誰にとっての魔法協会?
その日のうちにボッカイの街へと戻った。
夜が深まっていたが、(公社)ボッカイ魔法協会幹部たちを集めて緊急会議を開いた。
イオニアでの顛末を俺が掻い摘んで語り、カヤは結論だけを述べた。
「杉山武光の身柄をエレメントアーミーに引き渡し、本日付けで杉山武光をボッカイ魔法協会副会長の職務を解く――」
パシーは横文字皮肉を言いまくり、ンドルはオロオロして、カイルは再考を促したが、カヤは何も言わず決定を変えることはなかった。
俺も、それ以上は何も言えなかった。
会議が終わったあと、副会長の任を解かれたとしても暫定的にこの屋敷には住んでいいみたいだった。
【(公社)ボッカイ魔法協会附属しんきゅういん】の看板を外し、自室に入る。
最善の行動一つで、長年住んでいたような居心地の良さは消えてしまうものだな。
けど、これもみんなの為、(公社)ボッカイ魔法協会の為だ。
……(公社)ボッカイ魔法協会のため?
誰にとっての協会なのだろうか?
会員、魔法使い、魔術使い、エレメントマスター、それが俺にとって大切なものなのか?
前職でもそうだった、時代錯誤の老人、金儲け話ばかりの同期、インフルエンサー気取りの後輩、そんな奴らの為に、みんなの為になると自分の仕事やプライベートを削って協会の為に活動してきた。
結果は、零細鍼灸院と34になっても伴侶を見つけられない、誰かに使われるだけの毎日。
自分を犠牲にすることによって、自分には何も無いということを隠したかっただけなのかもしれない。
俺にとっての(公社)ボッカイ魔法協会なのだ。
「結局は、俺も自己保身したいだけ、か」
「なら、ボクも一緒に自己保身するよ」
独りで腰掛けていたはずのベッドが軋む。
「ピリスは俺を望んでいる、アカネまで犠牲になることはないよ」
「……犠牲なんて思ってないよ、お兄ちゃんと一緒にいたい」
「なら、カヤはどうするんだ? 一人にさせるのか?」
「カヤちゃんも一緒に行けば良い」
「そんな無責任な事があるか!? だったら(公社)ボッカイ魔法協会はどうするんだよ!?」
アカネの穏やかな声が一層腹立たしく、立ち上がって怒鳴った。




