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魔法使いと針治療

 オブザーバーをアカネに向ける。


「――なにしてるの? そんな物をアカネに向けるな!!」


 心臓を鷲掴みにするような威圧。

 スイッチを押す指が動かないどころか、呼吸さえもまともに出来ず、膝が木の床に着く。

 く、くるしい、だけど……目の前で意識を失おうとしている少女に比べたら!

 俺の想いに応えるようにオブザーバーが光を放つ。


「な、なんなの、その光、まるで、ケイラスの」


 威圧が緩んだ瞬間、スイッチを押した。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

名前:アカネ・ミソノ 年齢:14歳 性別:両性 ランク:S

職業:魔法使い

HP:C

MP:S

魔力:A

魔防:A

筋力:D

体力:D

速度:D

玄武:S

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 アカネのステータスが見えると同時に、アカネの身体に五色の川も診える。

 淀みの箇所を見て改めて、これは五行、陰陽五行論の五色だ。

 つまり、この川は気の流れか? 

 そして淀みはツボで滞っている個所といえる。


「ウソでしょ……どうしたらそんなにケイラスと……調和が出来るの?」


 震える声を上げる魔王を見るが、魔王からは五色の川が見えない。

 オブザーバーを向けてないとダメなのか? 

 つまりこの機械は診断、いや、鍼灸でいうと四診をこなしてくれるようなものか。

 日本でコレがあったら繁盛鍼灸院間違いないだろな。


「ごっほ……ごっほ」


 いかん、いかん、そんな事より目の前の患者さんだ!

 ピリスの時と同じ、やり方で淀みを補すように手で。

 優しく触れようとした瞬間、弾き飛ばされ、後ろの棚に背中を打ち付けた。


「ちょっと、アンタ! 大丈夫!?」


 打ち付けた背中よりも、触れた手がグロいことになっている。


「な、なんじゃこりゃー!」


 魔王が近づいてきて、俺の手に触れると温かい光に包まれ手が何事もなかったかのように元通りになっていた。


「魔法使いでも無い人間がケイラスに無防備に触れるからそうなる、あなた一体何者なのよ?」

「ただの鍼灸師だ」

「しんきゅうし?」

「説明してる場合じゃないが、鍼と灸をつかって……そうか! なぁ、鍼、鍼ないか?」

「は、針? そんなの使ってどうすんのよ? まさかアカネに刺すつもり!?」

「いや、この娘というより、経絡の淀みを取りたいんだよ」


 と言っても分かるわけないよな。

 日本に居たって鍼灸は理解され難いのだ、異世界なんてもっと、


「分かったわ。針ね、今、作るわ」


 理解が早くて助かるぜ!

 だけど、どうやって作るというのだ? 工作機械は見当たらないが。


「出来たわ」

「早っ! 何もない所から魔法みたいに作ったんですけど?!」


 かなり太いぞ。本来は髪の毛くらいの細さなのにこれじゃ裁縫針だ。しかし、緊急時だこの際は仕方ない。

 狙うはこの淀み。

 いつもの要領で裁縫針にて淀みを刺激する。


「あぐぅ……ぐぅ……うう」


 反応がある。

 これならいける! と思った矢先、針の先端が溶け始め俺の手に黒い煙のようなものが伝ってきた。

 嫌な予感しかしない!


「離さないで! 私の力を貸すわ」


 針を持った俺の手にカヤの手が重なる。


「ビャッコよ……この針にシュウレンを」


 え? 白虎と収斂って言ったのか?

 すると、針が金色に輝き始め黒い煙を霧散させた。

 これなら!

 淀みへと金色の針が突き刺さった。



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