公益社団法人ボッカイ魔法協会
「はあはぁ、はー、やーっと追いついたぜ。酷いですよ、置いてくなんて」
息を切らしたンドルが俺に文句を言ってきた。
ンドルにもビラを配ってもらっても、抜本的な解決には繋がらないよな。魔術使いが興味を示すには、魔術使いが認めてくれるような宣伝が……そうだ!
「思いついた! ンドル、耳を貸してくれ」
「よろこんで! ……へー、なるほど、そういこたぁ慣れてますぜ」
「慣れているなら、準備に入ってくれ」
俺たちの場所からンドルは離れる、そして少し経ったあとに知らぬフリのンドルがやってきた。
「こんにちは! ボッカイ魔法協会です! 良ければ入会しませんか?」
ンドルに向かってチラシを渡す。
「……ああん? ボッカイ魔法協会だって!? おいおい、コイツは危険だぜ」
ワザとらしい感じの大声でンドルは話す。
いいぞ、『サクラ』としてはそんな感じだ、
「いえいえ、危険ではありませんよ魔術使いさん。そこのチラシに書かれている通りで、ボッカイ魔法協会に入会すれば、魔術の使い方講座や魔術紋の安定セミナーが無料で受けられるのですよ」
「なんだってぇ? 自己流で効率の悪い魔術や安定しにくい魔術紋を、この世界の神で聡明で気品があり俺の命の恩人でもある杉山武光さまに教われるっていうのか?」
デカくて野太い声のお陰で、周囲の注目がこちらに集まってきている。
どっかで聞いた事のあるセリフだが、まあいい。
「……ちょっと違いますが、おおむねその通りです、魔法使いの先生方に教わる事が出来るのです」
周囲から「おお」っと感嘆の声がチラホラ聞こえ始める。
俺は魔法使いじゃないが細かい事は置いて、このまま畳み掛ける『とっておきのアイデア』でね。
「魔術使いさん、それだけじゃないのがボッカイ魔法協会ですよ、ここを読んでください」
「へぇ、まだ、あるのかい……えーっと【魔術賠償責任保険】?? どういう意味だ?」
「これはですね、当会の会員のみ適応される生活保障でして、魔術を用いる事による事故や損害に対して給付金を出す、つまり会員さんなら当会からお金が貰えるのです」
どよめきが起きた。
「なんだって!? つまり、魔術を使ったせいで何か壊して弁償したり、魔物との戦いでケガしたりすると、金がもらえんのかい?」
ンドルも素で驚いている。
そうだろうな、この世界は常に危険と隣合わせだ。
クエストや戦闘によって負傷する事による生活保障の無い綱渡りのような生き方しか出来ない所に、それを助けてくれる制度がある。食いつかないわけがない。
「それだけでなく、もし万が一、戦闘によって帰らぬ人になってしまった時、あなたの家族はどうなりますか? 妻、夫、子供、老いた父母、あなたの稼ぎで生きていた人達」
聴衆はすでに人だかりとなっており、各々、暗い顔になっているのもチラホラ。
「でも、当会の会員なら心配無用です! 死亡した時にも給付金を家族が受け取れるのです」
うおおお! っと歓声が広がった。
もはやンドルのサクラは必要なく、我先にとチラシを手に取る。
「ボッカイ魔法協会を誤解していたよ、こんな素晴らしい事を考えていたなんて」
「私、実はミソノさまのファンなんです……魔術教えていただけますか?」
「シドウさまのお怒りはこのような意味だったのですね! なんたる不覚、このような懐の深いお考えを聞かずにいたとは、お許しください!」
カヤとアカネの周りにも人だかりが出来て、二人からチラシを受け取っている。
二人のあの顔、目を白黒させていて笑える。
だが、このままじゃ締まりが悪い。
「シドウ会長、こちらに!」
TPOを弁えてカヤを手招く。
「助かったわ。こんなに無資格達の反応が良いなんて驚き……」
「カヤが望んでいた光景だろ?」
「ま、まぁ、そうだけど、でも、この数……二桁どころか三桁はいくんじゃない?」
「だろうな。でも、魔王カヤにはまだまだ足りないんじゃないのか?」
「――! ……そうね、アタシの目的はこんなもんじゃ足りないわ」
「なら、最後のアイデアだ、耳を貸してくれ」
締めの言葉はやはり会長その人が語るべきだろう。
カヤは魔法の絨毯を呼び出し、群衆の上から語りだした。
「貴様ら! よく聞きなさい! 我が副会長が説明したように、貴様らにはあらゆる温情をあげるわ。ただし、それはボッカイ魔法協会に入り、ケイラスへの感謝を尽くし、世の中の役に立つために魔術を使うことを約束するものだけよ」
カヤの力強い演説に群衆は声援を送る。
アカネの方を見ると、うんうんと頷きながら涙ぐんでいる。
「我々は貴様らへの施しを余すこと無く与えるわ。我は富を望まず、権力を用いず、名声はいらない。欲しいものはケイラスの調和よ。よって貴様らを含む公の利益を追求するために、本日からボッカイ魔法協会は新生するわ」
カヤは一層力を込めて言い放った。
「公益社団法人ボッカイ魔法協会を宣言するわ。略して(公社)ボッカイ魔法協会の新たな旅立ちを貴様らと祝ってあげる!」
ドーン、ドーンと昼の空にまるで花火のように赤い火の玉がいくつも破裂する。
カヤの両手から放たれる花火を見て、群衆からシドウコールが広がっていく。
この世界でどうやって法人成りや公益性を認定するかは知らんが、言ってしまったもの勝ちで良いだろう。
少なくとも多くの人々の笑顔がなによりの公益性と解釈してしまえばいいのだ。
◆◆お読みいただき誠にありがとうございます◆◆
とうとう公益財団法人になりましたw 今後(公社)の活動が気になる方は
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