亡命
「ほっほほ、職業柄は大事なことじゃよ。それだけ杉山先生には仕事が染みついているという事。それで、ピリスちゃんお気に入りの鍼灸というのを私にも治療してくれるのかな?」
「ばあちゃん!」
「クラ坊、黙っとき」
孫には厳しい人なんだろうな。
とは言え、お偉いさんなのに気さくだし話していても気遣いを感じる人格者のように思えるが、この孫はなんでこんな捻くれた奴になったのか?
「ええ、良いですよ。えーっと、」
「おー、名乗って無かったなかった。アルヴィザ・シュミットじゃよ、アル婆と呼んでおくれ。孫が色々、ご迷惑をかけたようじゃが、こやつもEEの職業柄を守るのが必至なものでな。よろしく、杉山武光先生」
「はい、杉山武光です、アル婆さん。クラウス『くん』は既に当会の会員ですから、過去の事は水に流していますので。取り敢えずもう少し話を聞いてから治療させていただきますね」
歯嚙みをしているクラウスを無視して、アル婆の話を聞く。
アル婆の愁訴と両腕の脈を取り腎の気を補う治療方針に決めた。
「おや? そいつを身体に刺すのかい……の割に先端が尖ってないが?」
「ええ、これはテイ鍼と言いまして、刺さない鍼なんですよ。こうやって、皮膚を擦ったり叩いたりする刺激で気を整えていくのです」
ふむふむと頷くアル婆に陰陽五行論や補瀉迎随の話をする。
「なるほどのぅ。そのような話を聞きながら治療を受けていると、確かに身体にマナが巡るような気がしてくるの。思ったより鍼は気持ちいいモノじゃな」
「それは良かったです。本来ならお灸もあればより効果的に治療出来るんですがフリーライト合衆国にはあるみたいなので手に入れたらお灸治療もいたしますね」
「……ふむふむ、それでフリーライトへ赴くんじゃな。私はてっきり魔刀使いサラ・ヴァーディと共謀するために(公社)ボッカイ魔法協会に入会させフリーライト合衆国に『亡命』するんだと考えておったが、ピリスちゃんの言う通り、私の見当違いで安心したわい」
え……いま、なんて?




