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ボクはお兄ちゃんのモノです

「お兄ちゃん、お兄ちゃん……朝だよ」


 ううん、夢の中で妹がいる。俺は一人っ子のはずだが。


「お兄ちゃん……お兄ちゃんってば」


 ああ、しかし、夢にしてはリアルな感じ。


「起きないなら……キスしちゃうおうかな」


 ええ、兄妹でキスしちゃうの? そういう願望あったっけ俺?

 ああ、リアルだ、吐息が近い、これは、夢だけど夢じゃない的な。

 目を開けると、目の前に水色の髪をした美少女が真っ赤な顔でタコのような口で迫ってきている。


「お、おはようございます」

「ひゃああああああああ」


 と叫びながらドタンと後ろに倒れた。


「だ、だいじょぶ、きみ」


 寝ぼけながらも身を起こして倒れた美少女の様子を伺う。

 いたたっと頭を撫でながら、ミニスカートから縞柄の下着がモロ見えてしまっている。

 俺の視線に気づいたのか、


「あああううううううう」


 と呻きながらスカートで隠す。

 涙目というより、もはや涙が零れそうな勢いだ。


「あ、えーっと、アカネちゃんだっけ? 元気そうだね」

「え、そうです、ボク、アカネ・ミソノです……ごめんなさい、ボク、キスしようとしてしまいました」


 正直者だ。そこは少し隠したりするのだが、正直だ。 

 しかし、こんな美少女が顔を赤らめながらモジモジしているのを見たらむしろ、俺がキスしたくなってしまうが、本来の年齢で言うなら自分の子供でもおかしくないくらい離れているであろう。この思考は犯罪かな。


「そ、そうなんだ、あはは、それは嬉しい目覚め方になりそうだね」


 これが大人の返しだ。


「……嬉しいなら、キスします」

 うそでしょ? どうしてそうなるの? 最近の若い娘はわからん。


「し、しなくていいよ、そ、それより、俺はアカネちゃんとお話がしたいな」


 こうなれば話を逸らすのが一番だろう。


「それでしたら、はい! お話しましょ」


 と言いながら、俺の隣に座るようにベッドに腰かけてきた。

 ニコニコと満面の笑顔が、嬉しい反面、若干の不安が漂う。


「そ、そうだな。そもそも、何で俺の事お兄ちゃんって呼ぶの?」

「えーっと……名前が分からないからです」


 そういえば名乗ってなかったな。


「あ、そうか。えー、俺の名前は杉山武光。地球の日本って所で生まれ育ち死んで、この世界に来ました、よろしく」

「そうなんですね。ボクの名前はアカネ・ミソノです。お兄ちゃんの物です可愛がってくださいね」


 名前を名乗っても変わらないじゃないか。

 それにお兄ちゃんの物と言われても……まぁ、杉山さまとか、ご主人さまとかそういう呼ばれ方するよりは良いけど。


「ところで、アカネちゃん、聞きたいことは色々あるんだけど、この世界は死ぬときに粒子になって消えちゃうのか?」

「……普通に命が尽きるときは直ぐに消えません。土に埋めたり、海や川に流せば自然と共にケイラスへと還ることになります。ただ、ケイラスのお力を借り過ぎたり、ケイラスの力を誤った形で使うとき、身体の中の魔力が異常を起こし、心身に影響を与え、ケイラスへとそのまま還ることがあります」


 東洋医学でいう気の流れによって病気になって死に至るというワケか。この世界は気を魔力とかマナと呼んでいて、人体における気の在り方が地球よりも具体的な生命エネルギーとして機能しているのであろう。

 ゆえに、鍼灸治療がこの世界ではより効果が強いのかもしれない。


「この世界では魔力の流れが悪くなった時に改善する方法は無かったの?」

「無かったです。だから、お兄ちゃんはスゴイんです! ……昔からずっとボクは不調を抱えていました。ゲンブ族は両性を持つので、ボクのようにケイラスの調和が悪い者も出やすく、ボクも成人になるまで持たないだろうと言われていました……円環の儀、つまりケイラスに還り巡るはずの運命でしたが、今は、生まれてから一番、調子が良いんです!」


 ゲンブ族は高い能力がある反面、気の流れが悪いのか……それは両性、つまり半陰陽が影響していた。カヤの言う通り目に見える特徴ではないかもしれない。

 どちらかと言えば、陰が、つまり女性寄りという感じかな。


「アカネちゃんはゲン」

「あ、それと、ボクの事をアカネちゃんって呼ぶの止めてください。ボクは男ですからちゃんづけとか嫌です」


 え、心は男なのか。

 ……ちょっと待って、俺にキスをしようとしたのは男として?


「そ、そうなんだね、なら、今後はアカネって呼ぶよ」

「……アカネ……お兄ちゃんに呼ばれるとなんか、ドキドキしています。こんな気持ちずっと感じたこと無かったから」


 瞳を潤ませながら俺の手を握ってきた。

 溜まっていた思春期の悶々が爆発しているかのように、朝にはお見せ出来ないような表情を浮かべている。


「ボク……はぁはぁ、変です。鎮めてほしい」


 確かにこれは気が高まり過ぎているようにも見える。水の気が高ぶっているのか。

 そういえば、玄武は五行でいうと水だ、もともと水の魔力が高い一族なわけだから、本来、五臓でいう腎の気が強い、性欲も強いのか?

 事後になる前にオブザーバーを手早く起動させる。

 やはり今度は水、黒の川に勢いが増し過ぎている。

 五行で考えるなら『実するならその子を瀉す』だな。

 サイドテーブルに置いてあった金色の裁縫針を掴む。


「あうううぅぅ、はぁはぁ、お兄ちゃんがほしぃぃ!」


 とんでもない表情で襲い来るアカネの青の川にある光点に突き刺した。


「うんんああああ、ふにゅう……」


 俺に覆い被さるようにアカネはだらしない顔で倒れ込んだ。

 はぁはぁ、と息を切らしているが、ある程度、水の気は散らせることが出来たようだ。


「ったく、アカネはアイツを起こすのにどんだけかかるワケ?」


 最悪のタイミングで最悪の相手が入室。


「……へぇえ、朝からすいぶん仲良しね……さぁ、どの魔力で死にたいのかしら?」


 それはねぇ、カヤの肝が実しているからイライラしているんだよ、と言っても意味がなさそうだ。


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