口鍼
「そちらって、ベッドに? あらぁ、お二方が見ているのに大胆なのねぇ?」
黄龍と玄武を背後に漂わせる二人と違って、俺は挑発に乗らずベッド脇の椅子に腰かける。
「タケちゃんって押しが強い系なのね」
パシーはベッドに腰かけると下着を見せるかのように脚を組んで妖しく笑った。
……こういう時は、養生の精神を唱えるんだ、養生、養生、紫のTバック、養生、よっし。
「肩こりが気になるとの事ですが、他の症状はどうですか? 例えば目の疲れ」
「そうねぇ、確かに目は疲れるかも」
「頭痛はどうですか?」
「うーん、頭痛の種なら、杉山せんせぇの後ろにいる怖い顔した娘達がそうですけどぉ」
ゴゴゴゴゴっと擬音が聞こえてくるかのように、背後の黄龍と玄武をスタンド化させている二人は放っておく。
青の川の点滅も踏まえて、肩こり、目の疲れ、頭痛、と来たらこれは肝が実っしている肝実だろう。
肝実は怒りっぽくなっている、つまり、パシーは冷静に見えて内心は苛つきやすいタイプだ。
本来なら、補寫迎髄に基づき、その子を瀉すために赤の川の淀みに鍼を刺せば済む話だ。しかし、今は触れてはいけない縛りがある。
となると……一か八か、気が引けるがあのやり方しかない。
「……生理はどうですか? ちゃんときていますか?」
俺の言葉にパシーはぴくりと反応する。
「……アハ、そんなことここで聞いちゃうの? ……タケちゃん、女の子には他人が居る前では」
「すいません、女の『子』ですか?」
「……アハ、アハ、あらー、結構、言うのね? 何かむしろ、肩もコってきているし、頭痛も酷くなっている気がするんですけど?」
アハが一つ増えたな……やはり、ここが『怒り』のポイントか。
明らかに青の川の点滅が強まっている。
「それは、更年期障害かもしれませんね、知っていますか更年期障害?」
「こうねんき……なに?」
「ああ、知りませんよね、つまり閉経を挟んだ前後十年の時期、つまり、45歳から55歳頃を更年期というのですが、そのご年齢はホルモンのバランスが崩れやすく」
「――アハ、アハ、アハ、笑えない冗談じゃねぇですわね」
アハが三つになったし、言葉も崩れてきた、畳みかけるか。
「ご、ごめんなさい、傷つけてしまいましたか? ……そうですね、パシーさんは、まだ全然『お若く見える』ので大丈夫ですよ(微笑)」
パシーは身体をブルブルと震わし扇子をへし折ると立ち上がり俺を殺さんとばかりの表情に変わった。
青い川の勢いが急激に高まり川の中にある点滅しているモノを押し流さんとしている。
「今だ、アカネ、止めをさせ!」
アカネはコクリと頷くと、
「『おばさん』こーふんするとお肌によくないよ?」
モチ肌プルンなアカネの言葉に、パシーの目がかっと見開き、
「テメーらブっ殺して――ッカハ!?」
大きく開かれた口から点滅している原因の闇が吐き出された。
俺はすかさず邪気に鍼を刺すと、そのまま消滅していった。
「けほ、っけほ……い、今の、なに?」
「パシーの身体にいた邪気だよ。パシーの不調は始めから分かっていたからな。けど、鍼を使わずに治療するとなると、ケイラスの巡りを自前でやるために、青の川、木の魔力の勢いを増させて自らの力で邪気を押し流させないといけない。それを促すために、そこの色体表に書かれているように、木は怒りを反映しているから、あえて怒らせたんだよ」




