カイロン商会
「カイルさんに聞きたいのですが、このボッカイの街には多くの魔術使いがいますよね? カイルさんもいて、カヤやアカネもいるのに何故、魔法協会に誰も入らないのですか?」
ズーンと明らかに重い空気を醸し出す隣のお二人、若干、殺気も交じっている。
「……あー、そうですね、お恥かしい限りです」
「いや、批判しているわけじゃなく、何か理由があるのかなと」
チラチラっとカイルは二人の様子を伺いながら、うーんと困った顔をしている。
「……パシー・カイロン」
「アカネ!!」
アカネの言葉に対してカヤは忌々しそうな声を上げた。
「カヤちゃんが認めたくないのは分かるけど、カイロン商会の影響はすごいよ」
何かを訴えるようにカヤは口を大きく開けたが、苦虫を嚙み潰すように押し黙った。
「そのパシー・カイロンって人のカイロン商会は、魔術で金儲けをしているとか?」
俺の推測に三人は驚愕している。似たような事例を知っていますんでね。
「……杉山さまのご明察には驚かされます。仰る通りで、パシー・カイロンは魔術使いとしては平凡な能力しかありません。しかし、彼女は、自身の特異な魔術によって巨額の富を築き上げカイロン商会を率いて遺跡観光頼みのボッカイを一大歓楽街へと変貌させました。同時に多くの魔術使いを招き入れ、不本意ながらボッカイは無資格魔術使いの巣窟となってしまったのです」
つまり、冒険者ギルドを含めて力に関しては魔法協会が支配しているが、パシー・カイロンはお金と人を支配しているというわけか。
「……それと言いにくい事ですがボッカイ魔法協会さんには、あまりお時間が残されていない」
「時間が無い? それはどういう意味ですか?」
そういえば、二人と初めて出会った日にアカネが何か言っていたような。
「はい、お二方は杉山さまにお伝えしてないようですが、あと三十日以内に会員数を二桁以上に出来ない場合は、シャギーリ魔法協会から除会するとの決定が」
「うるさい奴らの嫌がらせよ」
「……でも……除会されちゃうと……」
二人の表情から察するに全国組織と縁が切れるとマズイみたいだな。
「シャギーリ魔法協会からボッカイ魔法協会が除会されるとどうなるのですか?」
「……残念ながら、冒険者ギルドとしてシドウさまとミソノさまをお助けすることが出来なくなります」
あちゃー、つまり魔法アイテムの買取りや冒険者ギルドとしてのバックアップが望めなくなるわけだ。
孤立無援になってカヤがどういう手段に出るのかが恐ろしいな。
「アタシ、飽きたからもう帰る」
ツンとした雰囲気を纏いながらカヤは部屋から出ていった。
「カイルさん、失礼します! お兄ちゃんもほら」
アカネはカイルにぺこりと頭をさげると俺の手を握って部屋から出ていこうとする。
「杉山さん、貴方はとても興味深い人です……あなたならこの街を」
少しだけ声のトーンを上げてカイルは俺に何かを伝えようとしていたが、アカネの手に込められる力を感じ取り、一礼して部屋を去った。




