【(公社)ボッカイ魔法協会附属しんきゅういん】
そして、次の日。
(公社)ボッカイ魔法協会会館の一階の物置部屋にドアプレートが取り付けられていた。
【(公社)ボッカイ魔法協会附属しんきゅういん】
いやいや、待ってくれ、確か会員を勧誘するのが目的だったよな?
なのに何故が次の日に、鍼灸院の看板が掲げられている。
開業するためにビラ配ったんだっけ?
「これは一体……なんなんだぁ!?」
「それはもちらん、会長であるアタシの決断よ! 感謝しなさい、アンタのためにボッカイ魔……(公社)ボッカイ魔法協会に貢献出来るための施設を作ってあげたのだから」
「あのゴミ部屋を片付けさせたのも、この為か! いやいやマジか!?」
「マジだよマジだよ! これは、ボクとカヤちゃんの『とっておきのアイデア』だったのです、えへん!」
そんな誇らしげに言われてもなぁ。そもそも鍼灸用具も無いし、消毒設備もない、待合室との仕切りは? 施術所要件を満たしているわけ?
……そんな基準この世界には無いか。
「二人の気持ちはありがたいが、イセコスでの医療は魔法使いや魔術使いの治癒師がいるんだろう? 鍼灸院の需要はあるのか?」
「……アンタ、自分がどういう事をしたか分かってないワケ? 癪だけどアンタは魔法でも魔術でも成し得なかった事を成し得るにしたのよ、そこの窓から外を見たらいいじゃない」
カーテンが閉まっている窓の傍に近づく。もう、この時点で外から聞こえる声の数で需要は十分にあると理解。
それでも、カーテンの隙間からチラッと見る……日本でもこれくらい患者さんが来てくれていたらなぁ。
「しかし、道具がな。この裁縫針一本じゃ心許ないよ」
「それならアンタが色々話してくれたのを参考に、作っておいたわよ」
そう言ってカヤは、革のバッグから大小さまざまな鍼をテーブルに出してきた。
針から鍼に変化している。かなりイイ線いってるな。
あ、でも鍼管が無い。それは言ってなかったか。
「ベッドも三台あるし、椅子も四脚用意しておいたよ、それと……じゃやじゃやーん」
壁に不自然に張り付けられている布をアカネは引き剝がすと、
「お兄ちゃんが語っていた五行のしきいたいひょう? も大きな紙に書いて貼ったんだよ」
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五行:木・火・土・金・水
五色:青・赤・黄・白・黒
五臓:肝・心・脾・肺・腎
五腑:胆・小腸・胃・大腸・膀胱
五季:春・夏・長夏・秋・冬
五官:目・舌・口・鼻・耳
五方:東・南・中央・西・北
五味:酸・苦・甘・辛・塩辛い
五志:怒・喜・思・憂・恐
五気:風・暑・湿・燥・寒
五液:涙・汗・涎・鼻水・唾
五神獣:青竜・朱雀・黄龍・白虎・玄武
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「へぇー! これはすごい! あの時にメモしていたのはこれを作る為だったのか」
「えへへぇ、ボクも頑張ったんだよ、ナデナデして」
頭をナデナデしてあげる。
改めて五行色体表を見ると気が引き締まる。全て書かれているわけじゃないが、今はこれで十分だろう。ちなみに五神獣などない、勝手に付け足したのだろうな。
そう考えれば、この部屋が本当に自分の鍼灸院に思えてくる気がしなくもない。
カヤの期待の目とアカネの尊敬の眼差しに、応えてみたくなってきた。
「アニキ―! そろそろ、コイツら通していいですか? みんな、魔術紋の不調で困ってるみたいですんで」
外には待っている患者さんの列。
「よーっし! ンドル、通してくれ! 開院だ!」




