その白い小さき手は
「オオカワ先生はカヤちゃんを利用してどうするつもり!?」
「もう一度、魔法使い中心の社会にするのだよ。それだけの力がシドウくんには備わっている。見せてやろう」
オオカワはカイルを一瞥すると、カイルは左手で空中に光る円陣、魔術紋を書いた。
「シドウくん、聞こえるかシドウくん」
オオカワの声がいくつも重なっているように聞こえる。
カイルの魔術で声を増幅しているのか。
「ここに君の敵がいる。私は知っているのだ、君の大切な――トレナ・アーチを殺した無資格者たちがここにいるぞ」
魔術によって増幅された声にカヤは身を悶えさせ、空を裂かんばかりの雄叫びを上げている。
トレナ・アーチ……
『粗悪な魔術紋、真っ当な教育を受けていない魔術の行使、それによって、彼は魔物となった』
カヤが言っていた子供の頃に出会った魔術使いの少年のことか!
カヤの苦しみに呼応するかのように五色のイナズマが闇夜を照らすように瞬いている。
絶対に悪い予感しかない!
アカネが魔杖を現出させた、と同時にイナズマが町中に降り注ぐ。
まるで昼間になったかのような目が眩む光。
不浄なる世界を漂白するかのような五色の発光。
「ゴオオオオオォオオオオオオオォォォ!!」
五行の中心で王の声が轟いた。
台地が爆ぜたかのような爆発音と暴風に立っているのが精一杯だ。
霞む視界が徐々に開けていくと、肉が焦げた臭いが漂ってくる。
炭化しているいくつもの死体が目に映った。
吐き気がこみ上げてくる。
神の怒りが降り注いだ地獄のような光景だった。
「うぉぉおお……い、いきてんのか。神さま! ミソノ様! 今日限り賭け事は止めると誓うぜ」
「また、ミソノさまに助けてもらえたなんて、ポっ」
「おいおい、お次はミソノさまかよ節操ねぇなぁ、ってンドルはどこだ?」
聞きなれた声達、冒険者ギルドの連中!
よく見ると戦っていた魔術使いや住民も無傷のままだ。
黒焦げになっているのはゴブリン達だけだった。
「……うぅっぅ……ああ」
アカネが膝から崩れ落ちる前に後ろから抱き留める。
「!! アカネ、その手は!!」
魔杖が地面に落ちる。
華奢で柔らかなアカネの両手から煙が立ち込め黒く焼け焦げていた。
「お前、みんなを守って!!」
「……うん……だって……カヤちゃんが誰かを……傷つけるなら……ボクが守らないと」
弱弱しく微笑みながらアカネは目を閉じた。




