスはカヤと本気で戦えるのか?
「キミの真の力と戦える事がこんなにも胸躍る気分とはね」
戦えそうでした!
「ピリス! カヤを殺すんじゃなく助けるんだろ!?」
「……それはタケミツ次第だな」
は? また俺?
「さぁ、シドウ。やろうじゃないか私のとっておきを見せてあげよう」
ピリスは帯剣していた蛇腹剣を引き抜き、
「――術式始動――バイパス接続!」




