EEの矜持
「くだらん戯言ばかりで辟易いたしますねぇ。アイスクラ―さまは、こんな奴に何故入れ込むのでしょうか」
「……お前こそ一体、何がしたいんだ?」
「はぁ、貴方を殺すこと……は余興の一つに過ぎません。EEとして、エレメントマスターの為に為すべきことを成すのが我々の務め。下等な異世界人には理解できないでしょうが」
小虫を払うかの様に手を振る。
さっきから選民思想が盛りだくさんだな。
「フン……流石、雑種と言われるだけはある、情けない生き方だな。魔法使いに恩を受けながら、エレメントマスターに媚びる。浅ましい」
「カヤ嬢、長い物には巻かれろ、という言葉を知っていますか? 貴女方、五神獣の末裔とうそぶく魔法使いには分からないでしょうね。だから、滅びかけていることも」
カヤはギロッとクラウスを睨みつける。
それだけで終わるくらいにカヤの消耗は激しいのだろう。
カヤとアカネの魔力が回復するまで何とかもう少し時間を稼がないと。
「EEは貴女方のように終わっていく存在ではない、ましてや魔術使いのような野良犬になるつもりもない。我々が求めているのは秩序の下の安定だ。エレメントマスターを支えるため血のにじむ努力と頭を地面に擦り付ける忍耐によって、今の地位を築きあげた。そして、アイスクラ―様という次世代の統率者をようやく得た!」
陶酔したような表情で語っている。
要はエレメントマスターの配下に自ら進んでなっているということか。
……馬鹿にはしない。この過酷な世界で安定を得ると言うのは、転生者としては痛いほどよく分かる。
魔物が跋扈する世界に社会保障の概念も無い社会、魔術賠償責任保険の話をした時の魔術使い達の希望の目がそれを物語っている。
「私は、いや私達、EEは私達の権益を侵す可能性を許さない。アイスクラ―さまに取り入り、魔法協会に入会しようとするイレギュラーを見逃しはしない」
コイツは俺がエレメントマスターと魔法使いを繋ぐ存在になると懸念していたのか。
職域を守るとは言え、なんて執念だ。
大嫌いな野郎だが、否定することは出来ない。
生き残るのに必死なのだ。
「なのにカヤ嬢、貴女はそれを歯牙にもかけない。だから、魔法協会は衰退する。プライドを抱えたまま、貴女方、魔法使いは忘れられていくのです。全てがエレメントの名の下、秩序ある安定した未来が待っている。それを支えるのは我々、EEだ。そこに魔法使いの席はない! 亜人の時代は終わり、人間の時代が始まるのです!」
クラウスは論破したかのようなドヤ顔を浮かべている。
エレメントマスターの影響力の凄まじさを感じる。
エアシップのようなエレメントによる科学技術、EEなる下支えする存在への教育、そしてエレメントアーミーによる支配。
エレメントマスターが構築しているシステムに隙は無い。
なら、魔法使いが生きる道は……
「ふーん、アタシは魔法が好きだけど、お前はエレメントが好きなのか?」
「……個人的感情で物事を推し量るのは」
「好きなものを好きと言えない生き方はしたくないの」
「……ッ!」
クラウスは目を見開いて立ち上がるが、言葉を発せないでいた。
……エレメントギア作成A
数万人に一人の才能がAなら、エレメントギアを作るのが嫌いなわけじゃないだろ。
どういう人生を歩んできたか、それこそ推し量れないがコイツにはコイツなりの処世術があったのかもしれない。
少なくとも、カヤの言葉に窮する純粋さは残っているのかもしれない。
だが、俺たちも生き残ってやるべきことはある。
好きな事に一生懸命な会長を守るためにも。
「……ふっフフ、好きとか嫌いとか、所詮は負け犬の遠吠えですよ。カヤ嬢やアカネ嬢のような可憐な亜人ならば手元に置いておきたいものですが、あまりにも牙が鋭すぎます。泣く泣く駆除させていただきますよ。そこの虫と一緒にね」
「あらあら、随分、スピーディーなのねぇ。若いから我慢できないのかしら?」




