二重スパイ
人の大きさ位のジュラルミンケースのようなものがピリスの傍の地面にめり込んでいる。
あれでカヤにぶつかったのか。
あの巨体を弾き飛ばすのだから、相当な重量なのだろう。
「んもう、先生ぇ、遅いですわよ」
「パシー嬢、調整中の試作品だがこれでも飛ばしてきたんだよ。とは言えパシー嬢のお陰で大惨事が起きる前に間に合うことはできたようだね」
なるほど……パシーはピリスとも繋がっていたのか。
「……ごめんね、タケちゃん。組織を運営するにはリスクヘッジがマストだから」
テヘペロっと舌を出している。
この感じだとパシーはピリスとはかなり前から繋がっていたのかもしれない、それこそクラウス・シュミットやオオカワ達よりも前に……だとすれば、俺たちの情報をピリスが把握していたのも分かる。
二重スパイってやつか、パシーの目的は……
「……いや、お陰で助かったよ。ありがとうパシー」
俺の言葉にパシーは一瞬驚き、アハっと笑う。
今はパシーの目的を考えている時じゃない、カヤを救うにはピリスの助けが必要だ。
「さて、オオカワ会長、役者が揃いましたね」
ピリスの言葉にオオカワは苦虫を嚙み潰したような顔をした。
「……大根役者めが。エレメントアーミーはどこまで把握していのだ!?」
「エレメントアーミーというより私が把握しているだけですよ」
その言葉にオオカワは口角を上げた。
「ほう、それは重畳。アイスクラ―くんらしいスタンドプレーというわけか。エレメントアーミーの俊英と言われるキミだが、今のカヤくんの前では手も足もでまい。見くびったな我々を」
冒険者ギルドの瓦礫がイナズマをまとって宙に浮く。
中心には黄龍が地面にとぐろを巻き牙をむき出しながら威嚇している。
オオカワの魔術声で操られているような苦悶ではない、あれは憎しみの表情だ。




