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五神族

「……え! ここどこだ!?」


 白いシーツが引かれたシングルベッドから起き上がった。

 ボフっと柔らかい感触とギシっと軋む木のフレーム。それと、なんかちょっといい匂いがする。


「ずいぶん、ぐっすり寝てたわね。警戒心とか無いワケ?」


 辺りを見回すと小さなテーブルの前で椅子に座るカヤがこちらをジロッと見ている。

 ベッドから身を起こし腰掛ける。


「あれからどうなって……そうだあの娘は!?」


 テーブルの上にある平べったい桃のような果物を魔法で剝きながら、


「あなたが気絶したあとに、落ち着いたわ……アンタのお陰かもね」


 ベッドわきのサイドテーブルに置いてきた。

 桃っぽいのにアーモンドの香りがする果物、一口かじると美味いし甘い。


「それは良かった! まさか、異世界に来て鍼灸治療をすることになるとは」

「……なんで助けてくれたの?」


 蒼い瞳をこちらに真っ直ぐに向けてくる。


「病気で苦しんでいる人を助けるのが仕事だから」

「……あんた治癒系の魔法使い?」


 治癒系のという枕詞があるならこの世界の医療は魔法でどうにかなるのか?

 便利な世界だな。

 けど、アカネには薬も魔法もエレメントも効かないと言っていたが。


「いや、鍼灸師」

「しんきゅうし系の魔法使い?」


 何故、魔法使いにこだわる。


「いや、魔法使いではないが」

「いやいや、魔法使ってたじゃん。ケイラスに触れてたし」

「ケイラス、それは経絡の事なのか? そもそも五色の川が人体を巡り世界と繋がっているようにも見えた、この世界は陰陽五行論と関係があるのか?」


 俺の矢継ぎ早な問いにカヤは深いため息を吐き、椅子の背もたれに背中を預けた。


「……アンタが異世界から来た人間なのは分かる。だけど、あの冷血女のピリスと知り合いエレメントギアを貰い、アカネを頼ってボッカイ魔法協会(アタシのとこ)に来た、そこが意味不明過ぎ……あのまま氷漬けにしておけば良かったか、とまだ思ってるワケ」


 前の時ほどではないが、相変わらず緊張感を強いるような威圧を放っている。

 角と良い犬歯と良い???系の亜人なのだろう。


「けど、アンタがアカネを助けてくれた事とケイラスに気に入られている事は認めてあげる……今も特別に、あ、アタシの部屋を貸してあげてるんだからね」


 先ほどとは打って変わって、視線を逸らし年相応の美少女らしい雰囲気になった。

 人助けはするものだ。


「ここ君の部屋だったの? ……なるほど、どおりでベッドからイイ匂いがするのか」

「へ、へぇ!? い、いいい、いい匂い!?」


 ヤバい、顔が赤くなったぞ、怒ったか?

 ???系なら二回攻撃とか全体魔法とかする前に何とかしないと!


「い、いや、ごめん、イイ匂いじゃなかった、全然、イイ匂いじゃない」

「えー!? ……それって、アタシがくさいってこと?」


 おいおい、今度は泣き出しそうな顔になったぞ……困ったなぁ、体調の変化とかなら、まだ分かるんだが、この娘くらいの年の感情の機微はちょっとなぁ。


「臭いわけないよ、ただ、そうだな……お母さんの匂いみたいな」

「うわっ……キモい」


 カヤは急に白けたような表情になった。

 俺はとても虚しい事を言ってしまったようだが間違ったことを言ったつもりはないぞ。


「そういえば質問にまだ答えてもらってないが、この世界はというより、魔法使いは陰陽五行論を用いているのか?」

「……そうね、先ずどこから説明すべきか」


 カヤは思案しながら立ち上がった。


「この世界イセコスは、光と闇を司る【ヒポス】と【ヘンジャ】という二柱の神によって作られたと言われているわ。神が最初に作りだしたのはこの世界のカタチ【ケイラス】そしてケイラスを構成する【木火土金水の魔力】」

「木火土金水! 五行だ! そして、光と闇は陽と陰! 陰陽五行論か」


 ヒポスとヘンジャって、ヒポスはピンとこないが、ヘンジャは扁鵲か?


「アンタの異世界とイセコスがどう関連してるか、分からないけど、まぁ、ケイラスはあらゆる世界において影響があっても不思議じゃないわね」


 陰陽五行論は東洋においては地球のいや宇宙の法則と云われる考え方の一つだ。ただ、地球ではあくまで概念としてだが、この世界では実際に力の源であり根幹なのだろう。


「そしてケイラスから五つの神に似た生物が生まれたの。セイリュウ、スザク、コウリュウ、ビャッコ、ゲンブ。彼らを始祖としてイセコスは五つの種族が繁栄を極めた……けど、その繁栄は長くは続かなかった……魔物と呼ばれる脅威が現れてね」

「四神か、それにプラスして土用である黄龍ないし麒麟といわけか」


 しかし、魔物? そんな概念は東洋思想にはないな。


「その魔物達と戦うためにケイラスは五種族に【魔法】を与えてくれた。それから五種族直系の者はケイラスの祝福が約束されたもの【魔法使い】と呼ばれるようになったの」

「魔法使いは五神の直系の一族ということか。君とあの娘もつまり五神の一族」


 その言葉に反応したのか、カヤは腕を組み分かりやすい位のドヤ顔を浮かべた。


「その通りよ! アタシこそ五神族コウリュウ直系の魔法使いでありとあらゆる魔法を行使するケイラスに愛されし者カヤ・シドウさまよ……今はちょっとアレだけど、イセコスを支配すべき者でもあるわ」


 丸まった角と牙とは言い難い犬歯がキランと光ったようにも見える。

 春夏秋冬における土用、東西南北でいう中央。

 中国の時の王朝で言う皇帝の意でもある『黄金に輝く龍か』


「ちなみに、ウナギが好きとかある?」

「え。なに、急に。ウナギって?」

「魚だけど、この世界には無いかな?」

「あ、ごめん、アタシ魚嫌いなの。骨がウザくて」


 この皇帝は最近のJKみたいな事を言うな。

 土用の丑の日にウナギを食えと日本初のコピーライディングした平賀源内もガッカリしているぜ。


◆◆お読みいただき誠にありがとうございます◆◆


カヤ・シドウのようなツンデレは個人的に昔から推しタイプですw、

もし私と同じような性癖(オイマテ)でしたらブックマークマークと⭐︎星評価をくださると嬉しいです!

感想などもいただければ創作の励みになりますのでよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 人物の描写が良く書けていると思いました。 カヤが印象的です。 [気になる点] 主人公の個性と魅力がもっと最初のころに描かれていればよくなると思います。
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