クラウス・シュミット
「スザクが消えちまった――すげぇ」
腰を抜かしたンドルが間の抜けた顔で呟く。
「お兄ちゃん!!」
涙でぐしゃぐしゃになったアカネがこちらにやってきた。
抱き着かれ身体に火傷の激痛が走ると思っていたら暖かなお湯に包まれる感触。
「お、おお、身体が痛くない、またアカネに助けられた」
「そんなことない、お兄ちゃんがみんなをまた助けてくれたんだよぉ」
「ぶっちゃければ、アタシが実際には問題解決してるワケだけど……特別、アンタが手伝って解決していると思ってもいいわよ――副会長」
フフンっとカヤが笑う。
どうなるかと思ったが、まさか管鍼術をあんな風に使ったのはきっと俺が初めてであろう。
しかし……朱雀か、あんなものが現界した理由はなんだ?
――バババババババババーー
空を破るかのような轟音が近づいてくる。
まるで超巨大なヘリコプターが来るかのような音に空を見上げる。
「エレメントアーミー……エアシップだ」
ンドルの言葉の通り、それはドラファンでお馴染みの飛空艇だった。
飛空艇が着陸すると、そこから黒い制服を身にまとった者たちが降りてきた。
「こりゃまた、EEがワンサカ来ましたぜ」
アイツ等がEE、そう思うとピリスの着ていた服の量産品に見えなくもない。
EEたちは整列するとこちらに銃のようなものを向けてきた。
「へぇ、どういうつもりか知らないけど、アタシらにその脆弱なエレメントギアを向けるんだ。またあの空飛ぶ鉄屑を飛べなくしてもいいんだけど?」
「ハハハ、それは困りますね。このエアシップを直すには莫大なお金がかかりますので、麗しきカヤ・シドウ嬢」
プライドの高そうな声の方を見ると、金髪の優男が飛空艇から降り立っていた。
蒼い瞳には嘲笑が、高慢そうな高い鼻に、冷笑を浮かべているような口元、モデルのようなイケメンだが、顔つきは嫌いな部類に入る。
「おやおやおや、貴方はまだ生きていましたか! これは驚きだ!」
俺の方を見ながら金髪優男はニヤニヤしている。
どういう意味だ?
……まさか、そうかこいつかーー。
「ああ、やっと気づきましたか、そうです、私ですよ。そこの野良猫をそそのかして貴方を殺すように仕向けた男はーーおっと、カヤ嬢お止めになられた方が良い、すでに貴方達のマナも限界でしょう」
カヤが動く前に、整列していたEEが俺たちを取り囲みだした。
あの銃みたいなのはエレメントギアの一種なのか。
「限界かどうかは、アタシが決めるわ」
「カヤ、止めよう……そして、アカネもスキあれば殺すみたいな雰囲気出さない」
カヤとアカネを制止する。
「てめぇ、ノコノコと現れやがって」
「おやおやおやおや……どちらかと言えば、ノコノコ現れているのは貴方の方では?」
金髪優男は腰に下げた銃のようなものを抜き、早撃ちガンマンのように近づいてきたウダルの両腿を撃ち抜いた。
「うあがあああああ」
「ンドル!」
「殺すのは後にするとして、今は椅子が必要です」
地面に転げるンドルに向かって魔術の力か、ンドルは縛り付けられたかのように四つ足で這いつくばいになった。
「っくそぉ、身体が言う事聞かねぇぜ……っぐう」
「ライオンの絨毯とはいきませんが、この椅子もなかなかの物でしょう?」
ンドルの背中に金髪優男は腰掛けると不敵に笑う。
「お前……ゆるさないぞ」
「アカネ・ミソノ嬢にまで嫌われてしまうとは……どうすれば亜人どもを手懐けられるのか是非、杉山氏の手管をご教授していただきたいものです」
「……あんたは一体なんなんだ?」
「おやおや、そういえばまだ自己紹介していませんでしたね。私の名前はクラウス・シュミット、コス市の駐在武官をさせていただいております。簡単に言えばここら一帯のエレメントアーミーの指揮官です。」




