コンセンサス
そんな、まさか、あかね――息はまだある。
「何たる過ち! シドウくんに比べて、このような醜態をさらすとは心底、ミソノくんには失望させられる」
歯を食いしばり過ぎて割れてしまうのではないかと思うくらい、このジジイへの怒りがこみ上げる。
だが、今の俺には腕の中で眠るアカネを守ることしかできない。
「……そんなこと無いわ。アナタはフルコミットしたわよ副会長」
顔を上げると眼鏡をくいっと上げたパシーが立っていた。
「パシー……」
「大丈夫、アカネちゃんは私が介抱するから」
「女狐、キサマの役目はとうに終わっておるぞ。またウロチョロするとは。もう少し賢い生き物だと思ったが、所詮は生贄か。カヤくんの為に最後の務めを果たすのだな」
侮蔑した眼で俺たちを見下すとオオカワはカヤにまた魔術声をかける。
ちくしょう……もう一度、黄龍の攻撃を受ければ全滅だ。
せめて、アカネだけでも。
「私はちゃーんとペイできるビジネスしかしないスタイルですわよ。リテラシーの低いお爺さまと違って私はコンセンサスをとっていましたから。何事もワーク・ライフ・バランスが重要よ?」
地獄のような状況でもパシーは平然としている。
「……無資格が強がっておる。カヤくん、さぁ、今度こそ虫けらどもを焼き殺しておくれまいか? ああ、そうそう、なるべく建物には傷をつけんでくれ」
五色のイナズマが空から大地を煌々と照らす。
魔術使いや冒険者、住民たちは慌てふためき逃げ出している。
神の眼から逃げられる場所があるのだろうか?
世界を照らし出すように五色の光が瞬いている。
「グオオオオオンン!! グオオオオオオオオオオオオオンンンン!!」
慟哭をあげるような声が空気を切り裂く。
俺は何もしてやれないまま終わるのか。
会員を守るどころか、苦しむ会長を支えてやることもできない。
こんなことならあの時、転生などしなければ……ん? あれは?
「どーーーーん!」
ふざけた声をあげながら誰かが、黄龍の頭部に激突した。
衝撃で黄龍は廃墟となった冒険者ギルドへと突っ込んでいった。
ジェットブーツなようなものを履いてホバリングしながら、その誰かは俺の前に着地した。
「やぁやぁ、一日しか経ってないけど、もう会いたくなってしまってね。エアシップは置いて来たよ」
「ピリス!」




